メタ坊のブロマガ

「白髪鬼(岡本綺堂著)」前半

2020/03/13 19:00 投稿

  • タグ:
  • 岡本綺堂
  • 怪談
  • ホラー
  • 光文社文庫



・もともと「近代異妖編」という本に収められていて、先にレビューした「影を踏まれた女」に収録された3編を除いた作品が収録されているとのこと。

・こま犬
 この作品の冒頭に、青蛙堂鬼談同様に小石川の青蛙堂で行われた怪談会で綺堂が聞いた話ですよ、と断り書きがある。

 S君という讃岐出身の人物の話。彼が父親の十七回忌で8年ぶりに帰郷した時に聞いたとのこと。
 村はずれに小袋ヶ岡というところがあって、ここ小袋明神というのがある。長曾我部配下の小袋喜平次秋忠という武将にちなむらしい。今は焼けたり水害があったりで廃墟というか遺跡というかになっている。
 この一帯で正体のわからない声がするという噂で、蛙という人もいれば梟という人もいるが土の底から聞こえてくるとかでどちらも違うらしい。
 子供の頃なじんだ場所で土地勘もあるので彼はちょっと様子を見に行くと、そこで若い女とすれ違う。お辰という肥料商の娘で二十歳だという。
 こんなところに何しに来たんだろうといぶかりながら明神跡に行くと今度は三十前後の男がいる。聞けば彼と同様評判なので様子を見に来たらしい。
 そこには少し土に埋まった大きな石があって座るのにちょうどいい感じだが、出会った男性はこの石がくのだという説もあるのだと教えてくれる。
 特に名乗りあうことも無く別れるが、翌朝その男性が死体で発見される。彼は町の中学の教員で、と教えてくれた大きな石に腰かけたままこと切れていたという。死因はわからないが脳貧血だろうとのこと。
 さらに翌日、今度はあのお辰、今風に言えば辰子が同じ石に座って死んでいるのが発見される。ただし今度は自殺と見える。毒を飲んでいたという。
 教員と辰子は愛しあっていたのだが教員が突然死したので辰子が後を追ったのだ、という者も出るが、付き合っていたという目撃者も証拠も無く実際はわからない。
 村人たちは二人が座って死んでいた石を土から掘り出してみることにする。

 すると石の下からこま犬が出て、こま犬には蛇が巻き付いている。村人は思わず蛇を叩き殺してしまう。もう一体こま犬があるのでは、と周囲を探すが見つからない。
 こま犬が掘り出されてからは、謎のき声は絶えたという。


・水鬼
 九州出身のA氏の話。この人の故郷に尾花川、もしくは唐人川という川がある。A氏は今40代だがこれは彼が学生時代の話。
 当時は車などなく、汽車を降りると故郷の町までは乗合馬車になる。この馬車に乗り合わせた兄妹がちょっとアンバランス。質素な兄と派手な妹。馬が倒れるという事故があり、その間に妹の方が逃げて行方をくらませてしまうという出来事がある。このため兄の方と少し口を聞く。A氏の実家は名家なので相手は知っていた様子。
 数日後、尾花川で彼が釣りをしていると小学校の同級生で市野という男に会う。市野は薬剤師の免許を取って実家の薬屋を手伝っている。
 何しにこんなところへ、と問うと彼はきりぎりすを捕りに来たと言うのだが、しばらくして女らしい人影が見え、逢引の約束をしていたのだなと見当がつく。

 先日の馬車で乗り合わせた兄は勝田といって、本業は農家だが駄菓子屋のような店もやっている。妹はこの店の手伝いをしているうちに悪い客にそそのかされて出奔し、熊本で酌婦になっていたという。見つけて連れ戻したがそれからも度々姿をくらまして、最初は何度も探して連れ戻したが結局五年以上音信不通のままになったという。それが突然手紙をよこして実家に帰りたいというので連れ戻しに行ったのがご承知のようにまた姿を消しました、何を考えているのか、というのが前日聞いた事情だった。
 A氏は市野の逢引の相手がこの妹だったように思う。
 尾花川には浮草の一種で地元では幽霊藻と呼ばれている水草があり、壇ノ浦で生き延びてこの地にやってきた平家の官女が川で死に、その魂が宿ったなどという言い伝えがある。
 そして女はこの草に触れると祟られるとも言われているが、男には何の害も無いという。

 何も釣れないので帰ろうとするA氏の前に女が現れる。やはりあの妹だった。彼女と市野が付き合っていると察したので知らないふりをしてさりげなく市野の話題を出すと、女は市野は今頃死んでいるでしょう、などとぶっそうなことを言う。彼女は先ほど市野の喉をカミソリで切って川へ突き落とし、これから警察に自首するのだという。

 彼女が14歳の時、市野は幽霊藻を彼女の懐に押し込んだことがあり、それ以来彼女は平家の官女の夢を見るようになる。それから市野は彼女を弄んでいかがわしい店に売り飛ばしたのだという。彼女は市野が憎くもあり愛しくもあり、みたいな感じで兄の言うような境遇に落ち込んだらしい。だから仇を取ったのだ、と彼女は言う。
 彼女は市野に自分のめんどうを見てくれと迫ったらしいのだが、市野は彼女に毒を飲ませようとしたらしく、それならこっちもという次第だったらしい。平家の官女に操られているような気配も見える。

 彼女は結局情状酌量されて執行猶予になったのだが、尾花川で身投げをし、幽霊藻にがんじがらめになった死体で見つかったという。

・停車場の少女
 語り手の女性がまだ女学校に通っていたころ、学友のいいところのお嬢さんに誘われて湯河原に誘われる。お嬢さんには婚約者の従兄がいて陸軍中尉だったのだが日露戦争が終わった頃で、奉天で負傷したものの今は全快して湯河原にいるという。見舞いに行くのに同行してほしいという申し出だった。楽しい時間を過ごし、予定の二泊はあっという間に過ぎる。
 だが帰京しようとする朝はあいにくの雨。引き止められるが親が心配するので後ろ髪をひかれる思いで帰る。お嬢さんは残ることになる。
 小田原から国府津に出て待合室で乗り継ぎ列車を待っていると、ふいに耳元で
 「お嬢さんは死にました」
 という声がする。周囲を見回しても顔見知りは誰もいない。もう一度同じ声がして、
15、6の娘が言ったらしいとわかるがすぐに人並みに押されて見えなくなってしまう。
 胸騒ぎがして湯河原に引き返すとお嬢さんは本当に死んでいる。手紙を書いている時に心臓麻痺が起きたらしく、食卓に突っ伏してこときれていたという。
 お嬢さんの死を告げた少女が誰なのか、いまだにわからないという。

・木曽の旅人
 軽井沢がまださびれていた頃に、まだ子供だったらしい語り手は父親に連れられて数泊する。宿で杣(そま。木こり)と行き合って、彼が語る怪物(えてもの)話を聞く。
 えてもの とは何かはっきりしないのだが、猟師が見る幻みたいなものらしい。ある時は獲物と思って追いかけると自分だけに見えている。釜から女の首が出る。だがこうしたものを見るのは猟師だけで杣人の前には出ないのだという。
 たった一つの例外としてこの杣人がある経験を語る。

 彼には6歳の息子がいるのだが、この息子が突然怖い怖いと泣きだす。そして旅人がやってくる。この小屋はそういう場所にあるので珍しいことではない。快くもてなすが子供は黙って小さくなっている。客人は子供に話しかけ、海苔巻きを出してくれるが子供は怯えている。
 どうも子供の様子がおかしいが、彼から見ると人当たりのいい旅人にしか見えない。叱っても子供は食べないので海苔巻きは自分が食べてしまう。次いで旅人は酒を取り出す。
 そこに知り合いの猟師がやってくる。猟師の連れた犬が唸りだす。犬を外に残して猟師も一緒に酒をよばれる。だが犬が吠え続け、子供も泣くので猟師は引き上げることにする。その時彼を外にいざなって、この犬がこれだけ吠えるのはおかしい。あの旅人はえてものではないかとささやく。

 彼はそう言われると子供の様子もあってこの旅人が怪しく思えてくる。旅人は一晩泊めてくれと言い出すが断ることにする。だが旅人はにやにやしながら腰を上げようとしないがようやく出てゆく。旅人が出ていくとようやく子供は生き返ったようになる。子供はあの人お化けだよと言う。

 突然別の男がやってきて旅人の風体を言い、行く先を尋ねる。あっちに行ったと答えると追いかけて行く。そして銃声。

 後から来た男は警察で、男は連れ合いの女を惨殺して逃げていたのだという。子供や犬はその女の幽霊を感じたのではないか、と杣人は語る。

・西瓜
 ある学生が夏休みに静岡の友人宅に遊びに行く。この友人は旧幕臣の子孫だが、祖父は維新の際に江戸から静岡に移住して帰農し、茶の栽培で財を成したとかで暮らしぶりはよい。
 学生が逗留したのは今は世を去った祖父が使っていたという離れだった。親戚に不幸があって友人は一晩留守にすることになり、学生はその間の暇つぶしに友人宅の土蔵にあった古書を読む。これはこの家の先祖が書き残したもので友人も中身を読んだことは無いらしい。
 学生は古書を読むタイプのようでちょうどいい、みたいな。そこに稲城家の怪事という話が書かれている。

 享保19年、下谷御徒町の立花家辻番所の番人が中間を呼び止めて荷物は何だと聞く。中間は西瓜でございますと答えて風呂敷を解くと女の生首が出てくる。これを包み直しておいて番人が中間を詮議すると本所の稲城家の奉公人で、主人のいいつけで親類に西瓜を届けに出たところ道に迷ったのだという。風呂敷に包む時は確かに西瓜だったとも。
 不思議な話だな、ともう一度風呂敷を改めると今度は西瓜が出てくる。この場には4人がいたのだが全員同じものを見る。結局そのまま中間は釈放される。
 中間はこの生首か西瓜かわからなくなったものを届けてよいものか迷い、主人に相談しようと引き返す。主人の妻がうまく説明できない中間をいぶかりつつ包みを開けるとまた生首になっている。今回ちょっと違うのが、妻や中間には生首に見えるのが主人にだけは西瓜に見えている。割ってみると中から蛙と、女のものらしい長い髪の毛が出てくる。
 西瓜を買った八百屋に問いただすとその西瓜は青物市場で買ったものではなくある旗本屋敷から買ったのだという。つまり武士の内職みたいな。
 その屋敷には悪い噂もあったそうだが具体的には書かれておらず、話はここまでで終わる。

 学生は戻ってきた友人に古書の内容を話す。友人はこれは群衆妄覚というものだろう、と一笑に付す。笑いつつも実はうちにも西瓜に関わる言い伝えがあるんだ、と話しだす。
 この家のあたりは200年ほど昔は百姓が住んでいて畑あらしの被害に困り、若い者に見張らせたところ西瓜を盗んだ者がいたので捕まえて、勢いで滅多打ちにして殴り殺してしまった。殺されたのは身元のわからない老婆だったが当時はそれで罪に問われることもなくすんでしまう。
 だが畑に老婆の幽霊が出るようになり、その農家の者は西瓜を食うたびに一人また一人と死んで絶えたという。友人の祖父は維新でこの地に移り住んだだけなのだがその言い伝えは聞いていて、もともと西瓜を好まなかったせいもあって食わなかったし妻も息子夫婦も同じだったのだが孫である友人は食うという。それでも何でもないよ、と笑う。学生はそれから京都の親戚のところに行くが、帰京の途中でまた寄ってくれということになって日を約して別れる。
 約束の日に訪ねると、友人の葬儀が営まれていた。彼は西瓜に当たって死んだのだった。

・鴛鴦(おしどり)鏡
 語り手はもと警察官で、東北のある小さい町の警察署に勤めていた時の話。非番の日に俳句会に出て夜11時頃、小さな弁天の祠のそばを通ると動くものがある。誰何するとうずくまった俳句仲間だった。だが彼は今日の句会には不参加だった。
 こんなところで何を、といぶかしく思うが知り合いでもありおかしな人間でもないのでその日はそのまま別れる。だが翌々日になって弁天池で女の死体が発見される。19歳になる料理屋の娘で容貌も悪くないが足がちょっと不自由な娘だった。日頃からそのことを気にしていて弁天さまに願掛けしていたという。
 語り手は職務として死体を調べるが自殺とも他殺とも判然としない。ふとそばの柳の木を見ると根元が掘り返されている。俳句仲間がうずくまっていたあたりである。

 娘が自分の不具を日頃気にしていたこと、最近好きな相手ができたらしいがその相手と身体のせいで一緒になれないと悩んでいたらしいことが店のものから証言されて自殺説が有力になるが、語り手は俳句仲間への事情聴取はかかせないと判断して実行に移す。
 取り調べではなくあくまでも個人としてあの時は何をしていたのか問うと黙っている。そこに芸妓と別の俳句仲間が通りかかったので事情聴取は中断となる。
 通りかかった方も実はこの話の発端の時語り手と一緒だったので、彼にもその夜事情を聴くことにする。彼の方が疑われている男と親しいこともある
 その夜、彼が聞き出したという事情を話す。疑われている男はおとなしい性質で、先ほど通りかかった芸妓にそこを惚れられて交際中だった。二人ともそのことはうまく隠していた。
 だがそこに料理屋の娘も彼に迫るようになって、ちょっと受け身なところのある彼は断り切れず迫られるままに関係を結んでしまう。つまり三角関係になってしまう。
 最近それを女二人が鉢合わせしたことから互いが知って、女同士の暗闘が人知れず続いていたらしい。そして二人の女は同じように弁天さまに通って願掛けをはじめたところ二人とも同じ夢を見たそうで、柳の根元に埋まっている鏡を見つけた方が勝ちだということで語り手が彼を見とがめた時は芸妓がそばに隠れていたが、翌日は料理屋の娘が彼を呼びだして根元を掘ったところ鏡を見つけた。そこに芸妓がやってきて鏡の奪い合いとなって池に突き落としてしまったのだという。語り手は芸妓を確保に向かうが姿を消していて、弁天池の中から死体となって見つかったという。青銅の鏡を抱えていて、鏡の裏には鴛鴦の模様が彫ってあったという。

とりあえずここまで。 
 
 
 
 

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事