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【第237号】『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』:観たいのは「マイ・ストーリー」

2019/09/04 07:00 投稿

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マクガイヤーチャンネル 第237号 2019/9/4
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おはようございます。マクガイヤーです。

先日の放送「最近のマクガイヤー 2019年9月号」は如何だったでしょうか?

久しぶりの一人喋りだったのですが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『ロケットマン』『アルキメデスの大戦』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』と気になる映画についてしっかり喋ることができ、満足しております。




マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



○9月22日(日)19時~「メガドライブミニ発売記念 おれたちのメガドライブ」

9月19日にメガドライブミニが発売されます。ファミコンミニやプレイステーション クラシックといった先行ミニハードと比べて、多くのメガドライバー達が望んだソフトが収録された、ある意味で理想のミニハードです。

……ですが、現在アラフォー、アラフィフのメガドライバー以外にはあまりピンとこないのかもしれません。

そこで、メガドライブの歴史や有名タイトルについて紹介すると共に、メガドライブミニがどのように凄いかを解説するような放送を行います。

ゲストとして久しぶりに友人のナオトさん(https://twitter.com/Triumph_march)に出演して頂く予定です。



○10月7日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2019年10月号」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○10月20日(日)19時~「インセクター佐々木presents モンスターハンターの博物学」

9月6日に『モンスターハンターワールド:アイスボーン』が発売されます。本作はモンスターハンター・シリーズの最新作『モンスターハンター:ワールド』の超大型拡張DLCになります。

そこで、モンスターハンターに詳しい友人のインセクター佐々木さん(https://twitter.com/weaponshouwa)をお迎えしてモンスターハンターシリーズの歴史や各タイトル、登場するモンスターのデザインやモチーフについて解説し、ゲームの魅力を紹介する放送を行います。昆虫だけじゃないよ!



○藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本の通販しています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

https://macgyer.base.shop/items/19751109



○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

ちなみに基になったお話はこちら

https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





さて、今回のブロマガですが、映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』について改めて書かせて下さい。



●おれと『ドラクエV』

自分は今年44歳になるアラフォーのおっさんですが、ご多分に漏れずドラクエ世代なわけですよ。最高のドラクエといえば『III』と『V』で言い争い、ビアンカかフローラかでまた言い争い、デボラ派な新世代を馬鹿にする。「好き」と言ってくれた女性はビアンカだけ、そんな時代が自分にもありました。

『III』発売時は中学生、『V』は高校生、そして『XI』発売時はすっかりおっさんの四十代。MMORPGなので手を出しづらかった『X』を除いて、ナンバリングタイトルは発売日直後に買ってプレイしました。人生と共にドラクエがあったわけですが、「国民的RPG」であるが故に、自分のような人間は多いのではないかと思います。



●山崎貴映画――「たかし映画」の特徴

そんな自分は『ドラクエV』が映画化、それも山崎貴が脚本・総監督でCG映画化されると聞いた時、全く期待できないなと思ったわけですよ。


『ジュブナイル』『リターナー』といった初期ha秀作SFアクション映画を撮っていた山崎貴監督ですが、『ALWAYS 三丁目の夕日』でそれまでの三倍の興行収入を稼ぎ、「昭和レトロブーム」という一つの社会現象まで巻き起こしてしまいます。

以後、山崎貴は『ALWAYS』の続編や漫画・ベストセラーの映画化を多く手がけるようになります。

『ジュブナイル』がファンによる『ドラえもん』の二次創作最終回を原案としているのは有名な話です。また、2000年のインタビュー(http://www.neoutopia.net/interviews/yamazaki_02.htm)ではスピルバーグやキャメロンの影響と共に、藤子・F・不二雄のSF短編『宇宙船製造法』や『恋人製造法』の映像化願望を口にしていたりします。明らかに本人が創りたい映画はスコシフシギな話をド派手なSFXでやるSFアクション映画なのでしょうが、創らざるを得ないものは違うのでしょう。

もっといえば、ゼロ年代のどこか山崎貴はなんらかの「悪魔」に魂を売ったのです。


山崎貴映画――「たかし映画」の特徴を大雑把にまとめれば、以下になると思います。


1、なんでも台詞で説明する

2、年に一回しか映画観ない人でも理解可能

3、旬の役者の大量起用

4、原作ものをガッチリ映画化

5、白組の仕事をいっぱい作れそうな企画選び


1、2、については『ジュブナイル』や『リターナー』のようなSFアクション映画では仕方の無い部分もありましたが(なにしろ『マトリックス』ですらマイルドヤンキーに「分からない」と言われるのです)、『ALWAYS』のような近現代を舞台にした映画では、圧倒的に説明過多で興醒めな映画となってしまいます。

山崎貴はVFX製作を得意とする製作・企画会社 白組に長年所属していますが、自分が創りたいものよりも白組の仕事をいっぱい作れそうな題材を選ぶ傾向にあります。だからこそ制作費を回収できる補償としての3、4、があるのでしょう。

この傾向は「ALWAYS」、「BALLAD」、「DESTINY」、「SPACE BATTLE SHIP」、「STAND BY ME」などのアルファベットによる副題が付け足されること(時にメインタイトル)に象徴的です。つまり、これらは山崎貴が限られた層にしか受け入れられなかった原作を改変し、デオドラントし、お馴染みの俳優・タレントを大量投入し、マスに向けたエンターテイメント作品に仕立て上げた証――作品レイプのスティグマなのです。



『アルキメデスの大戦』は面白かった

というわけで、最初からつまらないことが分かっている映画なんて観にいくつもりは無かったのですが、なにかと評判の良かった映画『アルキメデスの大戦』を観にいって、ちょっと考え方が変わりました。

本作は三田紀房による同名漫画を原作としているのですが、先の1、2、が改善されているのです。映画は戦艦大和の沈没シーンから始まりますが、兵隊を使い棄てる日本に対し、最も重要な資源としてのパイロットを救うシステムを用意している米軍との比較を台詞ゼロでみせるシーンが用意されています。ここ、十年前のたかし監督だったら台詞での説明を入れちゃうところです。たかし、進化してるよ!

その後、時間が巻き戻り、新造艦をめぐる会議に伴う状況説明や、キャラクター紹介が行われます。さすがにここは台詞たっぷりですが、ジャンルとしての「裁判もの」を意識しているので、あんまり不自然に感じません。それどころか、敵も味方も内面を台詞で説明しまくる三田紀房の原作(これは漫画というジャンルにおいて欠点ではないのですが)と比べれば、台詞が減っていさえします。

柄本佑や菅田将暉のキャラクターと芝居が変わっていくさまも見どころですが、最大の見どころは田中泯で、彼が演じる平山造船中将の内面をクライマックスまで謎とすることでサスペンスを引っ張る作劇は、単行本17巻を数えて未だ連載中の原作を史実に沿う形で2時間ちょっとの映画にまとめる改変として見事なものです。最近の邦画は田中泯と國村隼に頼りすぎという気もしますが。


特に秀逸なのが、菅田将暉の涙と共に吐かれる最後の台詞です。「戦艦大和が日本の象徴のようにみえる」という、これまで何度も聞かされてきたものなのですが、この映画を二時間近く観続けた後に聞かされるそれは、これまでと全く違う意味――一度走り出した巨大なプロジェクトを途中で止められない日本社会というシステムの欠陥とそれを改善できないが故の台詞であることが分かります。

三田紀房は国立霞ヶ丘陸上競技場の改修の際に起こった騒動が連載のきっかけとなったそうですが、その建て替え後に建設される新国立競技場で来年行われる東京オリンピック開会式や閉会式のディレクターを山崎貴が勤めることを考えると、まさにこれこそがDESTINYであると思わざるを得ません。

東京オリンピック開会式や閉会式で山崎貴が泣いていたら、本作の菅田将暉を連想せざるを得ません。戦艦大和が当時の日本の象徴であったのと同じく、2020年東京オリンピックこそ現代日本の象徴なのですから。



●たかし映画としての『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』

たかしの進化を目の当たりにした自分は考えを変えて、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を観たのですが、残念なことにいつものたかし映画でした。

先の1、~5、全てが当て嵌まるのですが、特にひどいのは主人公の台詞回しです。その時の感情、思い、次に何をすべきか、何に追われてサスペンス状態にあるのか……全てを説明してくれるのです。

口調がやけに現代的なのは後述するメタ構造の伏線らしいのですが、たとえ口調がファンタジーに相応しいものであったとしても、いつものつまらないたかし映画であることは変わりません。


いや、もしかするといつもよりもっと酷いかもしれません。

本作は、先の1、~5に八木竜一の終始一本調子で落ち着かない画コンテが加わります。ピクサーの映画をみれば分かって貰えると思うのですが、キャラクターを動かすことに2DアニメほどのコストがかからないCGアニメだからこそ、キャラクターの心情に合わせて動きが落ち着き、風景や表情や構図で語るシーンを適宜入れることが重要になります。しかし本作は、常にキャラクターが動き回り、テンポが同じなのです。

なんでも台詞で説明する脚本と、テンポが同じ画コンテが悪魔合体すると、こんなにも苦痛な映画になるとは思いませんでした。



●メタ構造自体は悪くない

本作には最後にメタ構造を意識したサプライズが用意されています。SNSで話題となり、本作が批判される原因ともなっています。



ネタバレしても構わないと思うのですが、一応スペースを空けます。




 

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