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「長安牡丹花異聞(森福都著)」

2019/06/28 19:00 投稿

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  • 森福都
  • 古代中国





・古代中国を舞台にした、分類がむずかしい話が集まった短編集。共通して呼ぶなら、やはり「異聞」だろう。

・長安牡丹花異聞
 大唐の時代の長安。玄宗皇帝の時代。一人の少年が牡丹の鉢を市場で売ろうとしている。彼には足の不自由な母がいて、孝行息子である彼は母が食べたいという季節外れの桃をあがなうため、自分で作り出した椿の鉢を売って資金を作ろうとしたのだった。この牡丹は暗くなると光るのだ。彼は園芸師の弟子である。だがこの光る牡丹は彼が独自に生み出したものだった。
 その鉢を買った衛士、今いえば警察官みたいな青年と、彼の行きつけの店の舞姫がからんで、舞姫を青年が身請けするためにこの夜光牡丹を、という話になるのだが、実はこの牡丹が光るのは堆肥に発生した光る細菌だかのおかげ。なので臭いのだ。臭ければ光っても買い手はいない。おりしも牡丹の品評会が開かれる。これに優勝すれば身請けの金が出来る。さてどうするか。このままだと舞姫はいやらしい宦官が身請けしてしまう。というところで舞姫が機転を利かせ、ついに臭わない夜光牡丹の栽培に成功する。そしてその宦官はライバルが現れたと知ると、牡丹の鉢を盗み出してしまう。

・累卵
 武氏周朝の時代。都には則天武后がいる。地方長官を補佐する別駕(べつが)という役職があるらしく、湖州というから中国を無理やり東京に例えれば品川区か港区あたりの(無理やりですぞ)位置にあるような気がするあたりから、無理やり東京都に例えれば新宿都庁あたりっぽい(無理やりですぞ)あたりの都・洛陽に旅をすることになった姓は蘇、名は無名という別駕がいる。旅の間身の回りの世話をする小者が腰を痛め、やむなく世話をしている14歳の娘・謝玉瑛が同行することになる。この娘は家族と洛陽付近を旅していたところを盗賊に襲われて天涯孤独となったのをたまたま見つけた無名が世話をしている。養女に、と思ったのだが、私は父母の敵を取る身であり、そんな安穏とした身分にはなれませんとこれを固辞する。無名は妻とも死に別れ、子供もいない不惑だから40歳。だが実の娘同然にかわいがって、敵討ちなどあぶないことはしないでほしいと願っている。玉瑛は目元険しく肌浅黒く手足は棒のようで器量はよくないが無名への孝心は強いという。旅の邪魔と髪を切り落とせば少年のごとく。引き取られて既に三年が過ぎている。
 無目は眠そうな目、愚鈍で茫洋とした印象だが希代の捕物名人としても知られている。玉瑛の両親の敵は無名が唯一取り逃した相手であり、彼はひそかに玉瑛のためにも族を捕まえてやろう、と決意している。そして盗賊は今も洛陽付近にいると思われる。
 洛陽には知人の李粛という男が県尉をしている。よくわからないけど警察署長か検察の責任者みたいな役らしい。なんと則天武后の愛娘・太平公主が盗賊の被害にあって宝物を盗まれたということで、捕まえないとクビよ、みたいに言われているらしく捕物名人と噂の高い無名を頼ってくる。
 そう言われても妙案など、と思っているうちに無名は風邪を引いてしまう。玉瑛が作ってくれた玉子酒を飲んでふと累卵(るいらん)の計なるものを思いつく。卵を高く美しく積み上げたものには賞金を出すというもの。無名はこれで犯人を割り出せるというのだが。

 いろいろエピソードがあるが、累卵の計のおかげで宝物盗難事件も解決し、玉瑛の敵も処刑される。ついでに関係ない盗賊たちも余波で大勢捕まる。玉瑛は胸に刃が刺さっているように感じていたのだがそれも消えたようで、両親の死は無名との出会いでもある、と思うようになる。この旅の間に身体つきもだいぶふっくらしてきて胸もふくらんできた玉瑛は、このままずっと小父さまのそばにいたいと思っている。

・チーティング
 清帝国の乾隆帝が太上皇帝として実権を握っていた時代。いわゆる科挙の試験のひとつ、最も過酷とも呼ばれる第一試験である郷試は貢院(こういん)という試験のためだけに作られた独房が連なったような建物で行われる。挙子と呼ばれる受験生はここに七日間立てこもって試験に挑むことになる。この挙子の資格を得るにも県試、府試、院試という関門を通らねばならない。郷試に合格しても会試、殿試というものが控えている。
 主人公も受験生だがちょっとわけありである。この試験は万民に平等といいながらも難関であり、合格するには幼き頃より試験勉強に明け暮れないとなかなか合格は難しい。するとそういうことをできる者は金持ちの子弟に限られてくる。合格して進士という身分を得れば官僚となり甘い汁を吸える。すると豪商の一族なんかが合格者に増えてくる。実力でなら文句はないが、財力にものを言わせてチート行為つまり不正をしている疑いが濃い。なぜなら郷試の成績抜群でも会試は全然ダメ、という者が少なからずいるのだ。それでも郷試を通れば挙人と呼ばれ、いろいろと特権を持つ身分になる。
 主人公は受験生に紛れ込んで怪しい奴を見つけ、カンニングの現場を押さえるか証拠を見つける役割を持った一種の秘密捜査官なのだ。
 そこで彼は今年で4度目の受験だという見るからに病弱な青年と知り合う(食事やトイレなどで独房から出たり入ったりは結構自由な様子)。彼はもう合格はできないと見切っているようだが、ある事情で受験をやめられないのだという。彼は主人公を気に入ったようで、もし困ったらこうしなさい、とあることを教えてくれる。

・殿(しんがり)
 いわゆる安禄山の乱が起き、李隆基皇帝は都・長安を捨てて愛妾・貴妃の故郷を目指し落ちのびる。宮殿には暴徒が侵入し、略奪がはじまる。
 主人公の緑耳(りょくじ)もこのどさくさにまぎれて自由を得て、宮殿を後にする。これまで捕らわれの身だったのだ。
 彼は故郷の亀茲(きじ)という西方の砂漠の町に帰ろうと思うが、楊建という若者が彼に貴妃をもしもの時は守ってくれ、と度々頼んでいた事を思い出す。楊建も下っ端ながら貴妃の一族だった。どうしたものか、と思いつつ、皇帝の逃亡ルートも故郷への道も途中までは同じなのでとりあえず歩いていくと、貴妃のお付きの女官を拾ってしまう。
 器量だけが自慢で高慢な彼女たちを緑耳はあまり好きではないのでシカトして置き去りにするがやがて楊建が追いついてきて彼女を馬の背中に乗せている。
 楊建の馬はここでつぶれてしまい緑耳が女を乗せてやることに。楊建は何やら大荷物も抱えていて、これは貴妃に献上する楽器なのだという。さらに象の親子もついて来る。そのあとも次々に女たちを拾い、最終的に宮女6人を緑耳が乗せてやることに。彼女たちは揺れるの待遇が悪いのなんのと文句ばかり。いいかげんにしろ、と思った頃に追っ手がやってくる。
 はたして貴妃のもとにたどり着き、楽器を渡せるかということになるが、結末は歴史通り悲劇である。
 緑耳は巨大な駱駝である。

・虞良仁膏(ぐらじんこう)奇談
 時代は書いてないけど二千数百年前、苑王という王の正夫人で緯氏という人が皮膚病に苦しみこのままでは王の寵愛も失うということになってある文官がこれを治せば自分も出世できると思い、かねてから虞良仁膏なる薬で皮膚病を治すと噂の名医と評判だった医師を迎えに行く。だがまだ43歳と壮年のはずの医師は死んだという。後継ぎに会うがまだ16,7の少年で文官はがっかりする。若い頃から父の教えを受けたというわけでもないみたいで、父親の5人の妾と折り合いが悪く別に暮らしていたという。だが受け継いだ医書により虞良仁膏の造り方は知っているという。だがこれで患者を治したことは一度もないという。一つだけ不明の材料があるらしく、父はそのうちわかるとしか遺言しなかったらしい。
 だが他に頼るものも無いので文官はこの若者を都に連れてゆく。若者は付け髭で老人に扮し、あなどられないようにして夫人の下に通うがなかなか効果は出ない。次第に若者と夫人は治療にしては長すぎる時間を夫人の部屋で過ごすようになる。文官は心配でたまらない。
 ある日、若者が最後の材料がわかりました、と文官に告げるや薬の調合をはじめる。薬ができるとあっという間に夫人の病は快癒して、文官はこの功績として宮女を妻に賜ることとなる。二人とも王に拝謁してお言葉を得る名誉にもあずかる。
 若者も今は素顔に戻り、施薬所を造りますのでと文官の屋敷内の余った土地を貸してほしいという。妻を迎える事でもありますから、母屋のほうも一緒に私が建て直しを手配しましょうという。文官は承知する。
 すると出来上がった母屋がやけに広い。若者に聞くと、貴方の妻として来る宮女は5人いますので。私は父のように若死にしたくありませんので、虞良仁膏の材料の製造はよろしくお願いします、と笑う。

・梨花雪
 大唐帝国建国の第二代皇帝・太宗こと李世民の妻は長孫皇后。聡明で謙虚で質素、教養があって慎み深い賢婦人であったらしい。だが34歳でこの世を去る。
 その長孫皇后の教えを最も忠実に引き継いだのが金鈴公主だという(検索しても出て来ないので著者の創作かもしれないけど中国語の文献にはあるのかもしれない)。長孫皇后の娘ではなく江夏王の娘と書いてある。
 江夏王という人は23人だかいたらしいけど、中国語のページでよくわからない。日本語だと江夏投手の記事ばっかり出て来る。
 その従兄で李徳秀という青年がいる。金鈴からはお兄様と呼ばれる子供の頃からの顔見知りであり、皇族の末席であることをうまく使って辺境の国々を旅してまわっている。宮仕えはしたくないので。
 彼は特に国名が記されていないある高地の国を訪れ、その国を統一したばかりのラムポ王と親しくなる。王は40代で、素朴な人柄。唐に対しては大国として畏怖と敬意を感じてくれている。こういう国とは親しくしておいた方が母国のためにもなると、彼は適当な皇女をラムポ王の嫁にしようと工作する。いろいろ紆余曲折があって彼の思ったのとはだいぶ違ってしまうが皇帝のOKが出て皇女をラムポ王に賜ることになる。
 だが嫁入るはずだった安善公主が急死し、急遽代わりに立ったのが金鈴だと知ったのは、婚礼の仕切りのために高地の国に入っていた彼が花嫁を出迎えた時だった。
 これはもう一人の金鈴の従兄の画策で、彼が皇室の派閥争いで不利にならぬよう、金鈴をだしにした結果だった。この従兄は軽薄でいろいろ問題を起こす男である。当の金鈴は異国に嫁ぐことが長孫皇后に教えられた女の道、みたいに思って断わろうなどとは考えない。さらにいろいろあって嫁ぐのはラムポ王ではなく息子のジェンチツェン王子になってしまう。徳秀は金鈴が不憫でならぬが今更どうにもならない。婚礼が済めば帰国するしかない。

 数年して徳秀は皇帝の命で金鈴の様子を見にかの国への訪問がかなう。二人の王子をもうけていた金鈴は元気にしていたが、実は夫の命を狙うものがあるようなのです、と徳秀に打ち明ける。その陰にはまたしても軽薄な従兄がいるらしいのだが。

 というような感じで以上。

 古代中国って、地名や人物名は聞いたことあっても例えば長安や洛陽は今のどのへんなんだ?とかそれらの位置関係や都市間の距離はどのくらいなんだ?とかあまりよくわからない。
 私は横山光輝版三国志でおぼろげな三国の位置関係がわかる程度。揚子江と黄河のどっちが北か南かもよくわからない。
 さらに古代中国それぞれの時代の習慣や風俗やその時代のキーマンなんかもよく知らないんだけど、こういうの読むともっと詳しく知ってるともっと面白く読めそうな気もしてくる。

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