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「琥珀枕(森福都著)」⑦明鏡井(めいきょうせい) 「終」

2018/09/28 19:00 投稿

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  • 森福都
  • 光文社文庫
  • 古代中国


・最後のエピソード。
 藍陵県県令の趙季穀(ちょうきかく)には官舎の裏側にある井戸で沐浴する習慣があった。井戸は明鏡井と呼ばれていて、三十三年に一度だけ水面が曇りなく鏡のようになり、そこに映った人物と会えるという言い伝えがある。だがそれが何時なのかはわからない。

 ある日温進忠(おんしんちゅう)という男が訪ねてきて、井戸を覗かせてほしいという。彼は竜王の化身という男に、今日がその日だと聞いたというのだ。進忠は誰を見たのか、私の余命は短いようですが悔いはありません、と礼を言って帰る。
 その日は同じようなことを言って訪ねて来るものが他にもある。料理人だという馬公次(ばこうじ)という男。彼は程大易(ていだいえき)という幼馴染の姿を見たらしく、満足して帰る。さらに命の恩人を探しているという李少敏(りしょうびん)という若い娘が訪ねて来る。
 彼女は幼い時に河に流され、すっぽんの妖怪に助けられたのだという。彼女は井戸をのぞいて、妖怪ではなく彼女を案内してくれた徐先生の顔が見えたのでがっかりする。実は徐先生が命の恩人と知らずに。彼女は明鏡井の言い伝えは知らず、どこかの古井戸に棲んでいるというすっぽんの妖怪を探しているのだった。先生は自分がそうだ、とは言わない。少女は河に落ちたことで生みの親とはぐれ、その後養父母に拾われたのだがその養父母も今は亡く、にわかに本当の親はどういう人か、すっぽんの妖怪に聞いてみたくなったのだという。徐先生は親が名乗り出なかったことにも事情があるのだろう、と諭す。

 この地方には楊家という大地主の別宅があり、そこに子及(しきゅう)という悪ガキがいる。遅く授かった子供のせいかワガママ放題に育っていて、同じような年頃の趙昭之にも喧嘩を売ってくる。子及もこの日忍び込んで来ていて井戸の中を見ている。彼の家庭教師でこれを止めようとした願士済(がんしさい)も。李少敏はここの小間使いである。

 間もなく明鏡井に水死体が浮かぶ。趙県令は井戸をのぞいた者に事情を聞く。李少敏と願士済は無関係だったが、士済は井戸に少敏の顔を見た事がわかる。彼は彼女に恋心を持っていると告白する。少敏は顔を赤らめるが嫌では無い様子。次に呼ばれた温進忠は死体を見て程大易だと証言する。彼と幼馴染と言っていた馬公次を探しにやるが、なんと馬公次も道端で死んでいた。転んで打ち所が悪かったらしい。
 温進忠は程大易は知っているが馬公次は知らないという。嘘っぽいのだが確認はできない。進忠は井戸に誰の姿を見たのか聞くと、三歳の時に行方不明になった娘が成長した姿だったという。
 子及が昭之のところにやってきて、程大易と馬公次のことを話すうちに昭之はこれは事故ではなくて殺人事件だ、と考えを述べると、子及はじゃあ犯人をつきとめてみろ、と挑発する。そうしなければ楊家の力で県令をこの土地から追い出してやる、なんて言うので昭之はこの勝負を受ける。

 昭之はある事から、李少敏の父親は温進忠だと気付く。だが徐先生が教えないのは何かわけがあるのだと察する。実は温進忠はかつて暴れまわった「三蛟(さんこう)」という盗賊の一人だったのだ。程大易と馬公次も仲間だった。三人に何があったのだろう、と考えた昭之は、4人目の仲間がいて、これと残りの三人が仲たがいしたのではと考える。そんな時に温進忠も殺されてしまう。

 子及が犯人がわかったか、とやってくる。昭之は犯人は君さ、と言い当てると、子及は恐ろしい正体を現す。そこに徐先生がやってくる。

 趙県令が徐先生を息子の家庭教師に雇ったのは、礼儀正しく賢いが、どこか繊細でひ弱なところがある息子のそばに妖怪を置くことで度胸がつくように、とのことだったのだが、この事件の真相を見抜き、悪と対決して退けた息子にはもう家庭教師は必要ない、とわかっていた。
 徐先生も役目は終わった、とそのまま姿を消してしまった。

 そういえば物語の冒頭、趙県令が井戸の中に見たのは息子の顔だった。悪と戦い、退けた経験を持った、ひと回り逞しくなった息子の顔だったのだ。

 ということでこのシリーズはここで終わる。

 現代中国はいろいろあれだけど、古代中国は面白いな。

著者は2012年に本を出した後の動静がわからない。ホームページがあったらしいが現在は無くなっている様子。まだ55歳との事だから、またこんなのを書いてほしい。
 
 
 
 

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