が、「なんかぁー熱ある?」と、うるうるした瞳でおでこを差し出した娘の顔をひと目見て、ささやかな敗北感。次の日にはまさかの息子も「アッタマイタイッ!」と妙な滑舌とテンションで帰宅。もう、笑うしかない。さながら、サバイバルのようではあるが、「ぜったいに感染らなーい」とわたしは楽観的に考えている。こんな暑い夏に40度近い熱出して寝込むなんてありえなーい。もう勘弁してくださいよ......と、誰に頼むのかわからない行き場のないお願いをする。せめて、ウイルスに気がついてないようなポーズをとるため、せっせといつもの日常を送ることにした。梅を干したり、レモングラスを刻んだり、マヨネーズを混ぜたり、チキンカレーを作ったりした。食欲ゼロの罹患者たちは、そんなわたしをうらめしく見ながら、「お腹が空かないって、つまんないね」とボソリ。本当だね、可哀想にね。
寝込んでから三日目、「お母さん、スイカ、食べたい」と息子。続いて娘、「うん、食べたい、食べたいかも」偶然なのか予知なのか、冷蔵庫にはおおきなスイカがたまたまゴロンと冷やしてあった。値段シールに記載してある生産者は、国頭村の宮城利明さん。「甘いスイカでありますように」という賭けなのか祈りなのか、「宮城さん、ひとつ頼みますよ」と、思わず息を呑むような気持ち。それからわたしは、何を隠そう果物のなかでいちばん好きなのがスイカである。夏はできれば、スイカだけで水分を補いたいと、虫みたいなことを考えている。さて、宮城さんのスイカをばっさり斬る。
かぶり。
甘い・・・・!
嬉しくなって、スイカとミントでジュースも作る。ミントたっぷりがスースーしておいしい。インフルの子どもたちは、薄く三角に切ったスイカを、しみじみかじっている。さぞ、うまかろうにのう。こうしてちょっとずつ、「あれが食べたい」と浮かぶようになったら、回復の兆し。何はともあれ、そうとうなデトックスになるだろうから、残りの夏はひときわ元気に過ごせるはず。そのための通過点だな。