中庸左派 のコメント

>マクロン大統領、米中の協力なしでは世界的課題は「不可能」と語る

 確かに、その通りだと考えている。中米新冷戦みたいな構図は時代錯誤であるし、米ソ冷戦を経た国際社会としてあまりに進歩がなさ過ぎると感じる。

 ただ、引っかかるのは、中米「協力」となった際、両者の力関係を構造的にどう見るか?という点。

 何が言いたいかと言えば、①中米二大国がそれぞれの陣営を束ねながら、協力して世界秩序を形成するのか、それとも、②中米超大国は存在しつつも、世界秩序の絶対的権威として君臨するのではなく、多極世界における相対的超大国として、限定的影響力を行使するに留まるか?という観点である。

 私は②を理想とするし、そうあるべきだと考えている。

 そして、②には、現状のアメリカ帝国をどう見るかという認識が深く関わると考えている。

 即ち、アメリカ帝国の覇権は没落しつつある、という時代認識の有無である。

 例えば、GlobalTimesのつぎの見解。

https://www.globaltimes.cn/page/202306/1292711.shtml

「ワシントンの世界的な影響力が低下していることは明らかである。米国からの独立性を示すというマクロン氏の意図であろうと、BRICS諸国とのさらなる協力に関心を示している可能性であろうと、これらすべては米国がもはやかつてのようなものではないことを示している。マクロン大統領は、西側諸国自身の失敗によって西側の覇権が終わりに近づいている可能性があると指摘した。」

 西側即ちアメリカ帝国の覇権低下という現実的時代認識を前提として、初めて、次のようなGlobalTimesの記事の意味が深く理解できるようになる。

「マクロン大統領はBRICSサミットへの招待を望んでいる?このアイデアは大胆かつ革新的だ:環球時報社説」

https://www.globaltimes.cn/page/202306/1292607.shtml

 実際にどうなるのかは、勿論、この流れを注視するべきだ。

 BRICsを巡っては、こんな動きも加速している。

 GlobalTimesより、「BRICS通貨はドル覇権に代わる「有力な代替通貨」」

https://www.globaltimes.cn/page/202305/1290700.shtml

「国際貿易において米ドルに取って代わろうとする各国の努力は、今年末に南アフリカで開催されるサミットでBRICS諸国が共通通貨導入の可能性を議論する際に、新たな高みに達するだろう、と中国の専門家は日曜日に述べ、この動きはドルの覇権に対する新たな一撃になり得ると指摘した。」

 サウジアラビアのアメリカ帝国からの離反も確実な流れになり、サウジの中国接近は、ペトロダラー崩壊を決定的なものにするだろう。

https://youtu.be/DiCMZppDsyo

 このように政治経済において確実に進行しているアメリカ帝国の覇権低下、自滅を踏まえて、我が日本の進むべき道を考える必要がある。

 しかるに、日本の主流権威筋メディアやそれを軽信するだけのB層は未だにアメリカ帝国の覇権が不変であるという観点からしか、国際情勢を見ていない。

 呆れたことに、日本では専門的知見から社会を善導するべき学者ですら、グローバルサウスは学術用語ではない、とかなんとか、あるものをない、みたいなヘンなこと書いていたのがいた。たしか、シノダとかなんとか、いう名だったか?

 いずれにせよ、度し難い認知の歪みである。事実現実を正しく見ることが出来なければ、それに基づく対応選択も間違うだろう。

No.3 16ヶ月前

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