私は日頃ブランドPRの仕事をやっている。もともと人が好きだからという理由でこのセクションを志願したのだが、念願叶って今では年間で3,000近い人に会い、著名人に会う機会もある。冷静に人を観察してみると、魅力人=著名人という図式は必ずしも成立しないという結論に行き着いた。身近なところにも、著名人に負けないくらい魅力的な人はたくさんいるのだ。今回紹介するのも、身近にいる同僚のひとりである。
30歳 同僚 ちなつ(仮名)の場合同僚のちなつは、見た目は愛嬌のある可愛らしさを持ち合わせているのだが、彼氏と付き合っても長続きしないようで、悲しい男運無しトークをたくさん持っている。
一般的に、恋愛相談は心を開いた友達にすることは多いと思うが、彼女の場合はつらい話を武器に相手と仲を深めるコミュニケーションに使ってしまう。たとえば、取引先の相手との会食の中でも、こんな1コマがあった。
取引相手:「ちなつちゃんは彼氏いるの?」
ちなつ:「じつは、つい最近まで彼氏がいたんですけど、すごい振られ方してしまって......!(笑)」
取引相手:「え~! その話、もっと詳しく聞かせてよ。」
ちなつ:「じつは......」
観察結果「ネガポジティブ」ちなつの魅力は、「ネガポジティブ」だ。つまり、自分のネガティブな話題をポジティブに話せるスキル。彼女の場合は恋愛の話だったが、それ以外のネガティブ要素でも、できれば人には言いたくないと思うのが普通だろう。
だが、人との距離を縮めるためには自分から心を開くことが大事である。その手法が、自分のネガティブ=弱いところを見せることである。そうすることで、「共感」が生まれ、相手から寄り添ってくる。
ネガティブな部分は隠そうとすればするほど、いつもの自分を出せなくなり、ぎこちないコミュニケーションになってしまう。もちろん、一撃で相手をひかせるネガティブ要素を持っている人は、それをすぐに出せとは言わない。まずは自分が過去生きてきた中で起こった「ドジな話、天然的な話」があれば、初対面でも自分を知ってもらうために出すべきだと思う。そこから、あなたの人間味が出てくる。
いつも思うことがある。それは完璧な人間なんていないということだ。多少、ネジが1個か2個外れているくらいが、茶目っ気があって人から好かれるものだ。
(イラスト・たなかみさき)