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「三屋清左衛門残日録(藤沢周平著)」2(1~5)ネタバレ

2017/11/29 19:00 投稿

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・各エピソードを備忘録的に。

1.醜女
 隠居して思わぬ寂寥感に襲われ、何か積極的に動かねばならん、と思っていたところに幼なじみでもある町奉行、佐伯熊太がやって来る。相談があるという。
 かつて前藩主の夜の相手を一夜だけつとめた、うめという娘がいる。地元の菓子屋の娘で行儀見習いに奥に勤めていたときに、どういうわけか殿の目にとまったらしい。
 だがお相手は一度限りで、すぐ暇を出され、実家に戻ったという。評判の醜女だったという。それが彼女16歳の時で、10年前のことになる。
 それ以降は三人扶持をたまわり、嫁に行くこともできず、恋も許されず、実家に言ってみれば閉じ込められたような状態である。その娘が懐妊したらしいと噂が立ち、それを亡き殿の威信を辱める事だと憤り、その娘を斬れ、といきりたっている山根備中という重役がいるという。この人は由緒ある家系だがそれを鼻にかけるところがあって万年組頭。だが激高すると何をやるかわからないあぶない人でもある。
 清左衛門は記憶を探って、新藩主が扶持を取り上げる代わりに以後勝手たるべし、つまり恋も結婚も自由だ、という指示を出している筈だ、と指摘して熊太に書類を捜させる。
 さらに娘と会って相手を聞き出し、その相手とも会って二人が真剣である事を確認して、縁談が調うように助力することにする。娘は美人とは言えないが肌は白く、精気もある。相手は呉服屋の倅竹之助で、こちらは娘より三歳年下のうわついたところのない、誠実なタイプの美男子だった。
 既に娘の周囲に剣の達人で山根の部下、犬井彦之丞がうろうろしている。
 書類も見つかり、問題の山根の説得にも熊太と二人であたって成功する。
 その帰り道、娘が幸せになれそうで良かった、と思う清左衛門と、事件が解決して何よりだ、という熊太。清左衛門はそのへんの感想にも隠居と現役の違いが出るようだ、と考えている。季節は春とある。
 

2.高札場
 すでに夏になっている。主人公はまず身体から、とこの間10日に一度はかつて学んだ無外流の道場に通い、釣りにもよく出かけている。ようやく木刀を振っても息があがらなくなり、半日釣りをしても疲れなくなってきた。釣りに出る時には嫁が弁当を持たせてくれる。だが、家督を継いだ息子が城から戻るまでには、自分も帰宅するように心がけている。
 そんなある日、帰宅した息子が高札場で腹を斬った男がいる、と告げる。若い頃に短期間同じ道場にいたこともあり、釣りに出かけた時にすれ違ったこともある男だったが、特に親しくも仲が悪くもなく、顔見知りといった程度の男だった。
 だが町奉行の佐伯熊太が調べてほしいことがある、とやってくる。死んだ安富源太郎は女の名前を叫んで腹を切ったという。だが安富家の者は口をつぐんで何も語らない。奉行所としては犯罪ではないので公に調べるわけにはゆかないが、気になることではある。ところが安富家には藩の重役がいて、そちらから調べるなと圧力もかかってきたという。こうなるとますます気になる。そこで道場の同門で、釣り仲間である隠居が調べるのであれば、重役も文句は言えまい、ということになったらしい。
 清左衛門は目撃者や関係者に聞き込みをし、源太郎は家格の低い家から高い家に婿入りし、その時に夫婦約束していた娘を袖にしたことがあったらしいとわかる。また、婿入り先ではあまり大切にされず、うとんじられていたとも。
 袖にされた娘はほどなくして嫁にいったが早く亡くなったとも聞き、この女に対する懺悔と、自らの境遇を嘆いて腹を切ったのであろうということになるが・・・

3.零落
 清左衛門は藩校の助教でもある江戸帰りの学者、保科笙一郎の塾を訪ね、老子、孟子などの漢籍を借りる。身体の方はだいぶ慣れてきたので、そろそろ学塾に通う準備をはじめたところ。その帰りに雨宿りをしたことから、長く交流が絶えていた旧知の人物と再会する。
 その男、金井奥之介は、かつては同じ道場に通う友人だった。家格もほぼ同じ。清左衛門は120石、奥之介は150石。年は22と25。だが現在、用人もつとめた清左衛門は270石の家督を息子に譲り、奥之介は25石になっている。
 何故こんな差がついたのかといえば、藩を二分する権力抗争があり、どちらの派閥につくか、ということが二人の明暗を分けたのだ。その差がついたとはっきりわかったところで、二人は互いに疎遠となった。奥之介は一方の派閥の有力者の娘を妻に迎え、負けが見えても方向転換できなかった。
 この再会を機に、二人は時折り酒を飲むようになるが、楽しい酒とは言えなかった。奥之介はどこか、自分の境遇を逆手にとって清左衛門にたかるような、ねたましいような態度をとる。それをたしなめなかったのはどこか負い目のようなものを感じていたのかもしれない。
 二人はやがて釣りに行き、事件は起きる。
 奥之助との付き合いが、すべて終わったようだ、と清左衛門は思うようになる。

4.白い顔
 法事で訪れた寺で、清左衛門はどこか見覚えのある女性とすれ違う。顔もろくに見なかったのだが、雰囲気に懐かしさを感じる。
 和尚に聞いて、それが若き日のあこがれの女性、波津の娘であったとわかる。
 その女性は家中で評判の色白の美人で、家格の高い家の娘であり、やはり同格の上士の家に嫁入ることが決まっていた。清左衛門からは家格からも器量からも、あおぎ見るような人だったが、その人が城下を離れたところで難儀しているところに行き合わせ、家まで送り届ける、という巡り合せになったことがあった。
 はじめて顔を見るその人は噂にたがわず美人で、性格もつつましやかで気取りもなく、好感の持てる人であった。若かった清左衛門は女性と気軽に話すようなこともできず、緊張する道行きだったがようやくあと少しで御城下、となったところでにわかに一天掻き曇り、二人はずぶ濡れになって近くのお堂で雨宿りをすることになり、雷を怖がるその人を、思わず守りたくなって抱きかかえたことがあった。下心からではなく、庇護の気持ちから出たものだったが、特別な思い出となった。
 その人は既に病気で亡くなったと聞いていたが、娘の事は知らなかった。友人の佐伯が遠い親戚にあたるとかで、娘の現在についての情報を持っていた。
 それは、娘が一度名家に嫁入ったものの夫が酒乱とわかり、その暴力に耐えかねて離縁したのだが、もと夫は泥酔するたびにもと妻の実家に押しかけ、今もお前は俺の女だ、などと狼藉を働くという。実家では後添いでもいいので再婚させればこうしたことも無くなるだろうと相手を探しているがこれに恐れをなしてよい縁談も来ず、困っているという。
 清左衛門は、道場の高弟である平松与五郎であれば家格も年のころも釣り合い、似合いの夫婦になるのでは、と思い立つ。彼は数年前に妻を亡くし、子はいない。
 与四郎は27、その娘、多美は21。平松は剣の腕は確かで度胸もあり、元夫の存在も気にしない。話はとんとんと進み、二人はほどなく祝言を挙げる。
 だが、清左衛門は、逆恨みした元夫、藤川金吾に待ち伏せを受ける。

5.梅雨ぐもり
 清左衛門には二男三女がいたが、女児一人は乳飲み子のうちに病死。嫡男又四郎は家督を継ぎ、他三人は他家に片付いた。末娘の奈津は御蔵方の杉村要助に嫁いで三年になり、二つになる女児がいる。
 その奈津が久々に実家に戻ってきたが、まるで骸骨のように痩せ、態度もおかしい。もともと無口な娘で、不満があっても口に出さず体調に出るたちで、問いただしてもおそらく答えないだろう。
 だが嫁の里江がうまく聞き出してくれたところによると、夫に女が出来たらしい。ひんぱんに料理屋に出入りし、脂粉の匂いを漂わせて帰ってくるという。
 彼は要助が出入りしているという播磨屋を訪れ、要助の女らしい、ひでという女中と話してみる。すると、雑談の間に、この店の藩重役の出入りが非常に多く、それもこれまでは考えられない組み合わせで来ているものがいるとわかる。
 敵対していた派閥の実力者同士が会っているらしい。だが要助はどちらかというと一人で来ることが多く、おひでを相手にするというよりは、一人で静かに飲んでいることがほとんどらしい。ここは要助レベルの身分のものが気軽に来れる店ではない。
おひでとできている、という様子もない。はて、と清左衛門は考え込む。
 だがほどなくして当の要助が訪ねてきて、極秘の任務のためで他言もこれ以上の調査も無用、女がいると思われているならちょうどよい目くらましになるので奈津にもしばらく伏せておいてほしい、と頼んで去る。
 ほどなくして要助が2、3人の男と斬り合い、軽症を負ったと知らせが届く。清左衛門は彼を見舞い、正体がばれましたので、お役目もこれまでのようだ、と要助から顛末を聞き、末娘にあらましを伝え、女などおらん、と言い添える。
 末娘はみるみる元気を取り戻す。


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