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マクガイヤーチャンネル 第173号 【姉の恋】

2018/05/30 07:00 投稿

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  • Dr.マクガイヤー
  • 評論
  • 特撮
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マクガイヤーチャンネル 第173号 2018/5/30
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おはようございます、マクガイヤーです。

前回の放送「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」は如何だったでしょうか?

久しぶりのおっさん二人による放送でしたが、ゲストで出て頂いた虹野ういろうさんにもご協力頂き、石ノ森ヒーローの魅力に迫った放送になったと思います。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


○6月8日(金)20時~(金曜日の放送になります、ご注意下さい)

「『デッドプール2』とXフォース」

6/1より傑作コメディにしてスーパーヒーロー映画『デッドプール』の続編『デッドプール2』が公開されます。

本作は『インフィニティ・ウォー』に引き続いてアメコミヒーロー映画に出演するジョシュ・ブローリンがケーブルを演じたり、X-フォースの結成が描かれたりすることがアナウンスされています。

ただ、自分はケーブルやX-フォースに関してほとんど知識がありません。

そこで、ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きして、ケーブルやX-フォースについて解説して頂く予定です。



○6月30日(土)20時~

「しまさんとマクガイヤーの推しNetflix」

Netflix、Hulu、dTV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ……と、様々な動画配信サービスをネットで愉しむことができる昨今ですが、大きな問題があります。

それは、「配信されるコンテンツが多すぎてどれから観れば良いのか分からない」もしくは「面白いコンテンツを見逃してしまう」といった悩みです。

そこで、編集者のしまさんとマクガイヤーが、Netflix配信ラインナップから独断と偏見で「推し番組」を紹介し合い、魅力を語り合います。

久しぶりのしまさん出演回です。乞うご期待!



○7月(詳細日時未定)「最近のマクガイヤー 2018年7月号」

最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定





○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、番組中少しだけ話題にした石ノ森章太郎の実姉、小野寺由恵について書かせて下さい。


●石ノ森漫画のヒロイン

有名な話ですが、石ノ森漫画におけるヒロインは、勝気で年下の妹のような少女と、可憐で母性を感じさせる母や姉のような女性の2タイプに分けられます。

後者のモデルはいうまでもなく姉です。最もあからさまなのは『龍神沼』の白い着物の少女であり、もう一人の妹タイプのヒロインであるユミと主人公の心をとりあうことになります。その他にも『サイボーグ009』のフランソワーズ、『リュウの道』のマリア、『原始少年リュウ』のランなどがその系譜に属しますが、マリアやランは作中で登場するマスコット的キャラクターの姉だったりします。「姉」がヒロインなわけです。


●石ノ森にとっての姉

石ノ森は著書『トキワ荘の青春―ぼくの漫画修行時代』で、姉が23歳で亡くなった際のショックについて、こう書いています。


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ボクは、姉の横顔を見つめ続けていた。まだ眠り続けているかのようだった。これは悪いユメなんだ。こんなことはウソだ。空ッぽの頭の中を、そんな無意味な言葉だけがグルグルと回っていた。仲間たちの沈黙が有難かった。たぶん慰めの声をかけてくれていたに違いないが、それはほとんど残っていない。ショック状態が涙も押さえていた。深い哀しみが襲ってきて、涙が溢れたのは、郷里へお骨を運んで、葬儀を済ませた直後だった。


モノカキのほとんどは、男性の場合、その質の1/2を女性が占めている(当然女性の場合はその逆であろう)という。またそんな部分を持たなければ、シコシコモノなど描く作業には堪えられない、と言われる。ボクもまた、そんなモノカキのハシクレだった。ひとつことに気を取られたり、傷ついたりすると、長い時間それから抜け出せない。

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両親は、またそんなことを、と怒った。

が、姉は、それを読んで、感心してくれた。姉はいつも、ボクの最高最大の読者だった。マンガ家気取りの、ボクの、最初のファンだった。

その、たった一人の読者を相手に、ボクはマンガを描いた。

いつしか、姉にみせるためにだけ、マンガを描くようになった。

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石ノ森にとっての姉は、ゴダールにとってのアンナ・カリーナや、ティム・バートンにとってのリサ・マリーやヘレナ・ボナム=カーターような、いわゆるミューズだったわけです。


●姉の恋

そんな姉が、ある時石ノ森に告白したことがあります。


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姉が笑っている。夢の中で、いつも笑っている。

姉が上京した。

笑わないでネ。と、ある夜、隣に寝ていた姉が話し出した。

××さんが好きなの。トキワ荘の、仲間の一人だった。

冗談じゃないヨ。病気なんだから。

弟が冷たく言った。病気を癒すのがまず……というつもりだった。

姉が泣き出した。

そんなことは、当の本人が一番わかっていることだった。だから切なかった。オノレの病弱の身を思い、恋をし、それが実らぬ不安と切なさに、姉は泣き続けた。

なんて残酷な言葉を吐いてしまったのか。泣き疲れて、姉が眠ってしまった後も、ボクは後悔の思いが重く、夜の白み始めるまで、目覚めていた。

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この後悔は、生涯石ノ森に宿っていたのでしょう。自作のヒロインに恋をさせることは、まるで漫画の中で現実では適わなかった姉の恋を実現させるかのような行為であったとの見方もできます。


と同時に、この姉が好きだった人とは、トキワ荘の誰だったのか? という疑問も沸いてきます。多分に女性週刊誌的な興味ですが、トキワ荘のマドンナとして有名だった小野寺由恵の思いの人は誰だったのか? どうしても気になってしまうのです。


この人物は寺田ヒロオだったのではないかと、長年考えられてきました。当時トキワ荘に住んでいた漫画家たちの中で、最も年長で、しっかりしていて、頼りがいのある人物――トキワ荘出身漫画家たちの著作や思い出話の中でそのように描かれてきたからです。


しかし2009年、NHKのディレクター/プロデューサーである山登義明氏が取材した結果、新しい事実が判明します。


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このことを記した石ノ森章太郎のエッセーには姉の思い人の名前は××さんとしかなかった。今回、「赤塚不二夫」特集を制作するにあたり、私は関係者にこの件についても訊いて回った。「それは我孫子素雄さんしか考えられない」という確証を、関係者から私は得た。


10日ほど前に、私は藤子不二雄Aさんにインタビューした。「石ノ森氏のお姉さんが好きだった人を知っていますか?」「え、誰ですかねえ」「藤子不二雄A先生、あなたですよ」「ええ恥ずかしいですよ、そんな40年も前のことを」といって藤子不二雄Aさんはおおいに照れていた。そのときは、この「愛・・・知りそめし頃に・・・」を読んでいなかったから、藤子さんも意外なことでびっくりしたんだなと思っていた。藤子さん自身はお姉さんのこと以外の別の人を懸想していたので、お姉サンの思いには気づいていないのだと思っていた。


ところが、「愛・・・知りそめし頃に・・・」では、満賀道雄はしっかり小野寺由恵を意識していたではないか。私がインタビューしたとき、藤子不二雄A先生は照れてトボケていたのだ。ということを今発見した。あのとき、事務所でのインタビューだったから、アシスタントや関係者が部屋の端っこで聞き耳を立てているから、おおいに照れたにちがいない。でも、この恋物語、なんとか形にしたいなあと思っている。

http://megalodon.jp/2012-1025-1310-09/mizumakura.exblog.jp/10953730/

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このブログエントリ、後に山登義明氏は削除してしまったので、現在はウェブ魚拓にしか残っていません。

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『愛…しりそめし頃に…』では、満賀道雄が他の漫画家と同じくしっかり小野寺由恵を意識していたばかりか、

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深夜に小野寺由恵から石ノ森章太郎の将来について相談を受けたり、皆で富士五湖めぐりの旅行に出かけた際、夜明けに二人だけの時間を持ったりしたという描写があります。


しかし、『愛…しりそめし頃に…』は事実ではなくあくまで自伝的漫画です。満賀道雄がトキワ荘に住みながら『怪物くん』を描くような創作があるように、満賀道雄と小野寺由恵の交流は藤子不二雄Ⓐの創作だったという可能性もあります。山登義明氏がエントリを削除しているという事実もあります。


しかし一方でⒶの書いた『トキワ荘青春日記』には、確かに小野寺由恵に本を貸したり、いっしょにお菓子を食べたりしたことが書かれているのです。そう考えると、『トキワ荘青春日記』には小野寺由恵が亡くなった昭和三十三年分が収録されていないのも意味深に思えてきます。


ただ、当時のⒶには「K子さん」という思いの人がいたらしく、そのせいもあったのかなあ、と想像を膨らませてしまいます。


●石ノ森と姉と『仮面ライダーW』

さて、石ノ森と姉の関係性を考えると、自分が最も衝撃を受けた仮面ライダー作品は『S.I.C. HERO SAGA』の一編、『KAMEN RIDER W -Playback-』だったりします。

 

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