古代インドで生まれた生命科学「アーユルヴェーダ」のなかでも、強壮学、いわゆる若返り療法に注目している川崎さん。
川崎さん:「加齢とともに、体は食物などの消化能力が衰えて、老廃物がたまりやすくなります。アーユルヴェーダの若返り療法は、『ラサーヤナ』と呼ばれていて、消化力や代謝を改善し、体力、活力、美しさ、生理機能を向上させるもの。
いくつかの方法がありますが、そのひとつとして体内の毒を排出する解毒プログラムがあります。本格的には滞在型の施設で行うのですが、日常的にとりいれられるのが、セサミオイルを使ったデトックスマッサージです」
マルマを意識してマッサージするメリットセサミオイルを使ったデトックスマッサージでは、「マルマ」と呼ばれるアーユルヴェーダのツボを中心にマッサージすることで
・体が丈夫になる
・老廃物の排泄を促す
・皮膚、髪、爪の乾燥を防ぎ、美しく丈夫にする
・安眠効果
・痛みやけいれんを鎮め、コリをほぐす
といった効果が期待できるとのこと。まずは3日間オイルマッサージを実行し、いいなと思ったら肌のターンオーバーの周期にあわせて3週間ほど続けてみて、と川崎さん。高額な化粧品を使わなくても、手とオイルさえあれば、いつでも自分本来の輝きを取り戻せる。それがアーユルヴェーダのオイルマッサージなのです。
セサミオイルで「酸化」を防ぐアーユルヴェーダでオイルマッサージに使うのは、「キュアリング(100℃前後で加熱し、自然に常温に戻す)」という処理を施したセサミオイル。料理用に使う焙煎ゴマ油ではなく、色も香りもない、生のゴマを加熱しないで絞り、脱色脱臭処理したオイルが良いとされています。
川崎さん:「人の体は40歳過ぎから老化現象が現れますが、その理由のひとつとされるのが、活性酸素による体内の酸化です。
セサミオイルのよさは、この体の酸化を防ぐ抗酸化作用があること。食べるだけでなく、マッサージに用いても効果的なんです」
また、セサミオイルにはクレンジング作用があり、組織にたまった老廃物なども排泄しやすくなるそう。お腹まわりや二の腕・太ももなどは、オイルを使ってもみほぐすことで、脂肪が燃焼しやすくなるといいます。
「マルマ」を意識したマッサージメソッドそれではいよいよ、マッサージを実践!マッサージをするタイミングは、体の温まっているお風呂上りがおすすめ。人肌にあたためたセサミオイルを手に伸ばし、「マルマ」と呼ばれるアーユルヴェーダのツボやさしく刺激していきます。
ヘッドマッサージ顔にハリ・ツヤを与え、髪を豊かに。頭をスッキリさせ、眼の疲れを心地よく癒す。
マルマ①「アディパティ」(頭頂部)
マッサージ方法:
オイルを頭頂部につけて浸透させ、ゆっくりと深呼吸しながら、なでるようにマッサージする。
マッサージによる作用:
顔のリフトアップ。記憶力と感覚機能を向上させる。
マルマ②「シーマンタ」(後頭部中央)
マッサージ方法:
うなじにそって5指を広げ指先で円を描くようにマッサージした後、頭頂部にむかってオイルを擦り込む。
マッサージによる作用:
記憶力と集中力改善。目の疲れを癒し、呼吸を整える。
マルマ③「クリカーティカ」(首関節)
マッサージ方法:
頭の後ろで両手を組み、両手の親指を頭の付け根のくぼみに当ててプッシュする。
マッサージによる作用:
コリや詰まりを緩和し、新鮮な酸素を頭部に行き渡らせる。
※「マルマ」は左右対象に位置します
フェイスマッサージむくみやシワの予防・改善。肌を健康的にして肌ツヤをよくする。オイルを手のひらで密着させ、アイロンがけをするようなイメージで行うと、肌のキメが整い、徐々に毛穴が目立たなくなる。
マルマ①「スタパニ」(眉間の中央)
マッサージ方法:
額に指を置き、クルクルと外にらせんを描くようにオイルを伸ばす。
マッサージによる作用:
全身のバランスを整え、正常な睡眠を促す。記憶力を高める。
マルマ②「シャンカ」(こめかみ)
マッサージ方法:
こめかみに中指を置くようにして五指を当てて、くるくると指を回すように強めにプッシュ。
マッサージによる作用:
イライラを鎮め、顔全体をリフトアップ。
マルマ③「スリンガータカ」(ほお骨)
マッサージ方法:
うつむき加減になり、親指でほお骨下をプッシュしながらスライド。鼻孔の脇から耳元まで。
マッサージによる作用:
やる気を起こし、味覚を鋭くする。ほうれい線対策に効果的。
※「マルマ」は左右対象に位置します
腕のマッサージ全身のリンパの流れと血行を促進。
マルマ①「クシプラ」(親指と人差し指の間)
マッサージ方法:
親指と人差し指で挟むようにして、強めにプッシュ。
マッサージによる作用:
肌の乾燥と手足の冷えを和らげる。
マルマ②「マニバンダ」(手首)、「インドラバスティ」(前腕中央)
マッサージ方法:
手首の中央(マニバンダ)に親指を置き、インドラバスティ(前腕中央)にむかってオイルを塗布する。
マッサージによる作用:
リンパと血液の流れをよくする。
※「マルマ」は左右対象に位置します
川崎さん:「マルマは中国のツボのようにピンポイントではなく、指幅で測れるくらいの一定の大きさを持つ範囲。だから幅広くオイルを塗布したり、圧迫したりするマッサージ法が適しているんですね。
マルマは全身に107あって、体全体をひとつのマルマと考えると、ちょうど108。このマルマを刺激することで、体内の経路の目詰まりが取れるだけでなく、心も解きほぐされると考えられています」
アーユルヴェーダでは、体にとって心地よいことをすることが若返りの秘訣とされています。最近の研究では、これらのマルマを刺激することで、心地よさを起こす脳内物質や、愛情ホルモンのオキシトシンの分泌が促されることもわかってきたとのこと。自分でしても、身近な人にしてあげても心地いいオイルマッサージは、もっとも手軽で自然な"若返り法"なのかもしれません。
お風呂上りの3分で、心身のバランスを整え若々しく保ってくれる、アーユルヴェーダのオイルマッサージメソッド。奥深いその魅力に、すっかりはまってしまいそうです。
>>【前編】「体質傾向が分かるドーシャチェックを試してみて」を読む
Illstration / YUI