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「琥珀枕(森福都著)」④妬忌津(ときしん)

2018/08/21 19:00 投稿

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  • 妖怪


・旅の方士というふれこみで、呉仲彦(ごちゅうげん)という男がこの土地に流れて来る。方士は方術を使って妖怪退治をすることもあり、徐先生と共に彼と出合った昭之は妬忌津の妖怪を退治に来たのだと思い込む。
 妬忌津というのはこの土地にある渡し場のことで、現在の県令の前の県令の妻がここで身投げをした。彼女の夫は美人の妾を三人も家に入れており、彼女は自分の容色が劣るせいだ、と気に病んでのことだった。
 それからしばらくして、若く美しい女が渡し舟に乗ると水中から白い右腕が伸びて美女を引きずり込むようになる。これまでに五人が襲われて、四人は船頭が助けたが一人はそのまま行方知れずになったという。だが、ある時船頭が渡し賃を水中に投げ入れると腕は引っ込んだ。
 それ以来、美人が乗るときには銭袋を投げ入れるのが土地の習慣になった。評判の美女は銭袋が一つでは足らぬこともあるという。一方醜女であれば銭袋がいらないか、というとそんなことはなく、女は自分に醜女である、というお墨付きがつかないように容姿にかかわらず銭袋を投げ入れるようになる。一方で美人は銭袋の量が自分の美女のレベル証明のように競う。
 原因を作った県令は早々に転出し、代わって赴任してきた現在の県令、つまり昭之の父親はこれをなんとかしたいのだがいまだ果たせずにいるという。

 呉仲彦は方術など使えないのだが、妖怪退治に来たのは本当である。彼には徐先生と昭之と話していた間は身を潜めていた、相棒の丁香(ちょうこう)に倒せそうか、と話しかける。
 丁香は美女で、妖怪である。仲彦が博打と喧嘩に明け暮れ、母親に金をせびる無頼漢だった五年前、親の決めた許婚である孫玉珍(そんぎょくちん)が裕福な商人に嫁入ったと聞いて暴れた彼を、母親がもうこの息子を生かしておいては世間に迷惑がかかるばかりだと鉈で切り殺そうとした時に、その傷口から生まれた人面瘡なのだ。
 丁香は歌も上手く、酒もたしなむ。仲彦の全身を自由に移動し、大きさも変わる。話し相手でもあり、口だけしかないが夜の相手もする恋人でもある。彼はそれ以来悪事からは足を洗い、丁香のアドバイスを受けて人に悪さをする妖怪を退治するのが本業みたいになっている。

 だが、様子を見に妬忌津を訪れた仲彦に、丁香はこれは妖怪の仕業ではありません、と告げる。
 呉仲彦と丁香はなかなか魅力的なキャラクター。丁香は自分には顔しかないので呉仲彦の本当の妻になれないことを残念に思っている。そして結構嫉妬深く、仲彦が他の女を哀れんだりするとすぐに機嫌が悪くなる。どうせ私には玉門がありませんから、みたいに拗ねる。

 仲彦と丁香はこの事件を解決するのだがそれによって背後に隠れていた強大な妖怪と対決することになり、丁香は我が身を犠牲にして仲彦を救う。その結果美貌と妖怪としての命を失うが、仲彦の妻となれる肉体を得て、人間となる。ちょっといい話だった。

 
 

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