コミュニケーションの中でも難しいことのひとつが、「相手のとの距離のつめ方」。全くの知らない他人同士が、早く打ち解け合うには、いかに自然に相手との距離をつめられるかだ。時間がないからと、一気に相手との距離をつめると、それはそれで「なれなれしい」と嫌悪感を抱かれる。では、「自然」に距離をつめるにはどうすればいいのだろうか。
31歳 化粧品美容スタッフ さきちゃん(仮名)の場合さきちゃんは、関西出身の元気な子だった。関西=お笑いという固定観念があるなか、彼女はその期待を裏切らず、終始よく喋っていた。合コンでさきちゃんと話す中で、僕はいつの間にか関西のノリだけじゃない、彼女のコミュニケーションスキルの術中にはまり心を開いていた。その会話を、かいつまんで紹介する。
さきちゃん:「TETUYAさんは、どこの出身なん?」
僕:「九州だけど」
さきちゃん:「学生時代は、みんなになんて呼ばれていたん?」
僕:「てっちゃんって呼ばれることが多かったかな」
さきちゃん:「てっちゃんって、呼んでいい?」
このあとのさきちゃんとの会話の冒頭には、ずっと「てっちゃん」がついていた。でも、それは嫌味もなくすーっと懐に落ちた感覚だった。
観察結果「あだ名を上手に使う」「(苗字)さん」「(下の名前)さん」で呼んでいるうちは、なかなか距離は縮まらない。早く打ちとけるためのコミュニケーションツールとして「あだ名」で呼び合うことは重要だ。中には勝手に相手の名前で判断した「あだ名」で呼ぶ人もいるが、今まで一度も呼ばれたことのないあだ名であれば、少なからず違和感と嫌悪感に襲われる。
さきちゃんの魅力は、今までに呼ばれたことがある「あだ名」を確認したところにある。それもライトな質問からの、自然な流れの中でだ。「あだ名」は簡単なツールだが、どのタイミングで投入するかはきちんと見定める必要がありそうだ。
誰しも、今まで生きてきた中で、最低でも1個は「あだ名」を持っているはずである。そのあだ名で呼ばれたいきさつは人それぞれ。それも合わせて聞きながら、相手とのコミュニケートを図れば、自然と違和感なく心のテリトリーに入ることができる。会話の中に、相手のあだ名を必ず入れるところも、より加速的に親近感が増すポイントのひとつだと思う。自然に距離をつめる作戦のひとつとして、さきちゃんのように上手にあだ名を使ってみてほしい。
(イラスト・たなかみさき)