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マクガイヤーチャンネル 第38号 【「『食人族』と科学からみたカニバリズム」補講:ポストコロニアリズムと『食人族』】

2015/10/26 07:00 投稿

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  • Dr.マクガイヤー
  • 映画
  • 評論
  • 食人族

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マクガイヤーチャンネル 第38号 2015/10/26
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おはようございます、マクガイヤーです。すっかり秋も深まってきましたが、まだまだ短パンで過ごしたいところです。


前回の放送「『食人族』と科学からみたカニバリズム」は如何だったでしょうか?

皆さんも自分や奥さんが出産する機会があれば、是非とも胎盤をほかほかごはんと一緒にご賞味ください。自分は二人子供がいて、二回もチャンスがあったのですが、すっかり失念していました……



年内の放送予定ですが、以下のようになっております。


○11/5(木)20時~

「最近のマクガイヤー11月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画やについて、まったりとひとり喋りでお送りします。

『マジック・マイクXXL』

『ピッチ・パーフェクト2』

『特捜戦隊デカレンンジャー10 years after』

等々について語る予定です。


○11/14(土)20時~

「マクガイヤーゼミ特別編 オタクのためのアート教室 第一回」

やまだを講師に迎えて、オタクのための絵画教室をお送りします。

初回は自分や新アシスタントがデッサンを教えて貰う予定です。果たして(おれは)きちんとしたデッサンを描けるのか?


○11/21(土)20時~

「最近のマクガイヤー11月号その2」

月一回お送りする予定の「最近のマクガイヤー」ですが、12月は特別編成のため、11月中に2回行うこととなりました。

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとお喋りする予定です。もしかするとゲストが出演してくれるかも?


○12/5(土)20時~

「ニコ生マクガイヤーゼミ 今だから復習したい『007 スカイフォール』とサム・メンデス」

12/4(土)より『007』シリーズ最新作『007 スペクター』が公開されます。

そこで、前作『007 スカイフォール』と両作の監督であるサム・メンデスについて解説する予定です。

是非とも『スカイフォール』を観賞してから放送をお楽しみください。


○12/26(土)20時~

「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会2015」

例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」。2015年のオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくる予定です。

とりあえず、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』については絶対に触れる予定です。


以上、乞うご期待!




さて、今回のブロマガですが、連載「遺言」はお休みして、前回の放送「『食人族』と科学からみたカニバリズム」で語り残したことについて書かせてください。


批評の一分野にポストコロニアル批評というのがあります。

16世紀、いや古代ローマ時代の昔から、ヨーロッパ各国は侵略によって海外領土を獲得してきました。植民地、すなわちコロニーです。

すごく大雑把に書くと、中南米は16世紀からスペインとポルトガルが、インドネシアは17世紀からオランダが、インドは18世紀からイギリスが、植民地として支配してきました。19世紀も半ばになると、植民地支配は最高潮に達します。アフリカ大陸は、フランスが東海岸と西海岸、イギリスが南部と北部に植民地を作り、残りをドイツやイタリアが分け合う……といった具合に、欧米各国が群がるように支配する形になりました。第一次大戦も第二次大戦も、基をたどれば帝国主義に基づく植民地獲得競争が戦争の理由といえます。

ところが第二次大戦が終わると、世界各地の植民地が「解放」され、次々と独立することになります。戦争によってそれまで宗主国であったヨーロッパ諸国が経済的に衰退したのが主な理由です。たとえ戦勝国であっても、6年にわたる戦争状態の維持は重い負担だったのです。

以後、それまで西欧人にとっては「ロマン」であり、「チャンス」であり、「冒険」であり、ポジティブなものとして捉えられていた植民地政策は、次第に「搾取」であり、「収奪」であり、「暴力」であり、ネガティブなものとして認識されるようになってきました。


元々、初期の植民地支配――スペインやポルトガルによる中南米の植民地化は、どこからどうみても略奪でした。富や資源を根こそぎぶんどり、天然痘や麻疹などの病気までひろめました。

ただ、そんな植民地支配は長期的にみるとあまりメリットがありません。いつまでも貧乏すぎる相手と取引すると、いつまでも旨味が少ないままなわけです。18~19世紀にイギリスやオランダが選んだ植民地政策は、相手国に投資し、インフラを整備して産業育成させ、「上前をはねる」というやり方でした。

それでも、(大勢の同国民が移民し、大規模な独立戦争で勝利したアメリカを除いて)国家としての自治や独立は完全には認められないままでした。植民地政策はやはり「搾取」であり、「収奪」であり、「暴力」なのです。


故に、20世紀後半、第三世界で相次いだ元植民地の独立は、念願であり悲願であったわけですが、これを契機にそれまでの長い植民地政策の歴史を見直そうというムーブメントが生まれました。

具体的には、それまで植民地だった国や文化圏から生まれた/生んだ文学作品や、帝国主義文化圏出身の作家が植民地をどのように描いた/描いているかについて、研究・分析するというもの――ポストコロニアル理論に基づくポストコロニアル批評の誕生です

ヨーロッパ諸国の経済的衰退も理由の一つですが、別の側面もあります。人間の意識という面からみると、二度の世界大戦で「世界」を知ったヨーロッパの人々――文明人が、アジア、アフリカ、中南米といった第三世界に住んでいる人々は決して野蛮人ではなく、同じ人間であるということに気づいた、というのも理由の一つです。


こういった歴史の流れを念頭に入れて『食人族』をみると、単なる見世物やゲテモノ的側面だけではなく、別の面もみえてきます。

 

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