「ゆるす」の本来の意味はそんな堅いものではなく、ぎゅっと絞った心の入り口を少しゆるくする、ということ。
(『日本の言葉の由来を愛おしむ』P185より引用)
いろんな人に出会う季節。今まで通りの感覚で人と接しようとすると、なんだか上手くいかない。話すテンポ、言葉遣いひとつがなかなか噛み合わないなんてことも。そんなとき、心の壁を作ってしまう前にふっと思い出せるといいなと思うのが「ゆるす」という言葉。全部を丸ごとゆるすというイメージがありましたが、心の入り口を少し緩める、という表現はちょっと新鮮。人と接するときに心がけると、自分が少し楽になるとともに相手にも力を抜いてリラックスしてもらえそうです。
相手の幸せを願える「真心」私たち日本人は「本当の心」という意味の言葉に「相手の幸せを願う心」という新たな意味を載せて使っているのです。
(『日本の言葉の由来を愛おしむ』P169より引用)
たとえば悩みごとを友達に相談した時、親身に話を聞いてくれたことで自分のことを大切に思ってくれている、と実感したことがあるのでは。これは相手を心から思う気持ちを受け取れたからではないでしょうか。もともと真心とは真=本当の心、という意味。人の心の中はいろんな感情にあふれているもの。不安や恐れなどネガティブな感情を取り除いた先には人を思いやれる心がある、と信じることができると、相手に対して必要以上に身構えることも少なくなるのかもしれません。
心の動きを相手へ「気配り」「気配り」は「気を配る」こと。気を配る。あらためて見つめると、すごい言葉だと思いませんか。「気」とは人の人たる所以である「心の動き」。それを他者に配るのですから。
(『日本の言葉の由来を愛おしむ』P198より引用)
「気」といって私が最初に思いついたのは「気使い」。気を使うとなると、どうしても消耗して疲れてしまうような印象が。"配る"ということと"与える"ことは似ていますが、"配る"はきちんと相手に受け取ってもらえる形にして渡すイメージです。豊かな心、気持ちは人間だからこその大切なもの。相手も自分もただ疲れてしまうような使い方でなく、お互いが気持ちよくやり取りできるような「気」の使い方を心がけたいものです。
普段、何気なく口にしている言葉。その言葉ひとつひとつには古来からの人々の思いや知恵が詰まっています。いつも顔をあわせる人にも、はじめましての人にも、本来の言葉の由来を意識して接してみると、ちょっと違った角度からコニュニケーションをとることができそうです。
[『日本の言葉の由来を愛おしむ』]
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