メタ坊のブロマガ

「山風短(山田風太郎原作 せがわまさき漫画)」④忍者枯葉塔九郎

2020/03/31 19:00 投稿

  • タグ:
  • 山田風太郎
  • せがわまさき
  • 漫画本




・このシリーズの最終巻。

 奥州森岡藩士・筧隼人が国家老の娘・お圭と身分違いの恋を実らせて駆け落ちをする。彼は一刀流をよく使い、その腕ですぐに再仕官できると思っていたのだが既に世は戦国から太平に向かいつつあり、仕官の口は一年たっても見つからなかった。
 お圭は何と言うか、堅い女で隼人が生活のために収入が安くても、と当座の仕事を得ようとすると武士の誇りを捨ててはなりませぬ、とこれを阻み、夜抱いてもどこか凛としたまま乱れないタイプで抱けば抱くほど自分が責められているような気がして疲れてしまう。

 そこで隼人は一年過ぎるころには駆け落ちまでして奪って得た彼女を持て余し、どこかで厄介払いしたいと思うようになっている。
 
 鳥取藩主池田因幡守が御前試合を開催し、その成績優秀者を数名召し抱えるという噂を聞いて二人は鳥取にやって来る。だが応募者は多く、とても勝ち抜いて召し抱えられる自信は持てない。隼人はここでお圭を捨てて逐電しようと、彼女を騙して遊女屋で待っていてくれ、試合に優勝したら迎えにくる、実は試合に際しては刀も採点対象になるのだが俺の刀はとっくに路銀に変えてしまったのだ、その金を作るために遊女屋に、みたいな。借金の証文替わりみたいなものである。お圭は必ず勝ってくださいませ、とこれを受けるが隼人は負けたら逃げ、買っても汚れた女として妻を捨てるつもりである。

 これを枯葉塔九郎という男が聞いていて談合を持ち掛ける。拙者も試合に出場する予定だが、貴公と対戦することになった時には勝ちをお譲りいたす。その代りに持て余していると見える奥方を頂戴したいというもの。塔九郎はお圭に一目ぼれしたという。

 試合当日。三組に分かれたトーナメントの優勝者三名が決まり、この三人のうち一人が召し抱え、みたいな雰囲気になる。隼人も入っているが塔九郎はいない。

 ここで塔九郎が進み出て三人と真剣で戦いたいと申し出る。面白い、やらせてみよということになって、塔九郎はあっという間に二人を斬り捨てて隼人と対峙する。
 隼人は鮮やかに塔九郎の両腕を斬り落として仕官を決める。塔九郎の死骸は隼人が願い出て引き取る。

 実は塔九郎は忍者で、たとえ斬られても切り口同士を合わせれば元通りつながるという忍術を会得しているという。もともとの体質でもあるらしい。死骸を引き取って元通りつなげてくれ、というのが勝ちを譲る条件の一つでもあったのだが彼は死骸を旅籠に運ばせはしたもののそのまま帰らずに酒宴に呼ばれてしまう。放置すれば奴は死ぬとも思い、塔九郎が生き返るのを見るのが怖くもある。結局一泊して約束は反故にして死ぬにまかせようと決意して戻ると、お圭が籠と一緒に出ていったという。駕籠かきの話によれば、死骸が蘇ってお圭と一緒に立ち去るのを見たという。妻には塔九郎が勝ちを譲ってくれたことは話したが、その代償としてお圭を譲ることや塔九郎が特殊な身体をしていることは伏せている。だが実はお圭は全てを立ち聞きして知っていたのである。
 隼人は精悍な美男子だが塔九郎は蝦蟇のような顔であった。

 三年後。仕官かなった隼人は出世して郡代になっている。藩の国税長官みたいな役目を評価されてのことだが、これは彼が民に過酷で無慈悲な取り立てを平気でできる人間であったからでもある。支払いをしない者は容赦なく牢に入れて責め立てる。このため領民の不満はたまり、一揆の気配もある。

 そんな時に旅の巡礼夫婦とすれ違う。ピンと来て顔を改めると塔九郎とお圭。隼人はお圭を連れ戻そうとするがお圭は拒む。塔九郎が約束をお忘れか、と言うので地位もある今のこと、大金で買い戻そうと持ちかけるが塔九郎は拙者、恋女房を金で売る気はござらん、と拒絶する。お圭が恋女房と呼ばれたことで頬を染める。
 隼人は従わねばお圭を殺す、と脅すと塔九郎はあっさり降参して刀を捨てるが、直前になにやら奇妙な動作をする。家来の一人がどうも自分のモノを斬り落としたようで、降参したのを調べますと確かにありませぬ、と報告する。

 塔九郎を牢につなぎ、お圭にこれまでのことはすまなかった、もう不自由はさせないから戻ってくれみたいにお圭を口説こうとするがお圭は心ここにあらずとどこか恍惚とした表情を浮かべるのみ。強引に押し倒して抱こうとすると、秘所が塞がっている。何だこれは!と叫ぶと、お圭は隼人には見せたことのないとろけた顔で我が夫です、と妖艶に答える。

 そこに一揆の知らせ。隼人はこの部屋を出たら許さんぞみたいに言い残して鎮圧に出かける。お圭はそんな言葉は無視して塔九郎の牢屋に向かう。郡代の命令で、この者を自害させよとのおおせです、つきましてはお刀をお貸しくださいと牢番に借り受けて牢内の塔九郎に渡す。
 塔九郎は牢内で手、足、首、と自分の身体を牢の格子を通る程度に切り分けてお圭に渡す。
お圭はそれを牢の外で並べ直すと塔九郎の身体にまたがる。まぐわうように。

 お圭の中にあったものが塔九郎の身体に戻り、塔九郎は蘇って起き上がる。牢番たちが呆然とする間に二人は 同行二人 と言い残して去ってゆく。

 百姓の代表と話していた隼人は、二人が逃げた知らせを聞いたのか、使いのものに耳打ちされたとたんに激高し、百姓の代表者たちを次々に斬り捨てて現場は大混乱になる。

 反撃されたのであろう、全身傷だらけになった隼人が崩れ落ちる頃、仲睦まじく旅をする、ブ男と美女の巡礼夫婦がある。二人の顔は幸せに満ちている。

 美女と野獣ものですね。野獣がハンサムに戻らない分あっちより完成度が高いと思う。

 隼人は最初から悪人というわけではないのだが、踏み外せば果てしがない。

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事