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憂鬱症なペンギンと売れない小説家がでてくる、ロシアの現代小説『ペンギンの憂鬱』

2013/06/22 23:51 投稿

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  • 小説
  • 書評
今日は、あまりなじみのない海外小説を紹介しよう。
 紹介するのはアンドレイ・クルコフ『ペンギンの憂鬱』(邦訳:新潮クレストブックス 2004)可愛らしいジャケットながらも、ちゃんとした小説です。
 原題は «Смерть постороннего» (局外者の死)
 後に改題され、«Пінік на льоду» (氷上のピクニック)
 英題は “Death and the Penguin” (ペンギンと死)
 個人的には好きな海外小説の上位に入る作品だ。
 ペンギンの話というと『廻るピングドラム』を思い出すが、そういう話トンデモない話ではないので安心していい。文章も優れていて、何度読み返してもあきない頑丈な作品になっている。


物語の舞台はウクライナの首都キエフ。売れない小説家の〝ヴィクトル〟は憂鬱症を患ったペンギン〝ミーシャ〟と暮らしている。一年前の秋、その一週間前に恋人と別れたヴィクトルがエサをロクにやれなくなった動物園から、欲しい人に譲るというのでもらってきたペンギンだった。
 元々孤独だったヴィクトルは、憂鬱症のペンギンが更に孤独を持ち込んできたが、孤独が孤独を補い合って、互いを頼り合うように暮らしていた。
 ある日、ヴィクトルは書き上がった短編小説を売り込みに『首都報知』という新聞社に売り込みに行く。結局、体の良い厄介払いをされたものの、次の日、編集長から電話がかかってくる。
「お悔やみ欄をかかないか?」と。
 編集長は極秘の追悼記事を書く物書きを探していた。なんせ、有名人や大物政治家、軍人……といった人たちの追悼記事を死んだ場合にあらかじめ用意しておく為に追悼記事を書き溜める仕事だったからだ。
 そうして、仕事をしていくうち、ヴィクトルの周囲には色々な人が集まるようになり、穏やかながらも色々なことが起こった。友人の娘を預かったり、ベビーシッターと仲良くなり、友人の娘と疑似家族のように暮らし始めたり、更にはミーシャの世話をしていたペンギン学者を看取ることにもなった……。
 しかし、ヴィクトルの知らないところで歯車は回りだす。追悼記事の需要は日に日に増え始め、やがて追悼記事を書いた大物たちが死んでいく。そんな中ヴィクトルの周囲にも暗い影が近づき始める……。


結構、これはお気に入りの作品で、英語版のカバー(現在はデザインが変わってしまった)も可愛らしかったので、アマゾンでポチってしまったりと、色々と思い出深い作品。内容的にも海外でベストセラーになるのがわかるくらい面白い。
 これを手に取ったのは大学時代で、ちょうどラノベ以外の物を大量に読み始めた時期で、新潮クレストブックというレーベルは近年の海外文学を翻訳してくれるところで、読み始めの頃に出合った作品。その後、大学時代は結構、新潮クレストブックスを買いあさっていた。おかげで、芥川賞よりもブッガー賞の方が身近になってしまった……。
 文学はあんまり得意じゃないけどね。
 ジャンルとしては文学なのだが、エンターテイメントとしても十分楽しめる作品です。文章も上手く、序盤のストーリーテリングは、なかなかのもの。ただ、終わり方が文学的というか、いまひとつスッキリしないのが個人的に不満かな。


これには続きがあり海外ではこんなタイトルで売られている。
 原題«Закон улитки»(カタツムリの法則)
 英題 ”Penguin Lost”(ペンギンの喪失)
 仏題«Les pingouins n'ont jamais froid»(ペンギンは寒がらない)
 日本では未だに翻訳されてなく、自分は英語版に手を出したものの、読めるわけもなく本棚の肥やしに。これもカバーが可愛らしいのでお気に入りだったりします(これも現在売っているのは新版のカバーに変わっている)。
 ペンギンの憂鬱の方は8刷程度の増刷はかかっているはずなので売れてないわけではないはずなんだけど……自分はずっと待っている状態です。

結構この本は面白いのでお勧めです。是非読んでみて。

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