メタ坊のブロマガ

「十八面の骰子(さいころ)(森福都著)」④黒竹筒(こくちくとう)の割符

2018/08/03 19:00 投稿

  • タグ:
  • 森福都
  • 光文社文庫


・趙希舜は都である開封に戻り、兄の趙廷輝(ちょうていき)の屋敷を訪ねている。希舜が自分の父親が皇族であることを知り、父に目通りして親子の名乗りをあげた時、4人の兄弟ができた。趙廷輝は36歳で一番上の兄だ。だが彼は希舜を自分の財産の取り分を減らす者、と毛嫌いしている。希舜は父の後ろ盾は欲しかったが、別に財産に対する執着はない。

 その趙廷輝は今病気である。希舜はその容態が気になって見舞いに来たのだが、兄は弟に顔色を見ることさえ許さない。引き上げようとしたところ、屋敷を訪ねてきた茅燕児(ぼうえんじ)という娘に話しかけられる。ほっそりして少年のような娘である。
 彼女は故郷の鄭州の山の中で親切にしてやった老人から真っ黒に塗られた竹切れを渡され、来年の立夏にこの割符を持って屋敷を訪ねれば朝廷から褒美が出るだろう、と聞かされてやってきたものの、どう取り次げばいいのか迷っていたところを希舜が屋敷から出てきたので話しかけたのだった。希舜が屋敷に戻ってそのことを伝えると、他に二人同じような割符を持ってきた人物がいることがわかる。三つの割符を組み合わせると一本の竹筒になり、それぞれ「杏」「錘」「三五一」と書かれていた。これは最初は真っ黒だったのが次第に黒が薄まり、その下から浮かび上がった文字である。

  希舜はこれが兄の屋敷の中の場所を指していると見当をつけ、父に兄の屋敷の調査をする許可をもらう。庭には杏の木がある。三、五、一の枝分かれの真下に錘を垂らしたと思って地面を掘ると、埋められた古井戸が見つかる。元軽業師だという燕児が古井戸に逆さ吊りになって降り、文字の書かれた竹筒を拾ってくる。ここには巡按御史が鄭州の副知事の悪事を暴く、という予言のようなことが書いてある。また、先帝の皇后である劉大后のものと思われる金椀をはじめとした金製品が32点も出て来る。

  この屋敷には以前はある豪商が住んでおり、その豪商の妹は後宮に入っていて劉大后とも仲が良かったが、彼女はやがて侍女とともに毒キノコにあたって死に、豪商も家が傾いて屋敷を手放したという。おそらく劉大后と親しかった時代に両家の間を行き来していた侍女が金製品を盗んで古井戸に隠していたのだろう、ということになる。

 竹筒の文字は金製品とは直接関係無いと思われるが、名指しされた副知事を落とし入れようとしているのか、本当に副知事が悪人なのかはなんともいえない。副知事は知事の監視役でもあるので、知事が彼を煙たく思っているのかもしれない。

 茅燕児の現在の主人はその知事の息子で、彼女から竹筒の文字について聞き出した息子は希舜に巡按御史がお出ましになるのであれば是非お手伝いさせていただきたい、と茅燕児を連れて頼みに来る。真面目な申し出ともとれるが、ちょっとうさんくさくもある。
 
 希舜は兄の病気が長引くのは飲んでいる薬のせいではないかと強引に兄の薬を調べるが、高名な医師の弟子が調合したものだ、と兄は主張する。希舜はとりあえず薬を取り上げるが、兄はまたすぐに手に入れるさ、とうそぶく。

 希舜は巡按御史としてではなく、ふらりと避暑代わりに立ち寄ったという感じで賈由育を連れて鄭州を訪れる。傳伯淵は別行動で、巡按御史として潜入しているはずである。すると知事の息子は自分の屋敷に泊まってくれ、と親友みたいにふるまうので仕方なく申し出に応じる。息子は不自然なくらい巡按御史の手助けをしたがり、州に来るであろう巡按御史を発見してこちらから助力を申し出よう、という勢い。希舜はこれを科挙に合格できない彼の一種の逃避行動であろうと解釈する。

 兄が飲んでいた薬には毒である金丹(水銀)が入っているらしいのだが、この薬は都で堂々と売られている。金丹入りを隠しているのではなく、金丹が入っている、と売っているので客を騙しているわけではない。客が金丹が入っているなら効き目があるだろうと買っていくのだ。末端の薬局を責めてもだめで、この薬を卸しにくる製造元を押さえねばならない。兄同様、この薬を飲み続けて病気になる高官が大勢いるらしい。

 この薬を作っているという医師を捕まえなくてはならない。知事の息子の家庭教師だという老人がどうもそうらしいのだが・・・

 今回はある理由があって希舜と伯淵は別行動。この事が危うく二人の命を奪いそうになる。希舜と伯淵と夏瑶琴にまつわる過去についてもさらに少し明らかになる。その当時、伯淵は生ける屍であったというのだが。医師の一族に生まれ、医師としての修行をしていた希舜が何故医師を目指すことをやめ、巡按御史になったのかもそのあたりに理由があるらしいのだが。

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事