後輩のかずまは、入社6年目。同じ部署ではないが、社内で可愛がっている後輩だ。「可愛がっている」には、それなりの理由がある。それは、はじめて彼に飲み会の仕切りを任せたときのことだ。
私:「かずま、どこのお店を予約したの?」
かずま:「はい、○○というお店です。」
私:「どんな店?」
かずま:「もちろん個室で間接照明。お手洗いも綺麗でアメニティが充実していて、店員さんの接客もいいですよ。」
観察結果「"ロケハン"力」かずまの優れているところは、"ロケハン"力だ。"ロケハン"とはイベント会場を探すときなどに、事前に下見にいくことを一般的にそう呼ぶのだが、それを飲み会でさえ抜け目なくやるところだ。
「自分達の力ではどうしようもない、お店の環境のせいで相手が気分を害することは避けたいです」と、彼は言う。計算高い男だと酷評する人もいるかもしれないが、たとえそうであったとしても、彼のようなまめさはヒューマンスキルとして大事なことだと思う。
口コミサイトで評判をチェックしてお店は決める人は、きっと多いだろう。ただ飲み会に限らず、ビジネスでの大事な会食においても、相手と親密になるチャンスなんてめったに回ってこない。世の中にはチャンスをつかめない人はたくさんいると思うが、その中で少ないチャンスをモノにできる人というのは、後輩のように時間や労力をいとわない、用意周到なまめな人だろうと思う。
(イラスト・たなかみさき)
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