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「修羅雪姫(上村一夫作画 小池一夫原作)」1

2020/09/26 19:00 投稿

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 タイトルは知っているけどちゃんと読んだことの無かった作品。
浅草に凌雲閣があった時代、アンダーグラウンドな人々に雇われてアンダーグラウンドな相手を暗殺する、美貌の女殺し屋がいる。名前はお雪。
 和傘の柄に仕込んだ細身の刀を遣い、体術もこなす。簪などを手裏剣のように使うこともある。掏摸の技や砂絵の技なども身に着けている。狙う相手に雇われて信頼させたり、あるいは敵としてわざと捕まっていたぶられながら一瞬の隙をつかんで一気に仕留めたり。
 目的のためには自分の身が汚されることも厭わず、房中術にも長ける。全裸で戦うことも多いが恥じらいは持たない。
 そのような殺し屋家業をしながら、彼女は金目当てに父と兄を殺し、母を犯した男二人と女一人を敵として追っている。彼女の母は夫と息子の敵の男一人を殺し、一生刑務所から出れなくなった自分の代わりにと刑務所の中で手当たり次第に男と寝て彼女を身ごもり、出産した。
 そして産後の肥立ちが悪くほどなく死んだのだが、女囚仲間が彼女の母親代わりとなって実の母の無念と仇の名を伝え、元幕臣で剣術遣いの和尚に体術と剣を叩きこまれる。砂絵はこの母親代わりの女囚に教わったもの。別の母と親しかった女囚仲間からは掏摸の技を教わっている。

 殺し屋家業として強敵を倒し続ける単発のエピソードに、敵を追い詰めていくメインの話が混じる。

一 隅田川湯文字俎板(すみだがわゆもじまないた)
 吉原と向島の、隅田川を挟んでの勢力争い。向島側が伊藤博文らしき政治家をバックに圧力をかけ、吉原側はお雪を雇う。お雪は向島を支配する侠客一家に客人として草鞋を脱ぎ、わざといかさまをして親分を誘い出す。
 
二 女伊達血雨傘(おんなだてちさめかさ)
 凌雲閣の周囲には私娼窟が迷路のように広がっていつしか十二階下と呼ばれるようになる。このバックにいる侠客が勢力を伸ばし、これを快く思わない別の侠客がお雪を雇う。
 十二階下だけが流行るのは、十一八一という出しもののおかげらしいがその内容がよくわからない。旅芸人を装い潜入したお雪はこの秘密も探ることになる。

三 愛憎血糸懺悔(あいぞうちのいとざんげ)
 お雪の誕生編。神奈川八王子の東京監獄八王子分監で、お小夜という女囚が子を産もうとしている。お寅という産婆の経験がある女を中心に女囚仲間が取り上げようとするが逆子で難産。お小夜は無期懲役で二年以上収監されており、女ばかりのこの監獄で身籠ること自体が奇妙。お小夜は色情狂と言われるほど、看守や教誨師など男を見れば手当たり次第に誘いをかけて妊娠したのだが、それには目的があった。
 お小夜は一生監獄から出られないが、子供は出られる。自分の代わりに夫と息子のカタキを討ってほしいと子を産んだのだった。
 明治6年に島根県で赴任してきた小学校教師が惨殺され、妻は犯され、五歳の息子も殺される。塚本儀四郎、竹村半蔵、正景(しょうえい)徳市、北浜おこの、の四人が結託して教師を徴兵にやってきた役人だと村人に吹き込んで殺し、徴兵免除の金を集めるという名目で村人から大金をせしめて逃亡したのだった。妻は徳市の女にされて東京に連れていかれ、隙を見て徳市を殺して無期徒刑となる。この妻がお小夜だった。残る三人を討つために子供が欲しかったのだ。お小夜はこのことをお寅に話し、息絶える。
 産まれた女の子は女囚仲間にお雪と名付けられ、やがてお寅に刑期を終えるお寅に育てられることになる。

四 死桜小袖白刀舞(しざくらこそでしらはのまい)[一]
 明治20年代から流行した二人乗り人力車で、スリルを求めた男女がいけないことをするようになると、あらかじめ女を乗せた人力車で客を取ったり、女の客を無理やり暗がりに連れ込んで乱暴したり、私娼として売り飛ばす車屋も現れる。背後には厄坐者がいて手を出せない。
 まっとうな人力車稼業の元締めは、お雪にこの厄坐者の排除を依頼する。

四 死桜小袖白刀舞[二]
 田舎から出てきたちょっと頭の弱い娘、という格好で新橋駅で悪徳車屋に声をかけられたお雪は女郎として厄坐者のもとに連れ込まれるが、ここで絵の腕前を見せて感心させ、人力車に絵を描かせてほしいと頼み込む。客を取らせるよりその方が評判になって儲かりそうだと考えた親分たちはお雪の願い通りにすると、車体にお雪の絵を描いた車は蒔絵車と呼ばれるようになり大当たり。だが突然警察に踏み込まれて一家は壊滅する。おそらく縛り首になるだろうと。
 お雪は明治天皇の姿を客が腰を下ろす座面に描き、これが不敬罪として摘発させたのだった。

五 鹿鳴館殺人八景(ろくめいかんさつじんはっけい)[一]
 お雪は姉を探すためと偽って、元掏摸係の刑事に女掏摸の元締めを紹介してもらう。お雪は次の仕事のためにはどうしても掏摸の技が必要らしく、これを習いたいらしい。
 だが元締めのタジレ(田地礼 という名字らしい)の菊という老婆はお雪の嘘を見抜く。怪しい奴、と敵対する菊だったが、お雪が小夜の娘と知ると態度を改める。菊は小夜の出産に立ち会った女囚の一人で、お寅とも懇意だったのだ。お雪は昨年お寅が亡き人になったことを菊に伝え、菊はお雪に掏摸の技を伝授すると約束する。

五 鹿鳴館殺人八景[二]
 お雪は菊に掏摸の技を叩きこまれ、一人前の腕と認められるようになる。その頃には菊とお雪の間には母子のような情愛が確立していて、仕事に向かうお雪を菊はいつでも帰っておいで、と見送り不憫な子、と涙を見せる。

五 鹿鳴館殺人八景[三]
 お雪は鹿鳴館に向かう馬車を襲い、乗っていた母娘を殺して娘の衣装に着替えると御者を脅してそのまま鹿鳴館に向かわせる。今日は仮装舞踏会がある。鹿鳴館は煌びやかな表向きの姿の裏では性に乱れたいかがわしい場と化しており、日本民族を貶める人種改良論や日本語廃止論を唱える者たちの情報交換の場ともなっていた。
 これを憂いた国士・石坂正造から依頼をうけたお雪は、鹿鳴館を潰すために客として潜入し、アメリカの駐在武官ほか数人を殺し、今度は田舎娘に扮してその犯人を居合わせた政府要人たちだと告発する。死体のそばにあった証拠の品は、お雪が習い覚えた掏摸の技で彼らから奪い取ったものだった。犯人の一人とされた井上馨らしき人物に石坂は鹿鳴館を閉鎖するように迫り、公にしないことと引き換えに鹿鳴館を閉鎖させ、鹿鳴館は華族会館となった。

六 極楽法事帳花千両(ごくらくほうじちょうはなせんりょう)[一]
 無法地帯らしい貧民部落に足を踏み入れたお雪は、差配の松右衛門という男に会って頼み事をする。ここには全国の貧民たちの集める情報が集まる。お雪は塚本儀四郎、竹村半蔵、北浜おこの の三人の行方を調べてほしいと依頼に来たのだった。松右衛門はこの三人と同郷の人間でもあった。引き換え条件としてお雪は女の命の髪を切って渡し、さらに松右衛門が求める極楽法事帳を手に入れるように頼まれる。

六 極楽法事帳花千両[二]
 極楽法事帳とは、様々な宗派の寺が持つ檀家の過去帳で、これが貧民たちの稼ぎのもとになっている。例えばこれで調べた命日を元に金持ちの家を訪ね、七回忌に線香をあげに来た、ついでに墓を掃除をさせてくださいとでもと言えば家人は無下には応対せず、おひねりの一つも出してくれる。これを繰り返せば彼らにとっては一年中毎日誰かの命日であるわけだから一年中金儲けができることになる。 
 だが明治維新の混乱で人の移動もはげしく、松右衛門の持つ過去帳は情報が古く役立たなくなっている。これの最新版を手に入れてほしいというのが交換条件だった。

六 極楽法事帳花千両[三]
 尼僧に扮したお雪は労咳で臥せっている娘がいる金持ちの屋敷を訪ねて回復を願っての砂絵祈願を披露する。これを縁にこの家に出入りするようになり、体調の回復してきた娘を閨に引き込んで自分の傀儡とする。

六 極楽法事帳花千両[四]
 娘は雪月尼と名乗るお雪を慕うようになり、彼女の願いでお雪は毎日のように娘の家に通い、やがて夜も泊まって添い寝をするようになる。もちろんそれだけではすまず、家人の隙を見ては娘とまぐわって喜ばせているが実は娘の病気には房事は良くない。
 次第に衰弱していく娘に医者はいぶかるが、まさか女同士で房事をしているとは思い及ばない。やがて娘は衰弱して死ぬ。
 お雪は娘の願いで寺の準備した法事帳に娘の名を書き込むことを許され、記帳後に寺男から法事帳を奪う。
 松右衛門は法事帳を受け取り、北浜おこのの居所がわかったとお雪に告げる。

七 縷骨彫心花面影(るこつちょうしんはなのかんばせ)
 お雪の子供時代の回想。母の女囚仲間であったお寅に育てられることになったお雪は、これも母の遺言でお寅が見つけてきたらしい元幕臣で剣術使いの和尚に心身を鍛えられている。
 樽に入れられて坂を転がり落されたり、和尚が打ち込む木刀を足場の悪い積み上げられた石の上で反射的にかわせる様に特訓したり。
 一方でお寅からは砂絵を習い、お寅が砂で描く母の顔を見る。

 お雪は母の死んだ刑務所を訪ね、母の霊前に北浜おこのをようやく見つけました、と報告する。

八 生命質屋無残始末(いのちのしちやむざんしまつ)
 北浜おこのは現在は藤島おこのと名前を変え、共済一銭社という会社を経営しているが、これは会員から冠婚葬祭などの資金を集めて自転車操業で儲かっているふりをしているだけの取り込み詐欺まがいの仕組み。
 だが東京から生命保険会社が進出してきて顧客を奪われて経営が揺らぎ、生命保険会社に怒鳴り込む。応対した支店長はお雪だった。
 お雪は抗議するおこのに、自分の役割は生命保険の仕組みを全国に広げることで、この地で支店を軌道に乗せれば自分は地元の人にまかせて去るつもりです、と登記書や顧客名簿をおこのにそっくり譲り渡す。おそらくこの支店を作る金はこれまでの人殺し稼業で貯めたもの。
 
 お雪が譲った書類は全て本物で巨額の掛け金が入ることとなったおこのは喜んだが、やがて顧客名簿にあるのは半数以上が死にかけの重病人とわかる。毎日のように何人も死者が出て、規定通り保険金を払っていけばあっという間に資金は枯渇してしまう。おこのは自分の家屋敷も処分せざるを得なくなる。おこのはお雪を若い者と一緒に襲撃するが自分以外は全員返り討ちとなり、詐欺罪と殺人罪で逮捕されることになる。

九 恐喝源次郎朦朧節(きょうかつげんじろうもうろうぶし)[一]
 様々な店に丁稚として奉公をはじめ、小僧から手代、番頭となって店ののれん分けを受けるのが人生の目的みたいになっている商人たち。一人前になる頃には人生は半分終わっている。
 休みも小遣いもろくにない暮らしが長く続く。時にはあの手この手で店の金をくすねる者も現れるが、そうしたことで束の間の息抜きをすることが辛い毎日をなんとか過ごしている。
 そんな連中を脅して金を巻き上げる恐喝者が現れる。決して姿を見せず、要求金額は吊り上がっていく。応じなければ店をクビになり、横のつながりで二度と同じ職業にはつけない。何十年も積み上げてきた地位がふいになり、二度とやり直せない。
 こうした被害に遭った番頭や職人が頼るのは、彼らを身元引請して店に紹介した口入屋である。その口入屋の親分から、タジレの菊経由でお雪に源次郎と名乗る恐喝者をなんとかしてほしい、と依頼が入る。

 お雪は被害者がいる店に下働きとして潜入するが、大男のその店の丁稚が怪しい。罠をかけて正体をあばいたものの人間離れしたその力にお雪の剣技も通じず、囚われの身となってしまう。

 ここで2巻に続く。

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