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かんたん教育学講座補足編 ~ゆとり教育で学力が下がっていない理由~

2015/05/28 15:44 投稿

コメント:2

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 このブロマガは私の製作した動画「かんたん教育学講座1 ~ゆとり教育の幻想~」に軽く補足を加えた補習みたいなものです。動画のほうをご覧になっていない方はそちらから見ることをおすすめします。


ゆとり教育の学力が下がっていない理由

1.教育内容削減という幻想

 動画では「『ゆとり教育で学力が低下した』という妄言」という表現をしました。また、その理由としてPISAと学習指導要領の実施年度という視点からの説明をしました。しかしこれだけではまだまだわからないところがありますよね。それは「なんでゆとり教育で学力が下がっていないの?」という点です。どういう理屈を並べたとしても、ゆとり教育によって教育内容が3割削減されたのは事実です(実は文部省のお役人さんの独自調査で削減数は1割ほどだったという研究もありますが)。

 こう言ってしまうと「やっぱり教育内容は減ったんじゃないか!」と感じる方も多いでしょうが、では具体的にどのように減ったのかをみてきましょう。そのときに重要なポイントは次の2点です。

・土曜日が完全に休みになった

・新しく「総合的な学習の時間」が開設された

どうです? ティンときましたか?

 土曜日授業がなくなり、さらに新しい科目が増えた。この時点で「教育内容は減って当然」なんです。ただでさえ土曜日が消えて、そのうえで新しい教科に授業時間を割かなければならない。むしろこのような状況で教育内容を増やしたら大バッシングでしょうね。当時の世論は「子どもが忙しすぎるからゆとりを与えるべきだ」というものが主流でしたから。

 教育内容は確かに減りました。ただし、それはあくまでも新学力観(いわゆる「生きる力」というもの。難しい話になるのでここでは省略します)のために必要な措置であり、同時に土曜日と総合的な学習の時間の影響によるものでもあるんです。不当な削減ではないのではないか、というのが私の主張です。動画内でも触れましたが、「円周率が3」なんてデマが広まったことで話がややこしくなったのかな、と思います。

 ちなみに円周率を3として計算すると何が起こるか、というのはなかなか面白いテーマなのでいずれ番外編動画みたいな感じで紹介したいですね。

2.PISA型問題

 さて、ここからは「PISA型問題」について話します。たぶん教育学に詳しい人はこの単語だけでこの項目の内容すべてを悟ったと思いますので、飛ばしていただいても大丈夫です。PISAについての説明は動画でかんたんにしていますのでそれを参照に。

 PISA型問題とは、簡単に言えばPISAで高得点を出すために必要な問題です。こういうと悪者っぽく聞こえますが、PISAでは「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の知識・技能を「実生活のさまざまな場面で直面する課題に、どの程度活用できるかを評価」するものです。ついでに言うと、記述問題が多いです。まだ難しいのでさらに簡単に言うと、勉強内容と現実生活をリンクさせた学力です。

 対して、TIMSSという学力テストがあります。まあ、PISAのお友達みたいなもんです。ただ、PISAと決定的に違うところがあります。それが、問題分の傾向です。

 TIMSS型問題では「学校のカリキュラムで学んだ知識や技能等が、どの程度習得されているかを評価」します。ついでに言うと、選択問題が多いです。はい、PISA型問題と比較してください。けっこう正反対というか、対をなしている感じですね。

 日本はもともと、TIMSSでかなりの高得点を維持しています。ぶっちゃけると、ほとんど5位以内をキープしています。つまり、日本の子どもは基本的にTIMSS型問題に強いです。

 ではPISAはどうだったか。TIMSSと比べると2000年度版の順位が少し低く、問題視されました。さらに2003年度版では2000年度版PISAよりも順位が下がり、これはゆとり批判に大きくつながりました。

 さて、実はPISAの結果とゆとり教育に関係がないというのは動画で話しましたが、ではなぜPISAの成績が下がったのか。

 答えは簡単でしょう。日本の子どもはPISA型問題に不慣れだった、それに尽きます。現に、この2003年の結果を受けてPISA型問題という概念が教育業界に知れ渡り対策が本格化していた2009年度版PISAで日本の成績は向上しています。

 私は、これが学力低下問題の真相ではないかと思います。ゆとり教育を学力低下に絡めると制度上辻褄が合わない点があまりにも多い点から、少なくともゆとり教育と学力低下の因果関係はないと考えるのが妥当でしょう。

 ちなみに、学力低下問題に大きく貢献した「分数のできない大学生」ですが、これも例によって学習指導要領の実施年度と対象となった年齢を考えると一般的にゆとり教育と言われている部分からは大幅にズレていますので、真面目にとりあう必要は特にありません。私はそう解釈しているため読んだことがないのですが、おそらく系統主義派の急先鋒の書籍ではないかと思っています。いつか読むつもりです。

 最後に。私がこの動画をつくる上で佐藤博志・岡本智周の「『ゆとり』批判はどうつくられたのか」という書籍をふんだんに参考にしました。動画のニコニコ市場に表示していますので、ゆとり教育に興味のある方はぜひ手にとってみてください。(関係者じゃないので、単純に良書だと思って推薦しているだけです)



コメント

tenni
No.1 (2015/10/13 22:41)
「分数ができない大学生」の真相は、分数ができないレベルの人間でも大学に通わせられるだけ日本が豊かになった、ということだと思っています。
.ふかみ (著者)
No.2 (2015/10/14 00:09)
>>1
なるほど、そういう感じなのですね。私は未読で内容を知らなかったので助かります。

まあ、著者の真意がどうであれ題名が題名だし学力問題で槍玉に挙げられる書であることに違いはないですので、いずれ読みたいものです(結局今の今まで読んでないけれど
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