おはようございます。マクガイヤーです。
ついに娘が大学進学で一人暮らしを始めました。
そんなに子育てに参加していなかった自分もさすがに寂しさを感じているのですが、これが人生なのかもしれません。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇4月10日(月)19時~「『グリッドマン ユニバース』とあらかじめ失われた青春」
3月24日より映画『グリッドマン ユニバース』が公開されます。1993年から1994年にかけて放送された円谷プロの特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』を原作とするTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』、その第二弾『SSSS.DYNAZENON』がクロスオーバーを果たす劇場版長編アニメ、とされています。
『SSSS.GRIDMAN』は、原典である『グリッドマン』は当然として、特撮とトランスフォーマーへの愛が詰め込まれた作品でした。ところが『SSSS.DYNAZENON』ではトランスフォーマーへの愛の代わりに、劇中人物間の恋愛、というか濃厚な人間ドラマが描かれました。これは期間限定で配信されたボイスドラマも同様で、人間ドラマというよりも失われた青春と言い換えても良いかもしれません。
そこで、関連作品に触れつつ映画『グリッドマン ユニバース』を解説するような放送を行います。
ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。
〇4月23日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2023年4月号」(放送日が日曜日に変更になりました)
・時事ネタ
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、ニコ生後に制作現場に密着取材したNHKのドキュメンタリー『ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~』が放送されたこともあり、改めて『シン・仮面ライダー』について書かせて下さい。
●変な映画、異形の映画
『シン・仮面ライダー』、自分も大半のオタクと同じく期待に胸いっぱいにして映画館に行ったのですが、想像していた以上に変な映画で驚きました。
予告編と、庵野秀明が総監督でも脚本・製作でもなく監督を務めるということから想像すると、今まで観たこともないカッチョ良い画と、原作であるテレビと原作漫画版へのオマージュとレスペクトが相まった、これまでの「仮面ライダー」映像作品の系譜をひっくり返すような映画になると期待していたのですよ。
なにしろ、「僕が観たかったライダーを作るのではなく、僕と同じ世代に「こういうライダーも良いよね」と思ってもらえる、そしていろんな世代に楽しんでもらえる作品にしたい」という、製作発表時の記者会見における庵野の言葉は『シン・エヴァ』で自身の「私小説」に落とし前をつけた意気込みに溢れたもので、これは期待できると思ったものでした。
冒頭の、迫りくる三栄土木トラックとルリ子と二人乗りしたサイクロン号とのカーチェイスシーンは、CGの粗さはあるものの、この映画はこれまでの東映特撮ではなしえなかった新しい「仮面ライダー」をみせてくれるのではないか、という期待感に応えてくれた映像でした。
ただ、映像的に満足したのはそこまで。
その後は、暗い山小屋での『シン』シリーズお馴染みの早口設定解説。中途半端にテレビ版をオマージュしたクモオーグとの戦闘は、ダムの上からジャンプ→カット変わって地面に着地みたいな、普通に観てたら変だけど予算と尺に制限のある東映特撮ならではの昭和の様式美(故に時代によって変化する)と『式日』のようなキメキメの心象風景を表す映像との悪魔合体で、これが庵野のやりたかったことなのかと大いに戸惑ってしまいました。
その後のコウモリオーグ戦、ハチオーグ戦、ショッカーライダー戦……とテレビの『ライダー』では観られなかった映像が確かに観られたものの、『エヴァ』や『キューティハニー』の焼き直しだったり、『シン・ウルトラマン』の時と同じような粗いCGで作り出した映像だったりで、はっきりいって戸惑いました。本郷猛はコミュ障で、ヒロインであるルリ子はレイ・アスカ・ミサト・リツコの合成人造女神で、ラスボスがやろうとしてることは人類補完計画というのも、庵野秀明の引き出しが意外に狭いことの確認であったりもしました。
最後に用意されたチョウオーグとのラストバトルは、暗い室内での総合格闘技でいうグラウンドの攻防で、一流俳優たちがハァハァ言いながら肉体を駆使するさまは寺山修司の演劇的な面白さと新規性が確かにあったものの、果たしてこのような映像が「こういうライダーも良いよね」と思ってもらえるものなのかと、またしても戸惑いました。
その後放送されたNHKのドキュメンタリー『ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~』では、段取りではない本物のアクションというか暴力に拘っているのではないかということが役者やスタッフの目線で語られましたが、それにしてはクモオーグ戦は段取りであった原典に沿いすぎ、ライダーキック等のキメ技や1号と2号のバトルやショッカーライダー戦は肉体どころかCGでしか描かれません。最近のニチアサライダー(特に劇場版)のアクションが一つの見世物として充実しており、なるべくCGIではなくグリーンバックで撮影した実物を合成素材として使ってアニメのような見せ場を作っていることも、比較として『シン・仮面ライダー』の映像的独自性を下げています。
しかし、それではつまらない映画なのかと問われればそうではなく、端から端までオタククリエイター庵野秀明の刻印が刻まれた、作家性の高い映画としてずっと面白く観ていられました。
庵野秀明が、いわゆる旧一号編とか本郷編とか言われる初期『仮面ライダー』を偏愛していること、それとは別にショッカーライダーと2号ライダーも人並みに好きなことはあちこちで発言していましたが、そういった自分の「好き」を基にしたリメイクとしてはしっかりまとまっていること、ショッカーが単なるピラミッド型の悪の組織ではなく、半グレのような小組織同士の緩いつながりの集合体で、小組織はそれぞれの考える幸福追求から行動する……といった現代性があること、庵野の私小説として『シン・エヴァ』からの一貫性があること(後述)。
NHKのドキュメンタリーでは庵野がスタッフを追い込む姿が描かれていましたが、『仮面ライダー』への愛のために庵野がこのような映画を作ったことが(たとえNHKドキュメンタリーを未見でも)分かること、……などが理由です。
●『仮面ライダー』としての物足りなさ
ただそれでも、やはり「仮面ライダー」の一作としては物足りなさを感じてしまいます。
そもそも仮面ライダーは「正義の味方」ではなく、「人間の自由と平和」のために戦う「大自然の使者」として誕生しました。これはライダーが誕生した1971年当時は高度経済成長期末期にあたり、公害が大きな社会問題となっていたことを背景としています。また60年代の安保闘争やその後の全共闘運動・大学紛争などにも影響を受けています(放送中の1972年にはあさま山荘事件が起きています)。一方で、日本は貧しい戦後から立ち直り、それなりに豊かな国となった理由として、科学や文明や経済の力がある、という冷静な視点もありました。
故に、公害や戦争に象徴される「悪しき科学文明」に対立する「正義の科学」や、自然と共生する「真の文明」の象徴として、仮面ライダーは誕生したのです。だからこそ、核兵器と切り離せない原子力ではなく、風力で変身します。
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