愛さんの選ぶお茶やお菓子。カフェに流れる静謐さ。一見おっとりしているように感じるけれど、まっすぐ芯の通った話しぶり。心もとない気持ちを包み込んでくれる、何気無い優しい言葉。くりっと大きな愛さんの目は私にとって、マリアさまの眼差しでした。
子どもの頃はクラス替えや卒業があり、大人になっても思いがけない友との別れがやってきます。ただひとつ昔と違っているのは、同じ時代に生きている限り自分たちの意思で、いつでも会えると思えること。
愛さんとも、今月には京都へ引っ越ししてしまう友人家族とも、この数年で東京を離れた友人たちみな、新たな土地で出会えたり、「おかえりなさい」と東京で迎えられる楽しみがあります。
先月、多摩川の河川敷でおこなわれたものづくりの祭典「もみじ市」に出店したときのこと。川から届く秋の風を感じていると、「みのりちゃん」という懐かしい声。振り向けばそこに、水色のリボンが結ばれた包みを手にした愛さんが。
兵庫県西宮市・夙川駅に店を構える大人気店「ミッシェルバッハ」の名物、「夙川クッキーローゼ」を手渡してくださいました。
「大好物!」声高に歓喜と感謝を告げると、愛さんもにっこり。以前、神戸出身の先輩から、味も見た目も自慢のお菓子があると教えてもらい、神戸出張があるときは、お店の開店時間を目指して夙川駅へ降り立つようになりました。
あとからミッシェルバッハのフェイスブックを見てみると、2016年の予約分はすでに終了しており、毎朝当日分として少しだけ販売されるものを、愛さんはわざわざ並んで求めてくださったのでした。
お花の形の夙川クッキーローゼは、アプリコットジャムをのせたバニラ味と、チョコレート味のクッキーに、粉砂糖をふりかけたもの。ほろっとほどけてしばらくの間、品のある甘い余韻が口の中に。バター、小麦粉、砂糖とシンブルな素材で作られていながら、これまで味わってきたクッキーにはない、優しい優しい風味と口当たり。これぞ口福と感じながら、さっくりと、一口ごと大切に噛み締めました。
愛さん、ありがとう。今度は私が旅先の味をお届けしますね。
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