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「クリスマス・ボックス(リチャード・P・エヴァンズ著)」メモ(ネタバレ)

2017/08/20 19:00 投稿

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・素人が書いた小説が、マイケル・クライトンやアン・ライスと肩を並べるベストセラーになったということで当時話題になったらしい。20年以上前の作品になる。
 もともとは広告代理店勤務の男性が、3人の娘に書いたものを自費出版したところ、あれよあれよとそういうことになったらしい。

 クリスマス・ボックスというものが日本人にはなじみがないけど、作中の説明によれば
「中にクリスマスのものをしまっておくんだ。カードとか飾りとか、そんなものを」というものらしい。


 話はかなりシンプル。アメリカのソルトレークに住む一家があり、夫は貸衣装みたいなビジネスをしている。妻は元デザイナーだが今は専業主婦。4歳の娘がいる。
 夫はソルトレーク出身で、それからカリフォルニアに引っ越して成長し、進学して妻と出会い、大学を卒業して故郷に戻って今の商売をはじめた。
 一部屋しかないアパートで暮らしていたが、娘も大きくなりもう限界、と引っ越し先を探す。すると、近所の老婦人が食事の支度と簡単な家事、庭仕事のできる住み込みの夫婦を探しているという。乳幼児がいてもかまわないという。個室も貰え、祝祭日は休み。
 渡りに舟とさっそく応募し、採用される。屋根裏部屋に普段は使わない荷物を入れさせてもらい、その時にゆりかごの中に置かれたクリスマス・ボックスを見つける。これは亡くなった老婦人のご主人が、趣味で集めていた聖書の入れ物として買ったらしい。ご主人が亡くなった後は聖書のコレクションは売却され、手元には3冊だけ残っているという。現在はクリスマス・ボックスは使っていないらしい。

 老婦人は何年も前に主人を亡くしていて、広い家で独り暮らし。個室どころか、寝室と応接間と子供部屋を一家に与えてくれる。どうも老婦人は手伝いがほしいというよりは、寂しいので家族が欲しかったという感じ。娘も実の祖母のように彼女になつく。家のことは妻で十分こなせるので、夫は仕事を続ける。彼の仕事はイベントがある時期ほど忙しく、クリスマスなどは特に稼ぎ時だ。彼は企業家精神旺盛なタイプでもあり、仕事が面白くてしかたがないタイプでもある。

 夫はビジネス拡大のチャンスをつかみ、これを逃してはならぬ、とさらに仕事に注力し、家族とのんびり過ごす時間も少なくなっていく。

 夫は天使の夢を何度も見るようになる。天使が舞い降りて来るが、彼が顔をのぞき込むと天使は石になってしまう。そんなある日、夫は音楽で目を覚ます。調べるとその音楽は屋根裏部屋の、クリスマス・ボックスから出ているとわかる。そこで夫は掛け金を外し、蓋を開けて見る。そこには「いとしいあなた」という書き出しの手紙が入っている。老婦人が書いたものかもしれない。彼は最初の方だけ手紙を読むが、人の手紙を読んではいけないと途中でやめる。
 どうもいとしいあなたと会えない今年のクリスマスは寂しい、みたいな事が書いてある。

 クリスマスが近づき、夫は書き入れ時でますます忙しくなる。娘は夫の顔を見ると遊んでほしがるが、彼はいつも「あとで」と出かけてしまう。
 そんな様子を見ていた老婦人が、この本を読んでおあげなさい、と一冊の本を渡す。いつになく強い言い方だったので娘の部屋にいく。娘は大喜びで父親の読む話を聴くが、すぐ寝てしまう。

 妻はある日、老婦人がいつも読んでいる聖書が開いたままになっているのを見つけ、なにげなく手にとる。そこには新らしい涙の跡がある。聖書の他のページも、古い涙の跡がいっぱいで、ところどころ文字もにじんでいる。彼女はそっと聖書をもとのように戻す。

 ほどなくして老婦人が行き先を告げずに出かけ、遅くまで帰って来ない。夫が帰宅してもまだ戻らない。心配して待つ二人。やがて戻った老婦人は、医者に行ってきたこと、以前から頭痛に悩まされていたのだが脳腫瘍とわかったこと、もう手術もきかず、治療の術がもうないことを告げる。
 しばらくは小康状態が続くが、老婦人の夫に対する態度がしだいにきつくなってくる。
彼が仕事に没頭するのを快く思っていないようで、露骨に妨害さえするようになる。また、こんな質問をする。「この世で最初のクリスマスの贈り物は何だったと思う?」彼は答えられないが、老婦人はそれに不快感を示す。

 夫は病気が進んだのかと思うが、妻は人柄は以前と変わらないという。妻は涙の跡だらけの聖書の話をし、きっと何か話していないことがあって、それを夫が聞こうとしないので腹を立てているのでは、という。

夫は意を決して、時々老婦人の手伝いをしていて顔見知りの男性を訪ねる。彼は子供の頃から老婦人と行き来があり、昔のことも知っているはずだ。
 男性は、今はそれを話すのにふさわしくない、クリスマス・イブの午後に話に行くよ、と答える。

夫の店に、子供用のスーツを注文に来た男性客がある。5歳だという。そしてスーツはリースではなく、買い取りたいという。夫は子供は成長が早いのですぐにサイズが合わなくなりますし、丈を伸ばすにしても限界があるので1年もしないうちに着られなくなります、とリースをすすめる。だが客は、「そのスーツを着せて埋葬してやりたいんです」と答える。

 その翌日、老婦人が倒れ、病院に運ばれる。彼女が入院し、眠り続けたままクリスマスイブがやってくる。近所の男性が訪ねてきて、夫をある場所に案内する。そこは墓地で、風雨にさらされた天使像があった。夫はそれが、彼の夢に出てきた天使とわかる。そこは、3歳で亡くなった、老婦人の娘の墓だった。
 男性は、老婦人が毎日のようにその墓地に来て泣いていた事、時が過ぎても娘が亡くなったクリスマスシーズンには彼女を偲んでいたことを語る。クリスマス・ボックスには、毎年老婦人が娘に宛てて書いた手紙が詰まっていた。

 老婦人の容態が悪化する。夫は妻と娘を連れて病院へ行く。幸い老婦人は意識はあって、みんなと話をできる。夫は貴方の言いたかったことがわかりましたよ、と伝える。

 クリスマスボックスは老婦人の死後、夫婦に託され、二人は中の手紙を暖炉で焼く。

 老婦人の死後、家は無くなるが夫の家族は今もこの街に住んでおり、内分けはわからないが家族は今や6人に増えているという。彼らは毎年クリスマスになると、老婦人の墓を訪れる。

 夫は自分と娘は日々成長し、今の娘とは今しか話ができないことを悟る。仕事に追われて、娘と話すことがなかった、娘にねだられても「あとで」を繰り返した日々を反省する。
 だが「あとで」が永遠に来ないこともある。老婦人の娘や店の客のように。
 そうした日々が永遠でないと知っている老婦人が、何故あんなに怒っていたかもわかる。

 というような話。著者はこれで仕事を辞めて専業作家になり、老婦人の若い頃など、この作品の続編も書いて三部作としたらしい。
 作家として大成したのかはわからないが、この本は300万部売れたらしいので生活には困っていないかもしれない。作品中に登場する天使像は実在したモデルがあるらしい。

 ちょっといいお話になりすぎている気もするのだがもともと娘に書いたという事で、そこは仕方ない。

 よく保育所が足りない、というニュースを聞くが、保育所に入っても親子が一緒に過ごせる時間が無くなることに変わりはない。保育所も必要なんだろうけど、母親と子供が自宅で一緒に過ごせるような仕組みを考えるのも必要なんじゃないかとも思うけど、専業主婦は何かいけないことになっているみたいで、あまりそういう方向にはすすんでいないみたい。

 夫の方も最近は残業ができなくなっているみたいなので、子供や妻と一緒にいる時間が増えるのかもしれない。

 親子にしても夫婦にしても、家族として一緒にいる時間がある程度は必要な気もするので、特に子供が幼い時期には望めばそうできるのがいいような気がする。

 あんまり一緒すぎてもまたイライラしてよからぬことになっちゃうのかもしれないけど。

一緒にいる間は忙しすぎたり疲れすぎたりしてうまくいかず、一緒にいることがストレスになってしまい、相手と二度と会えなくなってからもっとああすればこうすれば、と自分を責めるようになってしまうというのは痛ましい。

夏になると冬を思い、冬になると夏を求めるよりも、夏は夏、冬は冬を楽しんだ方がいいと思う。誰かと一緒にいる事を厭わしく思い続けるよりも、一緒にいる時にしかできないことを楽しんだ方がいいと思う。どちらにしても一部例外をのぞいて死ぬ時は独りなんだし。

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