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「三体Ⅱ 黒暗森林(劉慈欣著)」ちょっとネタバレ

2020/09/24 19:00 投稿

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・SF好きな人の間では評判になった「三体」の第二部。第一部のネタバレを含みます。
 第一部については以前レビューしました。
https://ch.nicovideo.jp/tool/blomaga/edit?article_id=1784280

 第一部はだいたいこんな話。

 まず中国のある女性の半生が語られる。彼女の父親は優秀な物理学者だったが文化大革命で虐殺される。彼女も強制労働にまわされて苦難の人生を歩む。

 それから50年近く過ぎて、エリート科学者たちの間でバーチャル・リアリティタイプのゲームが流行する。忙しいはずの第一線で働く科学者たちが寸暇を惜しんで興じるこのゲームは、どうやら3つの太陽を持つ惑星で生まれた文明を模したものらしい。このゲームが「三体」と呼ばれる。

 一方で世界中で最前線で働く優秀な科学者の自殺が相次ぐ。その動機は実験結果がこれまでの常識に合わないというか、科学的事実の根幹が崩れてしまうようなデータを得て、科学なんて無意味じゃないか、これまでの成果は何だったんだと悲観してのことらしい。自殺する科学者たちがある学術団体に所属していることもわかる。

 ゲーム「三体」で優秀なスコアを出したものは、ゲームを主宰する団体から招待を受け、一種のエリートのような扱いを受ける。だがこの団体の背後にはエイリアンがいる。

 冒頭の女性はその後名誉を回復して天体物理学者となるが、さしたる業績もあげずに今は定年退官してひっそり暮らしている。彼女の娘は優秀な実験物理学者だったが実験結果に悲観して自殺している。その実験結果とは、物理法則は常に成り立つわけではなくて成り立つ時期と成り立たない時期があるみたいな。まるで3つの太陽がある惑星の運動や軌道がある時期は規則性があるように見えてもある時期は全く規則がなりたたず、式で表せないような。

 だが彼女を自殺に追い込んだ実験結果はエイリアンの捏造である。3つの太陽を持つ惑星のエイリアンは太陽が一つの惑星の安定した軌道がうらやましい。不安定な自分たちの惑星を捨てて地球に移民したいと思っている。侵略してでも。彼らの科学力は地球よりはるかに進んでいるが、このまま地球の科学技術が発展を続ければいずれ彼らに追いつく可能性があると考えて素粒子サイズのAIのようなものを少しずつ送りこんで地球上のネットワークを侵食させて科学者が絶望するような実験結果を捏造し、ある程度以上科学技術が発展しないように妨害している。彼らが地球の存在に気付いたのは女性天体物理学者のせいである。
 彼女は彼らと通信し、文化大革命から人類を憎むようになっていた彼女は彼らエイリアンの中にも侵略に反対なものがいて止めるよう忠告したにもかかわらず、地球はここよ、侵略して滅ぼしてちょうだい、みたいなメッセージを送ってしまう。

 彼女は地球三体協会というゲームのエリートが集まる親睦団体のようなもののリーダーとなり、地球の科学力を弱めるために暗躍する。
 だが軍の依頼を受けた若手ナノテク技術者がこの団体に潜入し、いろいろあって得意のナノテク技術を使って団体が使っている船を沈め、主だった幹部も殺害して無力化に成功する。

 だが既に三体世界の侵略艦隊は地球に向けて発進している。ネットワークに侵入した素粒子AIは大量に残っており、これを人類は排除できない。そのため科学の進歩には枷をはめられている。それでも彼らの艦隊が到着する450年後までには戦いの準備を整えねばならない。

 というところまでが第一部の内容。第二部では来る450年後に三体文明と戦うための準備として宇宙艦隊や彼らと戦うための超小型水爆などの条件整備を開始した人々の苦悩を描くみたいな。

 今や素粒子AIはネットワーク内だけではなく、地球上の至るところにいて目ぼしい科学者・技術者の言動は常に監視されている。ノートに書いても誰かと話しても監視されて、その計画が実現しないように妨害されてしまう。監視されないのは人間の脳内だけだ。

 ということで人類は三体文明に対抗する方策立案と実行を4人の人物に任せる。彼らにに膨大な予算と権限を与え、450年後に彼らを打ち破るための何かを生み出してほしいというもの。その計画の全貌は彼らの頭の中だけにある。彼らは自分の立てた策がうまく働くかを監督するため冷凍睡眠に入り、時々目覚めてこの計画の進捗状況を確認し、決戦の時には目覚めて指揮をとることになっている。

 彼らはウォール・フェイサー(面壁者)と呼ばれ、元米国国防長官、元ベネズエラの大統領、元欧州委員会の委員長でノーベル賞クラスの科学者(共同研究者だった彼の妻だけがノーベル賞を受賞した)の他、若く無名な中国人の元天文学者が選ばれる。彼は天文学に見切りをつけて社会学に転身したばかり、他の三人と異なり何の業績も上げていない。

 元国防長官は宇宙軍の整備に乗り出し、元大統領は超小型水爆の開発に推進する。科学者は人間の精神面の強化について方策を練る。だが中国人社会学者(元天文学者)は何もせず、彼に与えられた権限であるリゾート地に別荘を求め、彼の権限で嫁さん候補を探し、彼女を招いて安穏な隠者のような生活をはじめてしまう。やがて女の子も生まれる。

 三体文明側は人類のこの計画を察知して、地球にいる協力者の中から破壁人といういわば担当者を決めて、マン・ツー・マンで面壁者たちの計画を打ち破ろうとする。彼らが何をしようとしているかを突き止めて暴露することが、彼らにとっての勝利になる。
 そして面壁者たちは次々と三体文明の破壁人に敗れていく。

 だが何もしていない中国人科学者だけは暴露しようがない。その代わりというか、彼はしばしばネットワークのバグのような形で事故に襲われる。これは三体文明による暗殺計画。彼は何故か他の面壁者よりも恐れられている様子。
 そんな中、彼は突然動き出す。ある事をした彼は、結果がわかるのは早くて100年後だ、と言うがインフルエンザウイルスを使った生物兵器に襲われて重体に。未来に治療を託して人工冬眠に入ってしまう。このインフルエンザは遺伝子情報を使って、標的となった人物だけをピンポイントで殺すというもの。彼は地下シェルターにいたのだが、地下シェルターに出入りするスタッフを介して罹患してしまう。スタッフたちはちょっと風邪をひいた、程度の症状しか出ない。

 彼が185年後に冷凍睡眠から目覚めると、既に人類は核融合エンジンで動く二千隻の強大な宇宙艦隊を持っていて いつ三体艦隊が来ても大丈夫ですよみたいな楽観的な雰囲気になっている。彼のインフルエンザは進歩した医学であっさり治る。そして面壁者ももうお役御免ですよ、ごくろうさまでしたみたいな。
 世界は地上の国家と宇宙艦隊国家みたいになっている。
 宇宙戦艦の名前は 無限のフロンティア(インフィニット・フロンティア)、ロングホーン、霧笛(フォッグホーン)、南極大陸(アンタークティカ)、アルティメット、アダム、ガンジス河、コロンビア、ジャスティス、マサダ、陽子(プロトン)、炎帝(イェンティ)、アトランティック、シリウス、感謝祭(サンクスギビンング)、前進(チェンジン)、漢(ハン)、テンペスト、明治、ニュートン、啓発(エンライトゥンメント)、白亜紀(クリティシャス)、ネルソン、グリーン、ヒマラヤ、雷神、メッセンジャー、創世記(ジェネシス)、アインシュタイン、サマー、量子、青銅時代、藍色空間(ブルー・スペース)、企業(カンパニー)、深空(ディープスカイ)、究極の法則(アルティメット・ロー)、自然選択などが記述されている。

 艦隊を直接望遠鏡で観測することなどはできないが、星間物質を観測して間接的に艦隊の規模や位置を知ることはできて、その結果三体艦隊の中に当初の予測よりも高速の先遣隊もしくは偵察隊のような存在が確認され、まず一隻だけが間もなく太陽系に侵入することがわかる。

 これを撃退しようと地球は全艦隊を出撃させる。もう勝利間違いなしと一般市民は会敵を今か今かと待っている。だが、宇宙戦艦・自然選択のベテラン艦長だけはこの戦いには勝てない、と離脱する。

 そして接触の日。涙滴状の三体偵察艦は大艦隊に怯えたのかあっさり速度を落として鹵獲されるのだが・・・

 この後の艦隊戦の描写がなかなか迫力がある。スタートレックのウォルフ39におけるボーグとの艦隊戦みたいなことになって、ちょっとネタバレだけど地球艦隊はたった一隻の三体偵察艦に傷一つつけることができず壊滅する。わずか7隻の艦だけが脱出して生き残る。
 この作品での主要登場人物の数名も戦死する。
 たった一隻の三体宇宙船は、分子が振動できないくらいがっちりと整列させられていて中性子星のように超高密度になっており、人類のあらゆる武器は通用しないのだった。
 これに体当たりをされれば地球の宇宙戦艦の装甲は紙同然である。

 わずか一隻に主力艦隊が壊滅させられた地球はこれまでの余裕をかなぐり捨ててパニックに。

 その一隻の後には数隻規模の先遣隊が続き、さらに三体主力艦隊がやってくる。数百年かけて準備した大艦隊があっけなく敗れ去った今、地球には無力感と脱力感しかない。

 地球の運命はただ一人残った面壁者に託されることになる。彼がインフルエンザに侵される前に打った布石がここではじめて生きてくることになる。

 サブタイトルの「黒暗森林」という単語の意味は、ラスト近くに明かされる。第三部につながることになる恐ろしい事実を示している。

 書籍に挟まれていた登場人物表。左が上巻、右が下巻。左右どちらにも名前が出て来る人物は一部例外を除いて人工冬眠して200年後の世界でも活動している



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