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「隠し剣 秋風抄(藤沢周平著)」メモ

2017/01/06 19:00 投稿

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 藤沢氏の作品に、ナントカ剣、カントカという作品が結構たくさんあって、「たそがれ清兵衛」を皮切りにいくつかが映画化されたり、NHKなんかでドラマ化されたりした時期があった。
 今調べると「たそがれ清兵衛」が2002年、「隠し剣 鬼の爪」が2004年、「武士の一分」が2006年、以上3作は山田洋次監督で話題になった。別の監督の「必死剣鳥刺し」が2010年、「秘太刀 馬の骨」というNHKドラマが2005年に放送されたりもした。
 劇場作品は大作扱いだったが、原作は40ページ前後の短編で、場合によってはいくつかの短編の組み合わせになったりしている。
 たそがれ清兵衛はちょっとタイトルの感じが違うけど、「武士の一分」の原作は「盲目剣谺(こだま)返し」というのが正式なタイトルで、この本の最後に入っている。

 これらはいずれも、さして偉くもない侍たちが、剣の腕にだけは秀でたものを持ち、かといってそれが出世の役に立つわけでもなく、普段はその腕をひけらかすこともなく質素に暮らしている。すると何かしらの非常事態が発生して、彼らはいやおうなくその腕を使わねばならない仕儀にあいなる、というような枠組みになっている。
 非常事態も、藩の危機を救う、とか殿や姫君の命をお守りする、などという武士としての誉れになるようなものではなく、お偉方の勢力争いの結果、誰それを斬れ、みたいなことになったり、過去藩命によって人を斬ったがために命を狙われることになったり、とサラリーマンが社命に従ってちょっとグレーなことをやるとそれが災いとなって命のやり取りになってしまう感じ。これらの事件に、たいてい妻や好ましく想っている女性が巻き込まれてしまい、彼女たちを守るためには逃げるわけにもいかない。時代小説のようでいて、サラリーマンが共感するような悲哀が感じられる。

 たいてい主人公側は以前は腕が立っても、現在は道場を離れていたり、年老いていたりして現役ではなくなっている。一方戦う相手はたいてい現役バリバリである。
 それで勝つには、かつて習い覚えたナントカ剣が必要となる。著者はその剣がどのようなものか、ということはあまり説明してくれないので、何で勝ったのかはよくわからないことも多いのだが、その剣が主人公の命だけはなんとか守る。そして勝ったからといって、特に何かいいことがあるわけではない。多くはそれまでの生活を捨てることとなったり、守りたかった女性も結局は失うことになったり。そのような戦いの場にいざなわれたことが、すでに人生の過ちであるのだろう。

 備忘録的に主人公の流儀とかを。登場する流派は字が違うものもあるが実在したものらしい。相手方は一刀流としか書いていない事も多い。この場合、伊藤一刀斎の流れを直接ひいた伊藤派一刀流なのか、小野次郎右衛門忠明の小野派一刀流の流れなのか、よくわからない。
藤沢ファンの間では周知のことなのかもしれないが、私はよく知らない。

・酒乱剣石割り
 丹石流。戦う相手は忠也派一刀流。
・汚名剣双燕
 不伝流。戦う相手は同門。
・女難剣雷切り
 今枝流。戦う相手は一刀流。
・陽狂剣かげろう
 制剛流。戦う相手は同門。
・偏屈剣蟇ノ舌
 不伝流。戦う相手は無外流、去水流。
・好色剣流水
 井哇(せいあ)流。戦う相手は一刀流。
・暗黒剣千鳥
 三徳流。戦う相手は同門。
・孤立剣残月
 無明流。戦う相手は梶派一刀流。
・盲目剣谺返し
 東軍流。戦う相手は一刀流。

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