りえこは、異業種交流会で知り合った女性だ。1次会は、30名くらいいただろうか、かなり大所帯で飲んでいたが、1次会が解散した後、時間的にもまだ早かったので、りえこを誘って2人でもう一軒行くことになった。お酒を飲みながら、彼女の仕事内容から入り、いろいろとプライベートのことから恋愛の話まで聞くことができた。統計的に女性から恋愛話まで聞き出せたときは、かなりココロを開いている証拠だと思っている。
そろそろ終電が近づいてきたので会計を済ませて、店の外に出た。私がココロを奪われたのは、この後の出来事だった。お互い帰る方向が逆方向だったので、お店の前で別れることになった。「じゃあね!気を付けてね」と別れて20mほど歩いただろうか、ふと、彼女と別れたお店のほうを振り返った。
なんと、りえこはまだお店の前でこちらを見送っているではないか。私の視線に気づいたりえこは、ニコッと笑って手を振ってくれた。この後振り返ることは無かったが、おそらく、私がりえこの視線から見えなくなるまで見送ってくれていたことが、なんとなくわかった。
りえこの、このお見送りの姿勢というか気持ちにグッときた。別れた後に、必ず振り返るというルールはないし、振り返ることがあったとしても、振り返ったときに相手が見送りをしている確率は「この冬にA型、B型、2回インフルにかかった人に出くわすくらい」低い。やはり、別れた後振り返ったときに、姿がないと寂しい気持ちになるし、いてくれるとすごく嬉しくなる。お見送りが出来る子は、「ちゃんとしている子」なんだという期待までしてしまう。
このシチュエーションは誰にでも訪れるだろう。そんなときはぜひ、そそくさと帰らずに相手の姿が見えなくなるまでお見送りをしてほしい。
この、ココロをつかむお見送りは、恋愛だけでなく、友達同士や、ビジネスシーンにおいても、ぜひ、こころがけておくといいと思う。
(イラスト・たなかみさき)