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「楽昌珠(森福都著)」

2019/01/06 19:00 投稿

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  • 森福都
  • 講談社文庫
  • 古代中国




・唐代の中国を舞台にした夢ファンタジーというか。
 幼馴染の男1名、女2名が10年ぶりに再会する。みな10代後半になっている。だがそれぞれに問題を抱えていて、将来にはもはや希望が持てないような人生になりつつある。
 彼らはそれぞれ動物に導かれるようにどことも知れぬ桃源郷のような土地で出会う。
そこで思い出を話し合ううちに睡魔に襲われ、眠ると同じ時代らしい都に住む別人の人生を夢見るようになる。夢が覚めると桃源郷に戻るが、また眠ると都人となり、何年も何十年も過ぎている。男の一歳下が女、さらにその下がもう一人の女であったのが、男と一番年下だった女は親子、もう一人の女とは孫娘といってもいいくらいの年齢差がある。女の年齢の上下も入れ替わっている。上の二人は桃源郷での記憶も蘇るが、一番下に生まれた娘にはその記憶がなかなか戻らない。

 彼らはこの世界で実在の人物たちと交わり数奇な運命を送る。

 則天武后。その娘、太平公主。彼女と天子の座を競う、李隆基(若き日の玄宗皇帝)、その忠臣の宦官・高力士。玄宗の妃・王皇后と寵妃・武恵紀。

 太平公主と李隆基が協力して、権力を握ろうとした韋皇とその娘、安楽公主を討伐し(韋皇の乱)、李隆基が協力者であった太平公主を討つ(太平公主の乱)。武恵紀は王皇后を追い落とし、皇后同様の待遇を手に入れようと暗躍する。

 そんな時代に三人は権力闘争の中で翻弄されながら生きてゆく。いつかは夢が覚めてあの桃源郷に戻れると思いながら。でもこの夢である世界でも精一杯生きねばならない。

 偉くなるけどそれだけ失脚の危険も増えてしまうとか、男はたいへん。幼馴染の女二人は彼の友人の娘と養女として転生している。嫁にしたかった相手だが養女では口説くわけにもゆかない。
 女の一人は太平公主と面識を得て、娘子軍(天子の身辺警護が役割だが、唐の創成期は平陽公主の率いる精鋭部隊だったが今は堕落してお飾りの軍になっている)の武術指南に。
 もう一人の女は李隆基の後宮に入るが、絶世の美女であるのに天子の寵を得られない。どうやら呪いがかけられているらしい。

 ラストは物語が終わったような終わらなかったような。無限ループなのか出口があるのか。

 タイトルの楽昌珠(らくしょうじゅ)は、現世と夢の世界両方に登場する不思議な珠で、これを使うと何かの片割れを探すことができる。他に復字布という、消えた文字を復元できる布と、雲門簾(うんもんれん)という桃源郷の世界への出口が登場して、各章のタイトルになっている。
 

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