レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
全16チーム中、決勝に残ったのはこの4組。
まずは、危なげなくダントツで予選通過。
チームファンタジスタ!
2位通過は、若手3人衆。
魔鳳炒飯!
続いて、余裕を持って3位通過。
クラッシャーズ!
最後は、予選で常に上位にいたものの、最後は2400点差でギリギリ決勝進出。
おじまご!
この4チームで、予選のポイントをリセットで全6回戦を打ち、最も点数を稼いだチームが優勝となる。
ただし、チーム戦のため、各チーム1人2回打たなければならない。どこで誰を出すかも重要となってくる。
予選突破の後、おじまごのリーダー木原は語った。
「その日の麻雀について、チーム3人でよく話してますね。タイプが全く違う3人だからこそ、それぞれが学ぶべきところがあると思ってるんで。ぼくも勉強になってるんですけど、特に愛内には今回、『タイトルを獲り切る』打ち方みたいなものを学んでほしいなと思ってますね」
それは、何度も決勝に進出しながら、あと一歩優勝に届かない愛内に向けたエールだ。
木原自身もそうだった。何度も決勝に残りながら、どうしても優勝に届かない。そんな期間が長かった木原だからこそ、愛内の苦悩がわかるというものなのだろう。
【1回戦:12000放銃からの大逆転トップ!】
東1局から冨本にメンチンが入る緊急事態。
こういうときに仕事をするのが愛内だ。
發をポンすると、場に安いピンズに照準を合わせ、冨本がツモ切った6pで3900。
きっちりかわしていく。
ところが、東3局で石井のオヤリーチを受けると、安牌に窮し、スジの6sで12000放銃となってしまう。
しかし、ここから愛内に突風が吹く。
まずは石井から8000を取り返すと、次局では、配牌に恵まれ、一発ツモの倍満。
これで愛内が12000放銃からの大逆転を果たし、おじまごがまずは一歩リードする。
【2回戦:おじまご2連勝!】
愛内からバトンを受けたおじまごの園田が、東1局で一発ツモの3000・6000を決めると、南場でもチートイツの白単騎を、勝負に出た渋川から打ち取って8000。
おじまごが2連勝を決めた。
【3回戦:吉田がカンチャンツモ2発で初トップ!】
クラッシャーズの吉田が、カン2mをリーチでツモると、ウラも乗って3000・6000。
すると、次局にもカンチャンリーチをかけると、ハイテイでツモって2000・4000。
この2発で初トップをチームにもたらした。
オーラスに奮起したのは、2連勝の若手2人からバトンを受けたおじまごのリーダー木原。
着を上げるにはハネマンが必要になるため、まっすぐ進めて素点を回復する考え方もあるが、木原はここから打1p。
タンピンドラ1ウラ1や、タンピン三色というリーチツモでのハネマンを狙っていく。
これは実らずラスとなるが、タイトル獲得にはこういった多少強引な姿勢が必要だということを、愛内・園田に見せているように映った。
【4回戦:逆転した愛内、粘る達也】
まずは達也が6000オールで先制する展開となった4回戦、東3局で河野のオヤリーチを受けて愛内が手を止める。
巡目を考えればオリもある。
それは簡単なのだが・・・
「タイトルを獲るために学ぶべきことがきっとある」
おじまごで学んだこの4か月を反芻するように少考した愛内。下した判断は勝負の9p切りリーチだった。
結果、赤5s一発ツモで3000・6000。
これで達也の独走を許さない点差にすると、達也のオヤ番ではこのマンガンツモで逆転を果たした。
しかし、後がないチームファンタジスタの達也も、再逆転に向けて手を作る。
ここから打1sでテンパイを外すと、次巡ツモ8mでフリテンリーチ。
これをきっちりツモって1300・2600。再逆転トップで、優勝に望みをつないだ。
【5回戦:掴む園田】
今から10年ほど前、園田と木原は、同じ店に勤務していた。
園田が負けた日は2人で飲みにいき、
木原が負けた日は2人で飲みにいき、
互いに勝った日も当然飲みにいった。
麻雀に対するお互いの考えも、当然熟知している2人。
それが園田と木原なのだ。
園田は、是が非でも良い位置で木原にバトンを渡したい。
しかし、チャンス手のテンパイを何回か入れるものの、結果は最悪。
テンパイから2枚切れの北を切ると、三原に3200。
またテンパイから5sを切ると、三原に3900。
打点的には地味だが、2着目のクラッシャーズからの直撃は非常に痛い。
結局、3チームが望む園田ラスの並びでオーラス4本場を迎えていた。
しかし、ここで園田に手が入る。タンヤオを目指してまっすぐ進めると、ダマテンでも無条件2着の赤5pが入り目。
これに石井が8sツモ切りで飛び込み、園田がなんとか2着で凌いだ。
後は木原に任せるだけ。
そして、木原は任せるに足る男である。
【最終6回戦:これがタイトルを獲るってことなんだよ】
最終戦、おじまご木原とクラッシャーズ吉田の着順勝負となった。
東3局、オヤ吉田が仕掛け、少考の後5pを手出しした。
安かろうはずもないこの仕掛け。
これに対してオリるのは簡単なのだが、木原の感覚は逆。
「これはまずい。この5mはポンしておかなければならない」。
要は、前に出る気満々なのである。
すると、次巡にテンパイした木原は、生牌の發をノータイムでツモ切った。
これが、すべてだったように思う。
木原は言った。
「オヤがテンパイなら、字牌よりは断然4p7pだと思ってましたよ。少考での打5pだったんで」
つまりはこういうことだ。
發發7s8s5p5p6p
ここから6s9sが埋まって字牌で当たれるようにするためには、打6pになる。
發發7s7s5p5p6p
これは、4p7pが先に埋まったケースだと字牌が当たりになるが、果たして4p7pが埋まって少考するだろうか。
そう考えると、確かに字牌は通りそうなのだ。
しかし、頭ではわかっても、これを実戦で打てるかどうかは別の話。
当然、字牌が当たるリスクもあるわけで、木原も通ると思っているとはいえ、歯を食いしばって發を切っているのである。
しかも、チームリーダーとして最終戦を打っているのだ。
相当なプレッシャーがあるだろう。
そんな状況で、この發を打ち抜くこと。それこそが、愛内と園田へのメッセージ。
「これだよ。タイトルはこうやって獲るんだよ」
次巡、木原が7pツモで、優勝を手繰り寄せる1000・2000を決めた。
そして、吉田をジリジリ引き離しながら迎えた南3局、この吉田のオヤさえ落とせば優勝という局面だ。
ここで、躊躇なくリーチ。
アガリ連荘であるため、じっとしていれば勝手にオヤが落ちるかもしれない。
リーチのみのカンチャン待ちで、分が悪いかもしれない。
オヤに追いかけられて、12000放銃するかもしれない。
だが、ここまできて、弱気な「かもしれない」は、優勝するために必要ない。
これが、木原が背中で伝えたかった、タイトルの獲り方なのだろう。
3軒リーチになるが、先にいたのは木原の8p。
4か月にわたる勝負がついに決した。
「これが優勝するってことだよ。楽しいだろ?うれしいだろ?麻雀、やめらんないだろ?」
リーダー木原が最終戦をきっちり締め、愛内・園田に初優勝という経験をもたらした。
これぞ、チーム戦をうまく活かした勝ち方なのではないだろうか。
おじいちゃん木原が、
じぶんの経験を分けたり、2人の考えを聞いたりして、
まとまったチーム。
ゴールテープを1番で切ったのは、おじまごの3人だ!
実に、チーム戦の優勝にふさわしい最強チームだったように思えた。
優勝・おじまご
木原浩一(日本プロ麻雀協会)
園田賢(最高位戦日本プロ麻雀協会)
愛内よしえ(日本プロ麻雀協会)
今日は、木原も園田も負けていない。
やはり、勝って飲むのは最高だ。
そして、3人で勝って飲むのも、また良いものである。
完
観戦記者:鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
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