9月7日は、210日に一度訪れるバリ島の大事な祝日、ガルンガン。家寺や村の寺院に天上界の神々や自然霊、ご先祖様の霊が降り、人々が祈りを捧げ、お供えものでもてなす、日本でいうお盆のような日です。バリの人々は、お供えものや、大量の伝統料理、ペンジョールと言われる日本でいう灯篭のような竹飾りをこしらえ、神々や精霊を迎えます。そして10日後のクニンガンの日に、神々は天に帰ると言われています。 バリ式のお祈りで晴れ晴れ

バリの人々は、この日のために新調した民族衣装でたっぷり着飾って、朝からお供えに、お寺の参拝に、大忙し。この日は子どもたちの学校もベビーシッターさんもお休みなので、私も仕事を休んで、朝から伝統服に身を包んでお寺に行きます。郷に入れば郷に従え。全部というわけにはいきませんが、私たちを受け入れてくれている国、地域の文化・伝統を尊重し、敬意を払うことは大切です。外国人が外国人だけのコミュニティを成して、完全に地元文化から分離した行動をするのも、やはり違和感があります。と言いつつも、普段は飾りっ気ないバリっ子たちのファッションチェックをするのも、ひとつの醍醐味なのですが。

お寺ではバリ式のお祈りを。お供えをしたら、お線香に火をつけて地面に正座し、お花を指の間に挟んで5回ほど手を合わせ、それから聖水でお清めをしてもらいます。いただいたお米を額や喉元に貼り付けて数粒飲み込んだらおしまい。お寺を出たら、初詣を済ませたあとのような晴れ晴れした気分になります。

日常の「小さな幸せ」に気づく

そして帰宅したら、いつも大家さんがお裾分けしてくれた伝統料理を食べるのですが、2週間高熱を出し続けた子どもたちが不機嫌極まりないので散歩に。

鶏の声と風の音とお寺から聴こえるお経以外何も聞こえないガルンガンの静寂。

すると、毎日見ているはずの近所の光景が......全く違って見え、そのギャップに唖然......。え? 同じ景色? 何か変わった? と目を見張るほど違って見えるのです。その光景が美しくて美しくて、なんでこれに気付かなかったんだろう。

毎日に追われ、それに気づけなくなっていた自分に愕然としました。

私たちの周りには、もっともっと美しいものがあるのかもしれません。たまりにたまった仕事のこと、職場での人間関係、子育ての悩み、そんなことが頭の中を常にぐるぐるぐるぐる......そのせいで見落としている、日常の中の「小さな幸せ」は無限にある。「今」、その「瞬間」だけに、頭も体も心も魂も存在することができたら、今よりずっと、何倍も何十倍も、その環境を、そのときを、今の自分を、楽しめるのかもしれません。

ガルンガンは、そんなことを気づかせてくれます。

神聖な日は、五感で浸る

バリ島へ移住して4回目のガルンガン。日本の元旦と少し似ていて、空気がキリッと澄む感じがするガルンガンはとっても好きです。

そんなピースフルな1日を過ごしたこの日に、今度は夫が40℃を超える高熱! ガルンガンの日が休日でない職場で働き、これまで一度もガルンガンの参拝に行ったことがなかった夫は、地上に降りてきた神々や精霊の逆鱗に触れたのか、クニンガンの日までちょうど10日間も寝込んだのでした。

そういえば、2年前に移住する前に度々長期でバリ島に試し住まいをしていた頃、家族全員が、代わる代わる原因不明の40℃を超える熱を出したことがありました。バリ島に何十年も住む人たちに話すと、みなさん口を揃えて「洗礼だな」と仰いましたが、バリの敷居を跨ごうとすると、そういうことがあるそう。どうやら、バリの神々は寛大ですが、厳しくもあるようです。

やはり神聖な日には、心を落ち着けて、空に、太陽に、風に、光に、五感で浸かることが、大事なのかもしれません。

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