おはようございます、マクガイヤーです。
かねてより気になっていた熱海怪獣映画祭に行ってきたのですが、いやー楽しかったですね。自主映画だけじゃなく大作怪獣映画も上映しているのですが、映画祭全体に溢れる手作り感が最高でした。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇11月11日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2024年10・11月号」(10、11月分が1回になりました)
・時事ネタ
・『レッド・ワン』
・『ルート29』
・『スパイダー 増殖
・『ヴェノム ザ・ラストダンス』
・『十一人の賊軍』
・『トラップ』
・『ジョイランド わたしの願い』
・『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』
・『ボルテスV レガシー』
・『破墓 パミョ』
・『若き見知らぬ者たち』
・『エストニアの聖なるカンフーマスター』
・『室井慎次 敗れざる者』
・『花嫁はどこへ?』
・『悪魔と夜ふかし』
・『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』
・『犯罪都市 PUNISHMENT』
・『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
・『ビートルジュース ビートルジュース』
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇11月24日(日)19時~「『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』とサー・リドリー・スコット」
11月15日より『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が公開されます。まもなく87歳を迎えるリドリー・スコット29本目の監督作にして、2000年に大ヒットしてリドスコのキャリアを救った『グラディエーター』の続編です。ラッセル・クロウが演じた前作の主人公マキシマスの息子をポール・メスカルが演じ、『アメリカン・ギャングスター』のデンゼル・ワシントンやペドロ・パスカルが共演します。また、ジャイモン・フンスーとコニー・ニールセンが同じ役柄で続投するそうです。
リドスコが自身の監督作の続編を撮るのは珍しい、というか初めてなのですが、『ブレードランナー』の続編も自分で撮りたがっていました。『プロメテウス』や『エイリアン: コヴェナント』は前日譚でしたが、シリーズの新作でした。『グラディエーター』は三部作とする構想があるとのことです。ここ10年のリドスコの活動は、まるで人生の総決算を意識しているかのようです。
そこで、というわけではないのですが、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』と共にリドスコのフィルモグラフィーを概観するような放送を行います。
ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)に出演して頂く予定です。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、前回に引き続き『トランスフォーマー/ONE』について書かせて下さい。
●古い設定が上書きされる面白さ
アメコミや特撮など、長い期間続いているコンテンツは、昔からある古い設定が、新作での後付けや上書きで新しい意味を持ち深みを増す――という面白さがあります。
たとえば『ゲッターロボ』では無公害エネルギーだったゲッター線が、続編が作られるに連れて次第に強い放射線のように描かれ、遂には「生命体の進化を促すエネルギー」と定義されたり、『仮面ライダー』では世界征服を企む秘密組織だったショッカーが、『シン・仮面ライダー』では「人類を幸福に導く組織」として結成されたという設定になったり……という具合です。
『トランスフォーマー/ONE』で本当にびっくりしたのは、オートボット・ディセプティコン両軍の名前の由来が更新されたことです。
まずオートボット(Autobot)ですが、これは最初のアニメ(G1)で第一軍が自動車(Automobile)から変形するトランスフォーマーばかりだったことから名づけられたわけです。だから後に恐竜や航空機のトランスフォーマーが登場した際は”Dinobots”や”Aerialbots”と名付けられたわけです。
それが今回は、奴隷のような労働者から近代的自我を手に入れて「自律したロボ(Autonomous Robot)」だからAutobotなのだ、という意味が後付けされました。当然、今回のお話に沿った命名理由なわけですが、昔からのファンの中には興奮してしまう人もいるのではないでしょうか。
トランスフォーマーが他のロボットもの作品と大きく違う点が二つあります。一つは、ロボット全員が生命体で、意思がある点。もう一つは、アニメでも映画でもなく玩具が原作とされている点です。
なので、玩具の裏や取り扱い説明書には、そのトランスフォーマーのキャラクターを解説する文章や座右の銘(Motto)が書かれていました。
で、オプティマス・プライム(コンボイ)のそれにはこう書いてあったわけです。
「自由とは全知的生命体の権利である(Freedom is the right of all sentient beings.)」
意思を持った機械生命体であるトランスフォーマーたちですが、人間と同じように、全員が自由というわけではありません。誰かに隷属したり、支配下にある者たちもいます。特に今回の映画は、それとは知らずに独裁者に支配され、搾取されていたというお話です。
後のオプティマス・プライムがいうことになる「自由意志の大切さ」には、こんな背景があったのかと(後付け)感じ入ったりした次第です。
対して、ディセプティコンは「権力者やリーダーの欺瞞(Deception)を許さぬロボ≒欺かれし者たち」という意味合いになっていました。トランスフォーマーたちは人間の目を欺くために変形しており、これがディセプティコンの由来であったはずですが、『ONE』では物語に沿う形になったわけです。メガトロンの座右の銘は「圧制を通じての平和を(Peace through tyranny)」というもので、これを基にしたであろう『ONE』でのD-16からメガトロンへの変化や、リーダーシップではなく力を信じるようになった理由にも納得してしまいました。
納得といえば、オライオンパックスの性格についても納得してしまいました。
オプティマス・プライム、というかコンボイ司令官といえば「私にいい考えがある」という台詞が有名です。「いい考え」と表現していますが、実際は雑すぎる作戦を指示するのです。
つまり、コンボイ司令官はよくいえばおおらかで豪快、悪くいえば天然気味で細かいところまで考えの及ばない性格なのです。大局をみなくてはならない司令官としてはふさわしいですし、話の展開上ピンチを作らなくてはならないので、このような性格や台詞回しになったのはよく分かるのですが、「全然”いい考え”じゃないじゃないか」というツッコミはG1当時からありました。
それが『ONE』ではどう表現されたかというと、若かりしオライオンパックスは無鉄砲で楽天家――ということになったのでした。「あの司令官が若かったらこのような性格だろう」という意味で、納得できる解釈です。
特に大ピンチに陥って二人きりになった際、エリータ1から「楽観主義(Optimism)があるからリーダーとして素晴らしい」と諭されるシーンは本作屈指の名場面です。第二幕の締めであると共に、後のリーダーとしての「資格」を周囲と観客から認められたシーンなのですから。
また、このシーンはなぜ「オプティマス(Optimus)」の名前を冠するようになったのかを後付けで説明するものにもなっています。当初は最適化(Optimization)からとっていたはずなのに!
そうそう、これまでのトランスフォーマー作品において、サイバトロン星での「前史」時代の話は、主にIDW版コミックで描かれてきました。『ONE』も、様々な要素をIDW版から拾っています。特に、メガトロンは悪人ではなく、格差社会での圧制に耐えかねて反乱を起こしたエネルゴン鉱山の鉱夫だった――という『メガトロン・オリジン』は、多くのネタが被っています。気になる方は読んでみると良いのではないでしょうか(センチネル・プライムも出てくるよ!)。
●ピクサー私小説映画として
ピクサーという会社は、作り手たちのやむにやまれぬ思いを映画に入れ込んでいる、というのは有名な話です。『トイ・ストーリー』が子供を楽しませる玩具の話だったり、『ファインディング・ニモ』が親離れしようとする子供との向き合い方の話だったりするのは、ピクサーのクリエイターたちが顧客や自分の子供たちをどう楽しませるのか、どう向き合うのかの考え方が反映された結果です。映画は作品であると同時に商品でもありますが、テーマが他人事ではなく自分事だからこそ、単なる雇われ仕事以上のクオリティが映画の中ににこめられるのです。つまり、私小説とエンタメの融合です。
監督のジョシュ・クーリーは、ピクサー内で数々の作品のストーリーボードをこなしつつ、現CCOであるピート・ドクターが監督した『インサイド・ヘッド』で脚本を務め、『トイ・ストーリー4』では遂に監督を務めるまでになりました。(『モンスターズ・ユニバーシティ』以降の監督たちと同様に)ピクサーの生え抜き監督といって良いでしょう
そんなジョシュ・クーリーがピクサーを辞めたのは、次作を監督するのが早くても2029年になるのと、『ONE』の脚本が予想外のものだったためだそうです。
つまりジョシュ・クーリーは、ピクサー内で完全な自由はないけれど安定した「労働者」でいるよりも、脚本という地図を得たのをきっかけに、リスクを冒してでも地上に出て「自分の映画」というマトリクスを探す冒険の旅に出たわけです。
そういえば『トイ・ストーリー4』も、ウッディとバズというシリーズを代表する二人のキャラクターが思想の違いで別れる物語でした。これ以前にピクサー元CCOの「女性スタッフへの不適切なハグ」等のセクハラ行為による退社――「最高の作品を生み出す」という目的に向かって働き続けるピクサー社員全員の努力をリーダー自身がドブに捨てるような裏切り行為もありました。
ジョシュ・クーリーがピクサーで学んだ私小説とエンタメの融合が、『ONE』の演出に活かされた――そう考えてしまうのは、大げさなことではないと思います。
●『トランスフォーマー アーススパーク』
もう一つ、トランスフォーマー映像作品をシリーズで捉えた場合、最新のテレビアニメである『トランスフォーマー アーススパーク』と対になっているような話になっているのも面白いところです。
『アーススパーク』も『ONE』と同じく他の映像作品と繋がらない独自のユニバースにおけるお話なのですが、地球でのオートボットとディセプティコンの戦争が終結した世界を舞台としています。メガトロンがオプティマス・プライムと和解し、オートボットと共に人類との共存の道を選んだのです。しかし、これを自分たちへの裏切りと見なしたディセプティコンの多くはメガトロンの元を離れ、地球各地に潜伏している――そんな世界が舞台です。完全な子供向け作品として作られているのですが、作り手の意識と志は大人向け作品よりも高いかもしれません。
つまり、『ONE』が全てのトランスフォーマー作品の「前史」なら、『アーススパーク』は「後史」というわけです。オプティマスとメガトロンとの間には、過去にいろいろあったけれどそれらを乗り越えた絆があり、『ONE』からなんとなく繋がっているシリーズ作として捉えるとなんだか感じ入ってしまいます。
しかし時間が経てば人間関係も複雑にならざるを得ません。オプティマスもメガトロンも、他の仲間や友人知人たちとの義理人情の板挟みになったりします。スタースクリームやサウンドウェーブといった腹心たちはメガトロンを裏切者と罵りつつ複雑な思いを抱き、タランスじゃなかったタランチュラスのように戦争に辟易しきった元ディセプティコンもいます。我々の知っている有名トランスフォーマーには大なり小なり哀愁があり、グリムロックにはPTSDがあったりします。
この設定やキャラクター配置には、明らかに作り手たちによる「いま」の世界への視座があります。ウクライナやパレスチナで残酷な戦争が行われているのに、能天気に「戦争」するアニメなんてたとえ子供向けでも、いや子供向けだからこそ作れないというわけです。
一方で、地球で新たに誕生した「テラン」と呼ばれるトランスフォーマーたちは、オートボットや元ディセプティコンといった陣営やトランスフォーマーと人類といった人種を越えた、全員の希望となる――という展開が最高です。
シーズン2気になるところですが、なんとか日本でも観られるようになると良いですね。
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