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トークライブイベント「アーケードゲーム雑談2」レポート(前編)

2018/12/05 12:00 投稿

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 全国800万人のアーケードゲームファンのみなさま、こんにちは。「ゲーセンミカド」ブロマガ編集班です。

 11月某日、新宿のネイキッドロフトさんにてトークライブイベント「アーケードゲーム雑談2」が開催されました。2回目となる今回は『雷電V』『カラドリウス』で知られる株式会社モスの代表取締役・駒澤敏亘氏をゲストに招き、かつて在籍されていたセイブ開発での苦労話を中心に、これまでに手がけられたタイトルを振り返りつつ、時代に合わせて変化するゲーム開発の実情をお話しいただきました。

 また、駒澤氏はSF映画のマニアであり、等身大フィギュアやグッズを収集するコレクターでもあることから、映画、アニメ、ゲームを文化として残すことやアーカイブすることが重要視されている昨今の流れに対し、それぞれの考えや思いを発表しあうなど、約3時間をあっという間に感じられる充実の内容となりました。今回のブロマガでは、中でも特に盛り上がった部分を抜粋し、全2回に分けてご紹介します!


■出演(写真左から)
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イケダミノロック(ゲーセンミカド店長)
駒澤敏亘氏(株式会社モス代表)
松倉友二氏(アニメプロデユーサー) 


 もともと趣味で絵を描くのが好きだったという駒澤氏がセイブ開発に入社したのは1987年、当時20歳のこと。当初はセイブ開発がゲームメーカーであることを知らず、「CGデザイナーの求人情報を片っ端から見ていて、受かっちゃったからここでいいや」と感じだったという。なお、駒澤氏は小さい頃からゲーセンやファミコンで遊んでいたことから、ゲームの知識や理解がまったくないわけではなかったと話す。

 会社ではレバーとボタンのデバイスをカチカチやりながら、ドットマシンでドット絵を描いていたという駒澤氏が最初に手がけたのは『ダイナマイトデューク』。また、セイブ開発のゲームの前期・後期でバージョンを変えることが多く、ゲームセンターに出向いてロム交換をすることも多かったという。

 ここでイケダ店長が、セイブ開発・浜田均社長の数ある伝説や名言の中から「俺は出す国ごとにバージョンを変えている」というエピソードを披露すると、駒澤氏からは「それは本当で、国ごとに変えてたんですよ。アメリカ版は難易度が高いって思われがちですが、向こうのアップライト筐体はナスレバーが曲者で、日本の上手いプレイヤーみたいに細かい動きができないんですよ。なので、敵を柔らかくしたり、敵弾のスピードを下げるという調整をしてましたね。逆に難易度を上げたのは中国。1プレイの単価がすごく安くて、日本円でいうと10円とか15円ぐらいなんですよ。だから店としては長く遊ばれちゃうと困るわけで、基板のディップスイッチを難しい設定にして稼ごうとするんですが、そうすると今度はそれに慣れたプレイヤーがどんどん強くなる(笑)。ベリーハードがデフォルトみたいなものなのに『ベリーベリーハードが欲しい』と言ってくるので、中国の場合はノーマルをものすごく強くしましたね。『雷電』だけじゃなくて他のゲームもそうだったと思います」と語った。

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■幻のゲーム『ダブルダイナマイツ』
 プレイヤーキャラクターを背中越しの三人称視点(TPS)で操作する『ダイナマイトデューク』は主にアメリカで大ヒットしたのだが、ここでイケダ店長から「『ダイナマイトデューク』の2人同時プレイ版である『ダブルダイナマイツ』というゲームは本当に発売されたのか?」という質問が投げられる。すると駒澤氏は「作った記憶はあるんですけど、ゲーセンで見た記憶がないんですよ」と曖昧な返答をしつつ、『ダイナマイトデューク』をガンシューティング型の筐体でリリースできないのかということを社内的に実験していたというエピソードを披露。しかし、その最中に他社からガンシューティング筐体のゲームがいくつかリリースされてしまい、「やられたと思ったね。“俺たちがやりたかったのこれなのに!”って(笑)」と、悔しい思いをしたという。

■『雷電』
 次に駒澤氏がドットデザイナーとして携わったのは、縦スクロールシューティングゲーム『雷電』。全16色ある中、クリア(抜き色)や白黒を抜くと実際には13色しか使えない状況下で、最も苦労したのは爆発のグラフィックだったという。

駒澤氏:爆発を作っても、なんか爆発に見えないんですよ。で、その正解にたどり着く答えはどこにあったかっていうとアニメで、“ドーン!”ではなく、光って溜めたあとの“チュドーン!“だったんですよ。とはいえ、大きい爆発をアニメーションでやれるだけの容量はないし、オブジェクトがいくつまで出せるか考えながら小型機、中型機、大型機それぞれでパターンを変えましたね。自機のボムも左右と上下の反転をうまく使いながら表現したり。一番時間はかかったけど、楽しい仕事でしたよ。

 アニメの現場にいる松倉氏からは「アニメの爆発は発明の連続なんですよ」と解説が入り、「古くは背景に描いたものを置き換えて爆発に見せることから始まり、半月型の物体がパカパカ・チカチカっとするマクロス爆発まで発展するわけですよ」という歴史を述べた。

■『とってもE雀 -潜入アイドルプロダクション!』
 ゲームセンターにおいて脱衣麻雀が人気を博している影響を受けて開発がスタートした『とってもE雀 潜入アイドルプロダクション!』。セイブ開発社内で麻雀を嗜んでいたのは駒澤氏だけだったということで、当作のディレクションを務めることになったのだが、ゲームとして盛り上げるためのインチキ要素を作る面白さに気づいたという。

駒澤氏:麻雀ゲームを作るにあたって、関東のローカルルールを知るには足で探すしかなかったんですよ。なので、会社があった水道橋の雀荘に通いまくったし、麻雀の部分に関しては役判定も含めて真面目に作ってたましたね。難しいのは“3分間でいかに満足させる麻雀を作るか”っていうところ。そもそも麻雀はオリる(※他者に自分の持ち点を取られないよう、あえて勝ちに行かないこと)遊びなんですけど、お金を入れて遊ぶアーケードゲームでやらされるのは苦なんですよ。だったらインチキして、CPUが勝つ時はサクッと勝っちゃえばいいし、プレイヤーが勝つ時には気持ちよく勝たせてあげればいいじゃないかと。限られた時間の中で何回かの勝ち負けを表現する中で、たとえば一発ツモのアイテムを作ったり、相手の牌が透けて見えたり、それだけでも楽しいじゃないですか。そういうことを確立するのが面白かった。

■『セイブカップサッカー』
 「Jリーグ発足の2年前に『サッカーゲームを作れ』っていう浜田社長もすごいなと思うんですよ(笑)」と前置きした駒澤氏。一試合で前半・後半含めて90分もの時間がかかり、1チームに11人の選手が配置されているサッカーというスポーツを、どのようにゲームの形へ落とし込んだのだろうか? その方法はふたつあったという。まずひとつはフィールドを小さくしたことと、そしてもうひとつはスーパーシュートの導入だ。こうすることで勝敗の決着を早め、ゲームセンターでの稼働率と回転率を上げるとともに、プレイヤーには確かな満足感を与えることに成功した。

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■MOSSという社名の由来
 1992年にセイブ開発から独立し、1993年に有限会社モスを設立。この社名については英語のことわざで有名な「A rolling stone gathers no moss」から引用したと明かした駒澤氏。「アメリカとイギリスで受け止め方が違ってて、『流れる水は腐らず」という意味もあれば、『石の上にも三年』みたいな意味もあるっていう、このダブルミーニングがいいなと思って。ロックも好きだから、最初は有限会社ローリングストーンズにしようと思ってたんだけど『それはどうよ?』って言われて。そう言ってくれた人に今ものすごい感謝してる(笑)』というエピソードを明かすと、イケダ店長から「それは正解だったね(笑)」とダメ押しのツッコミが入り、客席をドッと沸かせた

■『子育てクイズ マイエンジェル』
 『マッドシャーク』『銃弾嵐(ガンダーラ)』などを開発したのち、1995年に『子育てクイズ マイエンジェル』を手がける。当時のナムコはPlayStation互換のシステム基板に移行しており、原価でも7、8万円に上昇している中、「安い基板を使って、シューティング、パズル、クイズを作れますよ」と売り込みに行ったのがきっかけだったという。

駒澤氏:子育てクイズというところで、オタクな問題にばっかり答えるとオタクになったり、ハレの問題に答えてるとハレな子になっちゃったり、そういう部分が新しくて受け入れられたんじゃないかと思いますね。後半になると難しい問題ばっかりで、それを勘とか当てずっぽうで答えてるだけだから、ガンガンとお金が入るんですよ。ロケテストですごいインカムを叩き出してたね。カップルでも遊べるゲームなんですけど、彼氏よりも彼女のほうがやめたがらないんですよ。5千円近く両替して最後まで楽しんでくれたりして。

 『子育てクイズ マイエンジェル』の盛況ぶりをゲームセンターの店員という立場で目の当たりしていたイケダ店長から「K社のクイズゲームは今でも稼働しているところが多いですけど、S社のやつは途中でサービスが終了しちゃいましたよね。あれってどういう違いがあると思いますか?」という質問が投げられる。これに対し駒澤氏は「クイズゲームはクイズ自体が面白くないとダメなんですよ。『マイエンジェル』の問題考案は、現在でもスマホ用クイズゲームを担当しているクイズライターの方にお願いしたんだけど、4択の解答の中に必ずひとつは“面白回答”を入れるっていうセンスが良かった。それだけでも面白いし、次の問題も見たくなる。だから、クイズゲームはクイズ自体が面白くないとダメということを僕も教わった感じですね」と返した。

■『雷電III』
 『雷電DX』から11年ぶりの新作となった『雷電III』は3DのCGグラフィックで蘇り、旧来の2Dドットから一変した。しかしセイブ開発社内でも90年代初頭から3Dポリゴンを取り入れることは視野に入れていたという。

駒澤氏:『雷電』ではいろんなことを教えてもらったし、自分も参加できた作品のひとつなので、続編を作る機会があれば参加したいなと常に思ってたんですよ。じつは『雷電II』を作っている時に「次に『雷電』を作るんだったら3Dだね」っていう話もあって、当時は他社さんも3D用の基板を作ってましたけど、よそへの提供にあまり前向きではなかったんですよね。でも2004年頃から3Dを使える汎用基板(※『G-NET』や『Type X』など)が主流になってきたから、「これを使えば3Dの『雷電』が出来るんじゃないか?」ということで浜田社長を口説きに行ったんです。

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※※※

 イベントの後半では、来場者から集った質問・アンケートに目を通しながら、イケダ店長、松倉氏、駒澤氏が返答をしていくというQAセッションに移行。こちらについては明日公開いたします。お楽しみに!

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