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しょこらの海におぼれる

VOCALOIDの歌詞分析をするにあたっての覚書1

2016/03/07 21:39 投稿

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  • やってみた
  • テキストマイニング
  • ボカロオリジナル曲
1. はじめに

 2015年はVOCALOIDが人口に膾炙したことを証明した1年だった。すぐ思い当たるところでは、初音ミクのMUSIC STATION(以下、Mステ)出演と、ボカロ曲である千本桜がNHK紅白歌合戦で歌われたことであろう。前者はMステ通常回ではなく、Mステ30年目突入を記念した10時間SPでの出演であり(*1)、他の共演者と“同様に”初音ミクが“代表曲を披露”した。また、後者では初音ミク本人の出演ではなかったものの、「千本桜」がニコニコ生放送のコメントと共にお茶の間に流れた。その賛否はともかく、「もしかしたらオリコン1位も遠くないかもね~」(くちばしP「私の時間」)と歌っていた彼女がオリコン1位どころか日本の音楽特番で有名アーティストと並ぶ時代が来たのである。初音ミクの発売から約8年間でVOCALOIDはここまで市民権を得た。これは紛れもない事実である。

 一方で、ネット上では2015年は「VOCALOID衰退論」が騒がれた1年でもあった。代表的なものとしては、鋼兵の「【ゆっくり雑談】「なぜボーカロイドは衰退したのか」を解説する」(*2)などが存在する。実際のデータを見ても、「週刊ボーカロイドランキングまとめ」(以下、ぼからんまとめ)の上位10曲のポイント(マイリスト)合計は低下していることがグラフを見てもわかる(*3)。ぼからんまとめの管理人のブログによると、再生数は下げ止まりの傾向にあるものの、マイリストの低下が深刻なために結果的にマイリスト重視のポイントに影響を及ぼしているとのことである(*4)。再生数が低下する事態はVOCALOIDカテゴリの隣接カテゴリである「歌ってみた」のカテゴリでも、2013年の5月頃から見られているようである(*5)。

 今回のVOCALOID曲の歌詞分析は、以上のような2015年のVOCALOIDを取り巻く状況を踏まえ、これまでのVOCALOID楽曲の軌跡を、後述する紅白歌合戦の楽曲データベースや各年代の歌詞の特徴の比較を通して炙り出そうと目論むものである。なお、この記事は4回に分けて書く予定であり、そのあらすじは以下のとおりである。

① 序文と先行資料やこれまでの歌詞分析のまとめ ←イマココ!

② 各年代の対象曲および集計、分析結果

③ 総合した集計、分析結果+各年代の特徴語分析・比較および考察(まとめ)

④ VOCALOIDは何を伝えたか

2. VOCALOID楽曲の年代分類に関する考察


 結論から述べると、今回の分析ではVOCALOID楽曲を年代別に分けるにあたって、以下のように2年区切りに分類している。「2007年~2009年上半期」「2009年下半期~2011年上半期」「2011年下半期~2013年上半期」「2013年下半期~2015年」の4分類である。この年代分類に関して参考とした資料を以下に記述しておく。

 まず、前述した鋼兵の「【ゆっくり雑談】「なぜボーカロイドは衰退したのか」を解説する」にて考察されているボカロブームの二つの波を紹介する。詳細は動画の方に譲るが、鋼兵は、第一波を「初音ミクをプロデュースするオタクども」、第二波を「初音ミクを利用する音楽業界」に分け、それぞれのボカロP、リスナーの特徴を指摘している。第一波においては、ボカロPの存在は初音ミクなどのVOCALOIDをアイドル、キャラクターとしてプロデュースし、そのキャラを売り出す存在であり、リスナーは“初音ミクや他のVOCALOIDの楽曲だから”聴いている層である。一方で、第二波においては、ボカロPはVOCALOIDを楽器として扱い、楽曲や物語を売り出す存在であり、リスナーは“そのボカロPの楽曲であるから”聴くという層である。

 一般的に抱かれているイメージとしては、前者が「古参」と呼ばれ、後者が「新参」「にわか」と呼ばれる傾向にある。しかし、この二分類には一つ弱点がある。それは、前者の期間が著しく短期間であるということである。

2008年に入る頃には、「初音ミクの曲ではなく○○Pの曲」というふうに認識するのが当たり前になり、itunesのアーティスト名は「初音ミク」ではなく、P名を入力するようになってきます。


ここに至って、僕を含め、P名で曲を選ぶリスナーが増え始めます。

(ボクボカロクロニクル第6回「メルトその2」 - ボカロとヒトのあいだ(*6))


 既に、P名で曲を選ぶリスナー、つまり第二波のリスナーは2008年頭に増えてきているという証言があるのだ。筆者もryoやcosMo@暴走Pのタグからボカロ曲を聴き始めた人間なので、このリスナーに属するであろう。しかし、この文章を読んでいる読者の方々には2000年代のボカロシーンとここ数年のボカロシーンは異なるという実感があるのではないだろうか。その実感に沿う指摘は、以下の稲葉の発言に見ることが出来る。

その変遷(筆者注:2011年のボカロシーンの変遷)というのに、世代交代の側面があったのが重要だと思うんですね。初期のボカロを支えた人たちと、その頃(筆者注:2011年)から顕著になって現在ランキング上位にあるような楽曲のファンは、実は別の人たちになってると思うんです。具体的には中高生の、それも特に女子ですよね。


僕は彼女らにちょくちょく話を聞く機会があるのですが、よくボカロの思い出で話に上がるのは、ハチ、DECO*27、sasakure.UKさんあたりなんです。そうなると実態としては、2011年のもう少し前から、初期のうるさ型の音楽好きのようなアーリーアダプタから、ボーカロイドのファン層が入れ替わりはじめていて、それが顕在化したのがこの時期だったのだろうと思うんですね。

(音楽史の中の「カゲロウプロジェクト」――

柴那典×さやわか×稲葉ほたてが語るボカロシーンの現在(*7))

 ここで言われている2011年のボカロシーンの変遷とは、多くのボカロPがメジャーデビューを果たし、「千本桜」「カゲロウデイズ」が投稿されたころのことを指す。この年代、2011年にリスナーの世代交代があったのだ。この年代以降のリスナーが如何に若いかということもこの対談の中で述べられているので、是非参照してほしい。

 これにより、鋼兵の言う第二波「初音ミクを利用する音楽業界」の年代が二分される。一つは2011年以前のアーリーアダプタのリスナー層、そしてもう一つは2011年以後のライトリスナー層の年代である。

 ところで、筆者は冒頭に「2007年~2009年上半期」「2009年下半期~2011年上半期」「2011年下半期~2013年上半期」「2013年下半期~2015年」の4分類とすることを述べた。今のところ2011年の分割点はわかったが、あと2つは何なのかという話になる。

 2009年の分割点は、「【歌詞分析】「VOCALOID伝説入り」曲をテキストマイニング【やってみた】」(*8)で若干の説明を加えているが、MegpoidやProject DIVAの発売が挙げられる。この時期から、初音ミク、鏡音リンなどの所謂「クリプトン組」のVOCALOIDから、他社ボーカロイドが参戦し混戦状態となっていく時期である。

 また、2013年の分割点は第1章で見た通りVOCALOIDとそれに隣接するカテゴリで再生数やマイリスト数が低下する時期と一致する。こうした根拠を基に、今回の年代分類は4分類としたが、各年代の特徴に関しては対象曲リスト等を示した次の記事で詳しく記述する。


3. これまでのVOCALOIDの歌詞分析と紅白歌合戦の歌詞データベースから

 ここでは、これまで筆者が行ってきた「【歌詞分析】「VOCALOID伝説入り」曲をテキストマイニング【やってみた】」(以下、やってみた1)「【歌詞分析】週刊VOCALOIDランキング上位曲の比較から【やってみた2】」(*9)(やってみた2)をまとめ、「紅白直前 データで作るあの時代っぽい歌 - NHKデータなび」(*10)から紅白歌合戦で歌われた曲の歌詞を分析したデータを紹介する。

 やってみた1では、「VOCALOID伝説入り」と呼ばれるニコニコ動画で100万回再生を突破したVOCALOIDオリジナル曲(アレンジ・替え歌は除く)164曲(2014.2.14時点)を対象とし、年代分類を<第1世代:~2009年上半期(56曲)><第2世代:2009年下半期~2011年上半期(57曲)><第3世代:2011年下半期~(51曲)>に分け、フリーソフトウェア「KH Coder」を利用しそれぞれの年代の特徴語や頻出語句、語のつながりを見た。そこでの結論は以下のとおりである。

VOCALOIDの初期(筆者注:第1世代)は「歌う」や「歌」など、「歌うこと自体」に対する単語が出てきていたが、現在(筆者注:2014年)はその傾向は無くなりつつある。
VOCALOID初期から現在に至るまで、相対的に未来志向が強まってきている。

 一方、やってみた2では、<2014.8.14時点でVOCALOID伝説入りをしている楽曲><2012年上半期に投稿され、ぼからん#223~#248で5位以内にランクインした楽曲(97曲)><2014年上半期に投稿され、ぼからん#323~#353で5位以内にランクインした楽曲(94曲)>を対象とし、やってみた1と多少条件を変え「KH Coder」で分析し、それぞれの年代の特徴語や頻出語句、語のつながりを見た。やってみた1ほどの強い結果は得られなかったものの、結論は2012年から2014年にかけてのボカロ歌詞は<seek>から<act>に変遷したということである。言い換えると、VOCALOIDの歌詞が年代を追うごとに外向的になっていることが伺える。


次に今回の分析で対象データと比較する先行研究として、2015年までのNHK紅白歌合戦で歌われた約3000曲の歌詞データを分析した「紅白直前 データで作るあの時代っぽい歌 - NHKデータなび」のホームページの内容を紹介する。ここでは、紅白歌合戦の歌詞から年代ごとに「時代の言葉」を抽出して掲載されている。今回分析するVOCALOIDの楽曲はいずれも2000年代以降に発表されたものであるから、ここでは2000年代と2010年代のデータを紹介する。なお、この分析は今回の分析と同じく「KH Coder」が用いられている。



 データを詳しく見ていくと、2000年代のワードはそれ以前の年代から使われてきたワードが多く、中には他の年代においてもトレンドワードとして挙がっているものもある(「夢」は1980年代で2位、1990年代で1位、「心」は1980年代で1位、1990年代で4位)が、2010年代のトレンドワードは他の年代での使用頻度が低く、全く新しい傾向になっていることが伺える。こちらのホームページではトレンドワードに関連するワードも共起ネットワークの形で紹介されているので、また今回の分析データと比較する際に参照する。

 次の記事からは今回の歌詞分析の方法や対象曲リストを紹介し、年代ごとの頻出語句と頻出語句のつながり、年代ごとのボカロPの特徴などを見ていきたいと考えている。


*1 http://www.tv-asahi.co.jp/music/contents/m_lineup/1222/index2.html

*2 http://www.nicovideo.jp/watch/sm26641878

*3 http://vocaran.jpn.org/stat/points

*4 http://vocaran.jpn.org/contact/blog/104

*5 柴, 2014, p.271.

*6 http://d.hatena.ne.jp/cobachican/20121227

*7 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar515661

*8 http://ch.nicovideo.jp/momentary_kakuren-bo/blomaga/ar477688

*9 http://ch.nicovideo.jp/momentary_kakuren-bo/blomaga/ar612641

*10 http://www.nhk.or.jp/d-navi/kouhaku/


参考文献

柴那典, 2014,『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』太田出版.

週刊ボーカロイドランキングまとめ - ぼからんまとめ

http://vocaran.jpn.org/

ボクボカロクロニクル - ボカロとヒトのあいだ(第0回リンク)

http://d.hatena.ne.jp/cobachican/20121221


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