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「三屋清左衛門残日録(藤沢周平著)」3(6~10)ネタバレ

2017/11/30 19:00 投稿

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6.川の音
 釣りに出た清左衛門は、急流で流されそうになっていた母親と子供を助ける。まず子供が流されそうになり、助けようとした母親が抱き上げたものの深みにはまり、動けなくなっていたらしい。
 おみよというその百姓女とは、それをきっかけに釣りのついでに時折り言葉を交わすようになり、時には梨などをいただくようにもなる。
 ほどなくして、近習組の黒田欣之助という男がやってくる。黒田は今後おみよに近づかないでいただきたい、と脅しをかけてくる。どうもバックには藩の大物がいるらしい。いう通りにしなければどうなる、と清左衛門が問うと、おみよの命があぶなくなる、と黒田は答えて帰る。
 これは何ごとか、と佐伯にそれとなく持ちかけてみると、最近おみよの村の人間が一人不審な死を遂げているという。事故と処理されたが、どうも殺されたらしい。
 数日して、当のおみよが清左衛門のところにやってくる。何も知らぬ彼女は、秋茄子と青菜を届けに来てくれたのだ。さりげなく死んだ男の話を聞いて見ると、その男が死んだ夜には村の大地主の家に客があり、手伝いに出ていたという。そして彼女はその時の客の顔を見たらしい。それだ、と思い当たった清左衛門は客の人相を確かめる。おみよは知らずに、筆頭家老の朝田弓之助と普段は江戸にいる現藩主の弟、岩見守の密談の場を見てしまったらしい。
 これは危険だ、と察した清左衛門は、おみよにそのことは誰にも話さぬように、と言い聞かせ、おそらく今も見張りがついているであろう彼女を家まで送ろうとする。
 だがその道中、二人の武士が立ちふさがり、おみよを渡せと迫って来る。清左衛門はこの女子にもしものことがあればただでは済まさぬぞ、と談合するが相手も引く気配はない。斬り合いになるかもしれない。
 だが、そこに呼びにやらせていた平松与四郎が追いついて来る。藩中に聞こえた剣の達人・平松のおかげか、相手はいったん引く。

7.平八の汗 
 清左衛門の子供の頃からの道場仲間だが、あまり剣の方は伸びなかった大塚平八という男がいる。近年交流が絶えていたが、彼が訪ねてくる。平八も一年ほど前に隠居しているという。祐筆を勤めてきた家で、跡取りは江戸勤めだという。
 相談があるということなので、清左衛門は平八を時々佐伯と飲みにいく、「涌井」という小料理屋に平八を誘う。ここには、みさという顔なじみの女将がいる。
 平八の頼みというのは、誰かご家老に紹介状を書いてくれないか、用人を勤めたお主ならできるだろう、というものだった。平八の父親は失態があって早く退き、平八が若くして家督を継いだ事情がある。今、父の失態について腑に落ちないところがあり調べており、当時を知る重役にお尋ねしたいことがあるのだという。
 清左衛門は、間島弥兵衛宛の紹介状を書くと快諾する。間島は実務に詳しく、藩内の派閥どちらが勝っても家老職に留まり続けている人物である。
 平八は酒のせいか蟹汁のせいか、びっしょり汗をかいていた。後に、平八の息子、平三郎が職務で大失態をやらかし、平八は清左衛門の紹介状を持って間島に減刑の嘆願に行き、軽い処分で納めてもらったらしい、と又四郎から聞く。清左衛門は平八に利用されたのだが、特に彼を責めなかった。
 ほどなくして学塾で、牧原新之丞という上士の若者から、論語を読む会があるのだが、一度顔を出してはもらえないか、という誘いを受ける。さほど身分も高くない者達の気楽な勉強会という事で受ける事にするが、行ってみるとそこには間島弥兵衛がいた。さらに、聞かされていなかったメンバーがおり、どれも遠藤派と藩内で呼ばれている者ばかり。誘った牧原はいない。
 清左衛門は間島に紹介状の侘びをいうが、間島は気にするな、代わりと言ってはなんだが、しばらくこの会合に出席してほしい、と告げる。
 どうも藩内がきなくさくなりつつある様子である。

8.梅咲くころ
 論語の勉強会という表向き、実は遠藤派の会合に出席するようになった清左衛門は、安西佐太郎という男と知り合い、好感を持つ。勘定方に勤める下級武士だが、藩で一、二を争う鉄砲の名手でもある。安西はもう40過ぎだが、最近妻を離縁したという。
 松江という女性が清左衛門を訪ねてくる。15年ほど前に奥方の女中をしていて、男にもてあそばれて自殺を図り、用人になって間もない頃の清左衛門がいろいろと力付けたり相手の男を罰したりしたことがあった。
 松江はその後も江戸屋敷で先代藩主の内室に仕え、藩主の代替わりによってその人が屋敷を変わるのに合わせて勤めを引き、嫁にゆくことになったと報告に来たのだった。かつては可憐な娘だったが、今はかなり太って貫禄がついている。だが気持ちのやさしさは昔と変わらない。あんなことがなければとっくに縁付いているはずの魅力ある女性だが、30過ぎまで独身で来てしまった。
 だが、松江が嫁入ることになっている家の名を聞いて、清左衛門はちょっと嫌な印象を持つ。佐伯を訪ねて確かめると、その相手、野田平九郎の家は町人を相手に不正を行うなどよからぬふるまいで罰せられ、今は借金で火の車だという。松江は持参金目当てで縁談を持ちかけられたのだ。
 清左衛門は松江にこれを伝え、縁談は取り止めとなる。松江の実家の身分は野田家に比べて低く、彼女はこれまでに貯めた400両の持参金を持って嫁に行くつもりだったという。縁談が潰れた彼女は、ひと月ほど国元で過ごして江戸に戻ることにしたという。
 ほどなくして清左衛門は野田平九郎に襲われるが、安西佐太郎に救われる。清左衛門は、この時、安西と松江なら、似合いの夫婦になるだろう、と思いつく。

9.ならず者
 清左衛門は、「涌井」で相庭与四郎という男と待ち合わせている。先方から佐伯を通じて、内々に会いたいと打診があったのだ。相庭は江戸屋敷で藩主側近の近習頭取を勤める、若手実力者と言われている男だが清左衛門は会った事がない。
 相庭は気持ちのいい男で、二つのことを尋ねる。現藩主から、清左衛門であれば間違いなかろう、と言われてきたという。
 一つは藩内の派閥争いのこと。清左衛門は朝田派と遠藤派の最近の動きについて、知る限りをその場で話す。相庭によれば、先だっての藩主の弟、岩見守の一時帰国以来あやしい動きがあり、朝田派と岩見守の間で何らかの密約が結ばれたのではないか、と現藩主は憂いているという。
 現藩主には病弱な男子が一人しかいないが、岩見守には健康な男子が二人おり、出来もいいという。次期藩主争いの気配がある。
 もう一つは半田守右衛門という男のことで、御納戸頭を勤めていたが商人から賄賂を取ったということで罰せられ、それには清左衛門も携わったのだが、今になってこれは部下に落とし入れられた冤罪ではなかったか、という疑いが出てきたのだという。相庭は現在は減俸の上国元に戻されている半田が本当に冤罪であったのか調べてほしいと頼む。もしこれが間違いであれば、現藩主は正してやりたいという意向だという。
 清左衛門は早速聞き込みにまわる。半田は罪に問われてからも精勤を続けており、誰に聞いても評価が高い。これは冤罪で間違いないか、と心象を受けた彼は、最後に駿河屋という商人を訪ねるが、ここで駿河屋は毎月少なからぬ金額を半田に渡しており、賄賂といえば賄賂でございましょう、と告白する。
 涌井で半田に問いただすと、半田も賄賂をとっていたことをあっさり認めるが、江戸での事は冤罪だったという。清左衛門は、現在賄賂を取っているのであれば、今江戸の冤罪の話を藩主に上げるわけにはゆかぬ、駿河屋の件は必ず返すなら不問にするが、冤罪の取り無しもなしだ、と告げる。
 涌井の女将のみさが店に押し入ってきた昔の男に乱暴されそうになり、清左衛門はその男を追い払うが、帰り道で匕首を持った三人の男に囲まれる。
 忘れ物を取りに戻ってきた半田が、清左衛門を救ってくれる。
 半田の賄賂は高利貸からの借金を返すためで、その借金は重病の孫の命を救うためだったとわかる。清左衛門は、半田に何かしてやれることがないか、と考え続けている。

10.草いきれ
 夏風邪で寝込んだ清左衛門は、半月ほど嫁の看護を受ける事になり、いい嫁と思うと同時に、亡くなった妻の喜和であればもっとわがままを言えたのに、みたいにも思う。
 遠藤派の会合もしばらく欠席することになったが、久々に道場に行き、平松与五郎から前回の会合で朝田派と思われるものが紛れ込んでおり、騒ぎがあったと聞かされる。その人物は金井奥之助の息子、祐之進という男で、金井とは息子の代になってもまた対立する派閥に所属することになってしまったらしい。
 道場に通う少年同士が、草原で殴り合いをしているのを見かけた清左衛門は、自分も道場に通っていた少年の頃、同じように殴り合いをしたことをふと思い出す。
 その相手は若くして雷に打たれて死んだ。殴り合いの原因を作った、ちょっと度胸のない少年だった男は勘定奉行まで出世し、家督も増やして清左衛門より二年早く隠居した。昨年妻を病気で亡くしたと聞いている。
 その男、小沼惣兵衛にふと会ってみたくなった清左衛門は、彼を呼び出して涌井に誘うが、惣兵衛はそれなら、俺に付き合え、とあるしもた屋に案内する。
 そこは彼が最近囲った、若い妾の家だという。
 19だというその女を見て、清左衛門はあまりいい印象を持たないが、惣兵衛はうらやましくなったろう、と自慢げである。
 悪酔いした帰途、あの妾は惣兵衛が寝込んでも親身に看護はしてくれないだろう、と清左衛門は思う。

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