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マクガイヤーチャンネル 第388号 2023/8/2
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おはようございます。マクガイヤーです。

iPhoneのOS更新と復元に失敗し、Apple サポートが指示するサービスプロバイダまで自転車を走らせたりしたら、一日が潰れてしまったような気分になっている今日この頃です。OS更新は慎重にやらないといけませんね。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇8月6日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2023年8月号」

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』

『マイ・エレメント』

『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐/王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブンイノセンツ』

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

『Pearl パール』

『ヴァチカンのエクソシスト』

『マルセル 靴をはいた小さな貝』

『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』

『大いなる自由』

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

『ザ・フラッシュ』

『M3GAN/ミーガン』

『忌怪島/きかいじま』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇8月21日(月)19時~「『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』と大根仁」

8月4日より映画『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』が公開されます。『クレヨンしんちゃん』劇場映画第31作にして、3DCGアニメーション映画です。

注目したいのは、監督・脚本を大根仁が務めることです。約10年前なら『モテキ』、最近なら『エルピス-希望、あるいは災い-』が話題の大根仁が、いったいどのような『クレしん』を作るのか、興味が尽きません。

そこで、『クレヨンしんちゃん』と大根仁作品を解説するような放送を行います。

ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えして致します。



〇9月3日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2023年8月号」

詳細未定

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇9月18日(月)19時~「『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』公開記念 俺たち私たちの『シティハンター』」

9月8日より映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が公開されます。2019年に公開された『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』に続く完全新作劇場映画です。またキャッツ・アイ三姉妹も出てくるそうです。

『シティーハンター』といえば80年代後半に大ヒットしたジャンプ漫画の一つですが、続編とみせかけてパラレルワールドを描いたリメイク作品だった『エンジェル・ハート』を経て、二作も新作劇場映画が公開されることに驚きと喜びを感じています。フランスで製作された実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』や2024年に全世界配信予定のネトフリ実写映画など、ここにきて『シティハンター』が盛り上がってきているようです。

そこで、新作映画と『シティハンター』について解説するような放送を行います。

ゲストとして舞台女優の桜木ゆいさん(https://twitter.com/sakuramauyoru)をお迎えしてお送り致します。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109


また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて、本日のブロマガですが、ニコ生も好評だった『君たちはどう生きるか』について改めて書かせて下さい。



●宮崎駿と母

「中国のなんてことない場所にいて、母親が小さな女の子を抱いてるのに出会ったんですよ。ところがその女の子の顔を見たとき、僕は”あっ、おふくろだ”と思ったんです。おふくろが、こんな所に生まれ変わっている、よかったな、って。

もちろん何の根拠もありませんよ。でもそのとき僕はそう確信したんです。

そういう心の動きが、一応近代的なやり方でやっていこうと思っている自分のなかに入っている、っていうのがね。でもあのときは本当に”よかったな”と思ったんですよ」(『宮崎駿の原点 母と子の物語』より)


『君たちはどう生きるか』は、過去の監督作品のどれよりも宮崎駿の原液、というか意識下の欲望や妄想のようなものが詰まった作品です。

元気な老女、日本家屋と洋館のドッキング、機械と悪意が詰め込まれた「塔」、半ば水没した世界……過去の作品ではエンターテイメントとして描かれたそれらが、ある意味では無造作に、ある意味では切実な目的を持って描かれます。

特に注目してしまうのは、劇中で描かれる主人公にとっての二人の母です。

死んだ筈の母が魔法を使える少女となって現れ、オトナの美しさと嫌悪が同居した義理の母は救うべき囚われのヒロインとして描かれます(更に、職人的な技能を持った頼れる大人としてのキリコにも母としての要素があります)。


実際の宮崎駿の母については、『宮崎駿の原点 母と子の物語』によくまとまっています。

宮崎の母は、結核菌が脊椎へ感染する病気――脊椎カリエスで、1947年から約9年間、寝たきりの状態にありました。41年生まれである宮崎が、6~15歳までの時期にあたります。その間、宮崎を含めた4人の兄弟と父は、男同士で喧嘩もしながら、家事と介護を行っていたそうです(お手伝いさんもいたそうですが)。

抗生物質の普及に伴い、母の病は完治します。母は知的で気が強く、「文藝春秋」を愛読し、吉田茂を賛美し、鳩山一郎を嫌う、政治的に保守本流で、正しいと思ったら最後まで戦う女性だったそうです。一方で宮崎は、マルクス主義に夢を持ち、大卒後に就職した東映動画の組合活動にも参加する、(当時の若者としてはありがちですが)左翼的なイデオロギーを持つ若者でした。

22歳になった宮崎が、当時裁判が佳境に入った松川事件について、母と泣きながら議論したというエピソードが『宮崎駿の原点 母と子の物語』で紹介されています。


難病により、十字架に磔にされたキリストのように、寝床にはりつけられたマリアとしての母。父よりも兄よりも精神的に強大で、イデオロギー的に相いれない愛憎溢れる母。そんな二つの母の姿が、『君たちはどう生きるか』に詰まっているといって良いでしょう。空中海賊のリーダーや、結核療養所で静養する母や恋人、老女と少女に変化し続けるヒロイン、海の女神とその娘、タタラ場の女主人と口移しで干し肉を食べさせてくれる山犬の娘、トルメキアの国母や巨神兵の母になる姫――これまでの監督作品で描かれた女性たちは、全員宮崎駿にとっての「母」だったのです。



●アニメーションのエロスと手塚治虫

で、その母への思いが、アニメーションならではのエロスとタナトスに溢れた形で描かれるのが、本作の凄いところです。

「アニメーションならではのエロス」とは具体的に何かというと、豊富な作画枚数で描かれる物体の変化・変容です。

たとえばおっさんと鳥の間を変化し続けるアオサギ、たとえば多くの線で描かれた表情豊かな老女たちの顔、たとえば常に不定形で決まった形をとらない水や炎……本作では、物体の変化・変容をアニメーションで描こうとするシーンがいくつもあります。

そもそも、宮崎駿監督作品では、不定形なもの、変化するものを、アニメーションで描くことで新たな表現としようとする試みが、初期の初期から目立っていました。

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初期作品で目立っていたそれは『カリオストロの城』における噴水のシーンでしょう。

クラリスを助けるために、ルパンは地下水道を通ってカリオストロの城に潜入しようとします。流れ落ちる大量の水のなかを滝登りの要領で上に向かって泳いだり、地下水道から繋がっていた噴水を通して銭形警部の顔が見えたり……「滝」の中のルパンの姿や、水中からみた銭形の顔は、屈折率の違いにより歪んでみえます。この歪みっぷりが面白いのですが、これは3DCGでは不可能な手書き2Dアニメのみで可能な表現です。

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最も有名なそれは『ハウルの動く城』における主人公ソフィーの変化でしょう。

少女として登場したソフィーは魔女の呪いによって老婆になりますが、ソフィーの感情や心境の変化によって、若返ったり再度老化したりするのが作品のキモになっています。