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【第264号】伊藤悠 Past & Present

2020/03/18 07:00 投稿

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  • 伊藤悠
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マクガイヤーチャンネル 第264号 2020/3/18
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おはようございます。

もう地球の支配者はコロナウイルスで良いんじゃないかと思ってしまう今日この頃です。人間はウイルスの乗り物に過ぎず、一見人間にみえるのはウイルスの塊であるという世界観で生きていけば何も問題ないんですよ。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○3月20日(金)20時半頃~「金ロー『ブラックパンサー』生実況」

金曜ロードショーで『ブラックパンサー』が地上波初放送されることになりました。前回の『リメンバー・ミ―』生実況が好評だったこともあり、『ブラックパンサー』も生実況放送を行います。『ブラックパンサー』はMCU作品中1、2を争う名作だと思うのですが、日本だけでヒットしなかったこともあり、実況するのが楽しみです。

ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)とお友達の虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)に出演して頂き、濃厚接触しながら楽しく実況するつもりです。コロナウイルスでおうちに籠もりがちなみんな、テレビの前でぼくらと(心の中で)握手!



○3月22日(日)19時~「PCエンジンmini発売記念 おれたちのPCエンジン」

3月19日にPCエンジンminiが発売されます。ファミコンミニやメガドライブミニ、プレイステーション クラシックといった流れのトリを飾る大物復刻版ミニハードです。

PCエンジン用のソフトだけでなく、本来ならば初代PCエンジンやPCエンジン単体では動作しないはずのスーパーグラフィックスやスーパーCD-ROM2用ソフト、更には北米版PCエンジンであるTurboGrafx-16ソフト、計58本のゲームタイトルが収められており、他の復刻版ミニハードに比べて全く見劣りしない内容となっています。

しかし、ファミコンに比べて知名度が低かったこと、メガドライブに比べて熱狂的あるいはカルト的なファンが少なかったことから、あまり話題になっておりません。『しくじり先生』『アメトーーク』でPCエンジンがテーマとなることも無いでしょう……

そこで、PCエンジンの歴史や有名タイトルについて紹介すると共に、PCエンジンの魅力に迫るような放送を行います。

ゲストとして、お互いに実はメガドライブよりもPCエンジンの方がプレイ時間が多かったことが判明した、お友達のナオトさん(https://twitter.com/Triumph_march)に出演して頂く予定です。



○4月6日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年4月号」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○4月29日(水)19時~「若者からおじさんまでの『十三機兵防衛圏』(仮)」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)

昨年11月に発売されて以来、熱狂的にヒットしているゲーム『十三機兵防衛圏』。自分もプレイしましたが、死ぬほど面白いです。「いま」作られるべきアドベンチャーゲームとして完成度の高さは勿論のこと、若者にとっては新鮮でおじさんは泣く要素が満載なのがニクいところです。2019年オタク大賞受賞も納得の作品です。

そこで、ゲームクリエイター神谷盛治やヴァニラウェアの歴史を振り返りつつ、アドベンチャーゲームやSFとしての『十三機兵防衛圏』の魅力に迫るような放送を行います。

ゲストとして漫画家の大石浩二さん(https://twitter.com/k_marudashi)と女優・タレントの結さん(https://twitter.com/xxxjyururixxx)に出演して頂く予定です。



○5月10日(日)19時~「『やれたかも委員会 童貞からの長い手紙』完結記念 吉田貴司と童貞賛歌(仮)」

取材協力しました『やれたかも委員会』のcase024「童貞からの長い手紙」(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)が完結しました。10話から成る、堂々たる完結でした。単行本4巻はまるごと「童貞からの長い手紙」になるそうです。

これを記念して、著者の吉田貴司先生(https://twitter.com/yoshidatakashi3)をお招きし、執筆の裏話や、やれたかも話、童貞話をお尋ねします。ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063



○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109


また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

https://macgyer.base.shop/items/25929849


合わせてお楽しみ下さい。




さて、今回のブロマガですが、前回のニコ生でちょっとお話した、伊藤悠とその漫画作品について書かせて下さい。



●伊藤悠 三冊同時発売

先月頭に、伊藤悠の単行本三冊が同時発売されました。


・初期短編集『歌屑』

・新装版『面影丸』

・現在連載中の『オオカミライズ』2巻


の三冊です。伊藤悠作品が大好きな自分としては、小躍りするくらい嬉しいです。

なかなか単行本にまとまらなかった『影猫』が収録された『歌屑』はすぐに予約したのですが、旧版を持っている『面影丸』は、判型が小さくなってしまったこともあり、どうしようか迷っていたら、アマゾンですぐプレミア価格になってしまったのもご愛敬です(今は定価で買えます)。



●伊藤悠は最初から伊藤悠だった

『水中騎士』『銃夢』が読みたくて、1999年の創刊時から数年、ウルトラジャンプを定期購読していました。あの頃はジャンプもスピリッツもアフタヌーンもコミックビームも買っていたので、毎月25日が月曜日と重なるとリュックのベルトがちぎれそうになっていましたね。

ウルトラジャンプを読むようになって、一番気になった漫画家は、大暮維人でも中平正彦でもなく、伊藤悠でした。他紙で活躍した漫画家を集めてくるウルトラジャンプにしては珍しく、伊藤悠はウルジャンが見出した作家ですが、とにかくウルジャン初期に掲載された読切短編が面白かったのです。


この頃に描かれた『黒白』、『黒突』、『影猫』、『影猫II』が『歌屑』に収められています。時代劇の定義は基本的に明治維新以前の日本を舞台にしていることだそうですが、昭和初期を舞台にした『黒白』を広義のそれに含めると、どれも時代劇で、どれも漫画で殺陣をみせることに拘りぬいていて、どれも命のやり取りを含む暴力を通して読者の心になにがしかを残す、バトルアクション漫画です。

『歌屑』に収められているもう一作、『新線西部軌道』は『皇国の守護者』の連載が「諸事情」により終了した後に描かれたもので、時代劇ではなくポストアポカリプスSFですが、実質は西武新宿線を大陸横断鉄道に見立てた西部劇で、当然のようにバトルアクション漫画です。


(短編だからかもしれませんが)どれもラストはベタベタとした感傷に浸らず、すっぱり終わらせているのが自分の好みなのですが、なによりも、アクションをみせることを最大のテーマとしたアクション漫画なので、当然のようにナレーションを使わず、説明的な台詞も最小限としているのが最高です。このせいか、伊藤悠のストーリーテリングは時に強引といわれることもありますが、はっきりいってそんなことはありません。アクション漫画やアクション映画は、台詞やナレーションではなくアクションでテーマを伝えるべきなのですから。

おそらく伊藤悠は時代劇や西部劇のみならずこれまで世の中で発表された数々のアクション映画というアクション映画を死ぬほど観ており、それらに魅了されており、自らが100%コントロールできる漫画世界で自分なりにそれらを再現しようとしているのではないでしょうか。そうとしか考えられません。



●「決闘」のプロット

更に、この4作には物語上の共通点があります。幼い頃から家族のように育った二人、あるいは立場は違えど共通点のある二人が、長じた後に殺しあう、そこに片方あるいは両方が心を寄せる想い人や、庇護される頭身の低いショタキャラがそこに絡む――というものです。描かれた時期が比較的新しい『新線西部軌道』のみ「家族が殺し合う」という部分に一捻りありますし、もっといえば、もしこの短編を基にした連載が始まっていれば、物語のどこかで表紙にも描かれた主人公格の二人の女性が対立し、殺し合う展開がありえたのかもしれません。


同じような構図は、「九曜」という忍者集団が二派に分かれて殺し合う『面影丸』や、シュトヘルとハラバルあるいはシュトヘルとユルールの間の対立・和解・共闘で物語を進めていく『シュトヘル』にも共通しています。


おそらくこの構図は、リドリースコットがデビュー作である『デュエリスト/決闘者』から最新作まで、ほとんどの長編映画を「二人のキャラクターを交互に描き、中盤もしくはクライマックスで決闘し、勝利 / 敗北 / 和解する」プロットで撮っていることと、同じなのではないでしょうか。

アクション映画やアクション漫画のクライマックスは、当然アクションであるべきです。であるならば、主人公が顔の見えない集団と戦う一対多のバトルや、チーム同士の戦闘である多対多のアクションを描くとしても、どこかで主人公とそのライバルによる一対一のアクションがある方がよく、それならばいっそのこと二人の主人公各キャラクターを交互に描くことで、「世界」の広がりを担保しつつ、盛り上がるべき時に盛り上がる物語を描ける――そのようなねらいのあるプロットです。

そして、プロットを自分にとってお馴染みのもので統一することで、一作ごとにやりたいもの――「テーマ」に集中することができる。つまり、これは一つの「作法」なのです。



●漫画版『皇国の守護者』はなぜ「諸事情」により終了したのか

もっといえば、ここら辺に漫画版『皇国の守護者』が「諸事情」により終了した理由がありそうな気がします。

伊藤悠は骨の髄からのアクション漫画家で、台詞やナレーションではなくアクションでキャラクターの感情やドラマを描くことを信条としています。これは、初期短編集や初連載作である『面影丸』を読むだけで十二分によく分かります。一方で、プロットがほぼ同じ読切ばかり描いてきた伊藤悠に、原作付き企画を薦めた編集者の気持ちも良く分かります。『皇国の守護者』のような戦記ものは、作品世界の背景にある様々な条件や状況に由来するどうしようもなさ――時代の流れと、多数の個性的なキャラクターの決断や諦観が絡み合い、起きるべくして起きる展開の妙こそが最大の魅力です。これと、文章作品では決して描くことのできないアクション描写力が合わされば、最高の作品になる――編集者なら誰もがそう考えるでしょう。

 

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