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満月イブのビーチパーリー #根本きこの島ごはん

2017/08/16 07:00 投稿

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みんなで浜辺に集まってBBQなどすることを、沖縄では「ビーチパーリー」と言う。「パーリー」はもちろんpartyのことで、発音のよさがそのままカタカナとして定着している。他にも、「A&W」(沖縄にあるチェーンのファストフード店)は「エンダー」だし、waterは「ワーラー」。

このあいだの満月イブに、近所の海でBBQをした。集まって持ち寄りごはん会はしょっちゅうだけど、海までわざわざ行って何かを焼くとか、そんなことはめったにしない。でも、想像するとめっぽう素敵だし、内地から、おもてなししたい家族が来沖中だったので、みんなに声を掛けてビーチパーリーをすることに。

わたしは食材調達係をかって出た。肉や魚介をタレに漬け込むのは昔から好きである。鶏手羽を自家製のタイカレーペーストに漬け込み、鶏もも肉をナンプラーとはちみつ、にんにくやしょうがに漬け込む。豚のかたまり肉を岩塩とパイン酵素、ローズマリーに漬け込み、いかげそを花椒オイルに漬け込んだ。野菜は丸のままの里芋、茄子、島かぼちゃ、きのこいろいろ。野菜のタレは、おろし玉ねぎ醤油やオリーヴオイル&塩&シークワーサーなど、好みで。

こんがり焼きあがった島かぼちゃに、「この塩、かぼちゃに合うんだよー」と「ショコエ塩」という変わった塩を渡された。この塩は、カカオニブやアーモンド、砂糖、クミン、コリアンダーなどのスパイスが入った、れっきとした「塩」である。

作者はエジプト塩でお馴染みの、たかはしよしこさん。そのよっちゃん自ら、焼いたかぼちゃにショコエ塩とオリーブオイルをかけてくれた。「ほわー」と、思わず声が出てしまったくらい、不思議で美味しいかぼちゃ。なんだかまるで異国にいるみたいな嬉しさ。忽然と、昔、旅行したメキシコに飛んだ。メキシコのオアハカで食べた、チキンのモレソース。甘くないチョコレートソースで食べる焼いた鶏肉は、まったく初めての味だった。しょっぱいけど香りはすこぶる甘い。香りと味覚が覚醒されるような味に、「世界はなんて広いんだろう」と思ったっけ。たまにはこんなふうに、長年溜め込んだ先入観や思い込みを払拭したいなぁ、と思っている。「知識を疑え」とはよく言ったもので、世のなかの常識とか価値観なんてものは、過去に何度も何度も塗り替えられては新しくなり、また、新しくなるのだから。

さて、BBQ。炭をおこすのは、夫の得意とするところ。その辺で適当に流木を拾い、持ってきた新聞紙で火を作る。慣れた手つきで低い椅子に座りながら、黙々と、モクモクと、炎を起こす。網の上に具材を置き、焼けた順からテーブルにサーヴされる。そのうちに、東のほうからにゅーっと黄色い月が。いちばんの主役の登場にため息が漏れた。BBQは焼ける匂いもまたごちそう。おとなも子どもも大勢が、海で食べて遊ぶなんて、なんて健全で夏らしいのだろう。

「この夏、もう一回くらいビーチパーリーしたいね」とみんなで言い合いながら、車までの細い道を月に照らされながら歩いた。

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