題して「柳宗悦・蒐集の軌跡」というこの展示は、民藝運動の父とも呼ばれる柳宗悦が生涯にわたり追求し続けた「信と美」をテーマとし、蒐集(しゅうしゅう)家としての審美眼に焦点を当てたもの。
掻落鉄差牡丹文扁壺 朝鮮時代 15世紀後半〜16世紀前半(23.2×19.6cm)
1920〜30年代蒐集
地蔵菩薩像 木喰明満 江戸時代 1801年(69.6×23.9×19.4cm)
1924年蒐集
栗鼠図(部分)制光筆 室町時代 16世紀
(収納箱蓋裏に物偈墨書「誰ゾ 吾ガタメニ 描キケル」)
普段、あまり民藝という言葉を意識することがありませんが、ここでちょっと柳宗悦らが起こした民藝運動についてふれておきましょう。民藝運動が立ち上がった1926(大正15)年当時、日本には名もなき職人によってつくられた日常生活用品を美しいといって愛でる習慣はありませんでした。
そんな時代に、普段使いの日用道具にも美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活のなかにあると語ったのが柳宗悦です。また、各地の風土から生まれ生活に根ざした民藝には、用に則した「健全な美」が宿っていると、あたらしい「美の見方」や「美の価値観」を提示したのが世に言う民藝運動で、それは後世に受け継がれるべき日本の手仕事文化を見直すことでもあったのです。
日常美は「お気に入り」を愛でるこころいまから90年も前に起きたこのムーヴメントは、現在を生きる私たちの生活にも脈々とつながり、非日常がほとんど存在しない現代の生活のなかでこそ、日常美の意識は存在感を大きくしているのではないかと思います。
わかりやすく言えば、普段使うコップひとつをとっても、自分にしっくりとくるお気に入りのものを選びたいという気持ちや、質素でもきちんと整えられたものに囲まれた暮らしを美しいと思う感覚。いまのカフェ文化も柳宗悦らの民藝運動に発っしていると言えるのではないでしょうか。
駒場の住宅街にある日本民藝館はそれだけでとても落ち着ける空間なので、まだ一度も訪れたことがないという人は、この機会にぜひ訪ねてみてはいかがでしょう。東大駒場キャンパスはじめ、加賀百万石の旧前田侯爵邸が残る駒場公園など、近くには散策に適した場所がいっぱい。おしゃれなカフェも点在するので、気の向くまま歩いてみるのがおすすめです。
期間:2016年9月1日(木)~11月23日(水・祝)
時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館し、翌日振替休館)
入館料:一般 1,100円/大高生 600円/中小生 200円
展示室:日本民藝館 全室
写真提供/日本民藝館
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