The Typewriter Dandy —By Dōjin circle MOZA MOZA

僕はたいした理由もなく君の手を握る 第十二章

2014/04/27 19:15 投稿

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俺とミハイルは、助けた少女――コーディリアを連れて、墓地に来ていた。彼女の父親を埋葬(まいそう)するために。

 墓地には、この前の戦闘の犠牲者とその家族が、至る所で死者を弔(とむら)っていた。遠くのほうからは、痛んだ死体を火葬している煙が見えた。

 こんな時だから、墓地の区画もあってない様なもので、男たちによる亡骸を埋葬するための穴掘りが至る所で進められ、亡骸を埋め、その上から土をかけた、土饅頭(どまんじゅう)が至る所に点在していた。

 俺は、ここに来る前にこれからする力仕事のため俺はミーシャから、魔力提供をしてもらい人間の肉体を一時的に保っている。

 空気はどこか重く、淀んでいた。

 そこには誰もはかり知ることの出来ないそれぞれの個人的な感情――悲しみがあった。

 俺らを含めた男たちは順番に埋葬を、手伝ったり手伝われたりというのを何度も繰り返した。コーディリアを同じ場所で埋葬に来ている女性たちに預かってもらい、ミーシャと俺は埋葬を日が暮れるまで手伝った。

 埋葬し終わった土饅頭には判別がつくように名前を書いた板切れを突き刺したり、大きな石に尖ったものを使い名前を彫ったもの乗せている。

 埋葬が一人住むごとに皆、悲しみよりも、疲労の色の方が顔に出てくる。

「大丈夫か?」急にミハイルが話しかけてきた。

「何が?」

「お前の身体だよ」ミハイルは言った。そのあと声を落として「俺が魔力を与えてるとはいえ、普段の七割も力出せてないだろう?」と言った。

 俺はすかさず「別に問題ない。ヤバかったらすぐに伝える」

「ならいいが」

 強がっては見たものの、力仕事は骨の折れる作業だ。ミハイルに魔力提供してもらっていなかったら、どうなっているかわからない。使い魔契約というものは契約者に魔力を分け与え、更に契約者に尽くす行為なのだ。

 時間をかければ実体化できるくらいに魔力は復活すると言われているのだが、どれくらいかかるかは個体差が激しい。契約をやめたり、契約者が死んだりすれば元通りになるが、その契約者の消耗(しょうもう)が激しい場合は、契約が切れてしまうと、元に戻るどころか死に至る。使い魔契約というのはそれだけリスキーなことなのだ。


―――


 何人かの埋葬が済むと一緒に手伝った人たちと休憩を取った。仮埋葬とはいえ、深く穴を掘らない事には衛生環境がが悪くなるし、どの遺体も数日放置されて痛んでいる。火葬をするにも燃料も限界があるし、時間もかかる。結局、誰かが埋めるしかないのだ。

「ここに眠っている奴らは、まだ幸せだ。人間らしく弔(とむら)ってもらえるんだから。今も街にはまだ死体が転がってる」仲良くなった俺よりも一回りくらい年上の男が、そう呟(つぶや)く。彼はチャンディカと名乗った。

 線が細い割にしっかりと作業をこなす人間で、口調は周りと合わせているが、人当たりなどから、いい意味でどことなく教養をのぞかせていた。

 俺は頷いた。「一歩間違えれば、俺たちも死んでたかもしれない」

「だとしても運命の残酷さを呪ったってどうなるわけでもない」ミハイルが言う

「悩んでたってしょうがないが、愚痴じゃないが人間こういう事も言いたくなるさ」とチャンディカ

「こればかりは運が悪かったとしか言いようがない」一緒に休んでいた別の男が言った。そうやって、一緒に居合わせた男たちで、休憩の間だけ、かんたんな会話を楽しんだ。

みんな悲しい時でもどことなく普通であろうとしていた。


―――

 コーディリアは父親が埋葬されるのをただ見つめていた。泣くことも無ければ、感情を表に出すこともしなかった。ただそこにある事実を目に焼き付けているように見えた。

 埋葬が終わると父親の名前を刻んだ板を埋葬したところ墓標代わりにに刺した。

 帰路に就く頃には、俺は肉体を人間の姿に保てなくなりコーディリアの肩の上にちょこんと座っていた。

 誰も口を開かなかった。それぞれに思う事があるようだった。ただ会話が無いことに対してなにも違和感は感じなかった。

 ミハイルの家に戻り、コーディリアを寝かしつける。

「これからどうするつもりだ?」

「どうするったって……これは俺だけの問題じゃない」

「お前がそんなんでどうする」

「俺は、子供だからって、行動をコントロールさせたくない。確かに判断力もなくモノも知らないかもしれないが、一人の人間としては対等だ。出来る限りは意思を尊重したい。価値観や考えの押しつけは嫌いなんだ」

「今はそれでいいかも知れないが、これからはそう甘いことを言っていられない」

「そこら辺は融通を利かせる。たとえ理不尽と言われてもな。俺だって、 が最終的には俺がいなくなってもどうにかひとりでやっていけるようにはしたいんだ」

 ミハイルはわざとらしく溜息をついて呆れた表情を見せる。

「言うのは簡単だがな、そういうのは今日明日でできる事じゃない」

「だとしてもだ。俺が物わかり悪いのは知ってるだろ」

「勝手にしろ」


―――


 次の日、ミハイルはコーディリアに魔法少女と使い魔の契約について説明した。

「コーディリア。君は生きたいと願った。そうだね」

 コーディリアは頷いた。

「何かをするってことは責任が生ずる。責任っていうのは解るね、何かをするために、しなくてはいけない事だ。君の場合だったら、命を助けてもらったから、その分僕たちを手伝ってもらうってことになる。ここまではいいかい?」

 彼女は「うん」とだけいった。

「君とカルナは、使い魔の契約をしたんだ。ただあのときは君を助けるために細かいことをすっ飛ばしていた。いろいろをするべきだったんだけど、あのときは出来なかった。だから今、僕が真に入って君とかルナの契約について、話し合ったり、説明したりする。いいね」

 ミーシャはにっこり笑った。俺も一緒に聞いていたが難しいことは言わず、大切な要点だけを伝えていた。

「君は、もう魔法少女だ。いま契約を破棄すると君は死ぬ。そして、魔力を分け与えたカルナも同じく死ぬ。生命維持に魔力を使い、既にそれを消費してしまったからね。だから君はカルナと一緒に魔法少女の仕事をしてもらう。今はそれだけわかってくれればいい。気になることや解らないことはいつでも聞いて。ちゃんと答えるから」



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