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マクガイヤーチャンネル 第150号 2017/12/20
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おはようございます、マクガイヤーです。

コミケの原稿が終わってから気になっていたけど観逃していた映画を観にいこうと考えていたのですが、『否定と肯定』『パーティで女の子に話しかけるには』『映画かいけつゾロリ ZZのひみつ』も上映回数が激減してしまい、観にいくのがほぼ不可能になってしまいました。『スター・ウォーズ』のような大作が公開されるとこのようなことになるのかと、驚きでいっぱいです。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


○12月23(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2017年12月号」

・最近の日馬富士

『ブレードランナー 2049』

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

『全員死刑』

『ビジランテ』

『GODZILLA 怪獣惑星』

『エンドレス・ポエトリー』

『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

『gifted/ギフテッド』

『ローガン・ラッキー』

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

『GODZILLA 怪獣黙示録』

・特撮秘法Vol.7

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



○ 12月29日(金)18時~(いつもと時間が異なります。ご注意下さい)

「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会2017」

例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」。2017年に語り残したオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくります。

・コミケ

・ゲーム

・おもちゃ

・????

今のところ、以上4トピックについて語る予定です。


ちなみに過去の忘年会動画はこちらになります。

2016年

2015年

2014年 

2013年




○1月6日(土)20時~

「古谷実とバケモノ」

1993年に『行け!稲中卓球部』でデビューした古谷実は、自分のような90年代に多感な時期を過ごしたアラフォー世代にとって特別な漫画家です。

オタクな友達もサブカルな知り合いもヤンキーなクラスメイトも、全員『行け!稲中卓球部』を読んでましたし、『僕といっしょ』『グリーンヒル』もほぼ同じような読まれ方をされていました。注意深く読んでいた読者以外には気づかれなかったのです、古谷実の心の底には「怪物」や「バケモノ」に象徴される何かが棲んでいることを……

ほとんどの取材やインタビューを断っている古谷実はいったいなにを考えているのか、2010年代以降『ヒミズ』『ヒメアノ~ル』『わにとかげぎす』といった作品が続々と映像化され再び注目されている理由などついて、解説したいと思います。



○1月20日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年1月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○また、12/31(金)20時より「山田玲司のヤングサンデー」に出演する予定です。

『魔法少女まどか☆マギカ』について語り合う予定です。もしかすると年越し放送になるかもしれません。


お楽しみに!


○コミケ出ます。

3日目東リ25b‏です。山田玲司先生率いるヤンサンと同じ卓です。


『大長編ドラえもん』解説本を売る予定です。



Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)




さて、今回のブロマガですが、先日公開された『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』について書かせて下さい。



『ジャスティス・リーグ』と対照的

『フォースの覚醒』がおっさんファン向け接待のように感じた自分は、シリーズの定番を次々と外したり棄て去ったりしていく『最後のジェダイ』をかなり楽しんだわけですよ。

特にルークが最後にみせる○○と、少年が馬小屋から星空を見上げるラストカットが割と好みで、満足して映画館を出たのですが、どうも世間では絶賛と不評が相半ばしているようです。


たとえばラップもできる映画評論家のライムスター宇多丸さんは「反乱軍が馬鹿ばっかり」「レイとルークは師弟関係築けていない」「レイが成長していない」「まるで『スター・ウォーズ』のパロデイ映画みたい」……といった理由から酷評しています。

https://www.tbsradio.jp/210669

一方で、映画評論家の町山さんは「次々と予想を裏切り続ける展開」「すべてのショットが絵画のように芸術的」「パロディのパロディ返し」「『スター・ウォーズ』の定番だけでなく人類の神話の定型にすら反旗を掲げた新約聖書」……といった理由から絶賛しています。

https://tomomachi.stores.jp/items/5a35e0c8f22a5b7ab90012be


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https://www.rottentomatoes.com/m/star_wars_the_last_jedi

トマトメーターは、評論家と観客とでかなり差が開いています。


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https://www.rottentomatoes.com/m/justice_league_2017/

『ジャスティス・リーグ』と対照的ですね。


このような光景を過去に何度か目にしたことがあります。

そう、『夏エヴァ』『ヱヴァQ』の公開時です。

ということは、『最後のジェダイ』は『エヴァンゲリオン』のように評論すべき作品なのではないでしょうか。

参考リンク(http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20121119/1353252418



●定番を次々と棄てる作風

『最後のジェダイ』は、『スター・ウォーズ』シリーズおなじみの宇宙での戦闘シーンから始まります。ポー・ダメロンがXウイング単機で大型のスター・デストロイヤーと対峙し、口八丁で時間を稼いだ後、砲台を破壊していくシーンは観客の誰もが心をつかまれるでしょう。




以下ネタバレ。




しかし、びっくりするのはここからです。

スター・デストロイヤーを破壊するために「爆撃機(宇宙空間なのに何故か重力がある描写は、音が鳴り響く宇宙と共に『スター・ウォーズ』の伝統です)」が登場し、タイファイターに打ち落とされる中、見知らぬアジア人女性パイロットの命をかけた活躍によりスター・デストロイヤーが破壊されるのですが……この人誰ですか?

その後、このパイロットの妹が登場し、大活躍するのですが、姉妹含めて女芸人かと思ってしまうくらい不細工なアジア人が誰よりも英雄的な行動を行なう(それもこれまで主役と思われていたキャラクターを差し置いて)というのは、これまでの『スター・ウォーズ』シリーズ(『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』といったスピンオフを除く)では無かったことです。


シリーズの定番を破る描写はこの後も続きます。


辺境惑星の孤島に隠遁したルークは、レイが持ってきてくれたライトセーバーを秒速で投げ棄てます。前作であんなにも重要なアイテムとして扱われていたのに!


レイの親はハン・ソロでもルークでもレイアでもパルパティーンでもなく、ただの飲んだくれの一般人であることが判明します。

カイロ・レンから台詞で告げられるだけではありません。その前に、レイが孤島の地下洞窟に潜り、鏡のような壁を覗きみると、どこまでもどこまでも自分が続くようにみえるシーンは、どこまで先祖を遡っても自分のような一般人しかいないというレイにとって最大の恐怖を暗示しています(これは『帝国の逆襲』で修行中のルークが最大の恐怖としてダース・ベイダーの幻影の中に自分をみること=血族かもしれないことの変奏になっています)。

それにしても、一作目で共和国のヘルメットを意味ありげにみつめていたシーンは何だったのでしょうか。


三部作が(今のところ)三作続く構造をとっている『スター・ウォーズ』シリーズには、「二度あることは三度ある」法則があります。これによれば、レイは本作で右腕を切り落とされるべきであるし、ボバ・フェットの血族がスレーブIIIに乗って出てくるべきです。しかし、レイは身体のどこも失いませんし、ファズマはフェット一族ではありません。それどころか、これまでシリーズ全作で誰かが必ず口にしてきたお馴染みの台詞”I have a bad feeling about this”を誰一人として口にしないのです。


更に、パルパティーンのような「ラスボス」かと思われていた最高指導者スノークは瞬殺されます。スノークがどのようにダークサイドの力を得て、どのようにファースト・オーダーの指導者となったのかも謎のままです。正体はダース・プレイガスかもしれないという予想や、プレイガスと同じムーンという種族だったとかいう設定はなんだったのでしょうか。まるで、殺されるために存在したかのようです。

や、完結編となる三作目でそのように死ぬことは想像できなくもありませんでしたが、まさか二作目で死ぬとは。邪魔だから殺したという監督の意思が満々です。


もっと細かいことをいえば、頑なに使わなかった回想シーンを今回は使っています(ワイプはJJも使っていませんでしたが)。レイアは宇宙空間を生身で飛び、アクバー提督は地味に死に、チューバッカもR2-D2もC-3POもスパロボでいう「いるだけ参戦」のような扱いです(一方で、新々三部作の象徴のようなBB-8は大活躍します)。



●ルークとはルーカスであり、ジェダイ・トリックは「映画」である

長年のファンにとって最も評判が悪いのは、ルークに関する描写のようです。せっかく受け取ったライトセーバーを棄て去るのは序の口で、ルークはレイときちんとした師弟関係を結びません。「ジェダイになるための3つのレッスン」も2つまでしか消化できません。なによりも、カイロ・レンがダークサイドに落ちた原因は指導者としてのルークの弱さ、心の内にある恐怖が原因だったことが判明します。目を瞑ったレイの手を草でコチョコチョし「これがフォースだ」とやるのは、いかにもヨーダ譲りのお茶目さでしたが。

しかし、これは『スター・ウォーズ』旧三部作とプリクエル三部作がジョージ・ルーカスにとってのプライベート・フィルムのようなものであり、ルークとアナキンにはルーカスの実人生が反映されていた(されてしまっていた)ことを考えると納得がいきます。


成功を夢見て砂漠の惑星から反乱軍に参加し、最後は父親を倒すのではなく和解する旧三部作のルークには、モデストを出て南カリフォルニア大学映画学科に進学し、父親との関係にかっとうがあった若き日のルーカスの思いが込められているのは有名な話です。野心と才能からビッグになることを目指すも、慢心や幼さから妻も友人も失っていくプリクエル三部作のアナキンには、『スター・ウォーズ』で成功した後のルーカスの姿が反映されている、というか、反映されてしまったと捉えることもできます。

http://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar937999

https://miyearnzzlabo.com/archives/32101


ならば、エピソード7以降のルークもルーカスである筈です。

ルーカスは自分が育てたルーカス・フィルムをディズニーに売却し、『スター・ウォーズ』シリーズの権利をディズニーに譲りわたしました。この理由について、ルーカスは次のように述べています。

「(スター・ウォーズを作るのが)以前ほど楽しくなくなったから」

「映画を撮っても、受けるのは批判ばかり」

「(スター・ウォーズが巨大になったことで)自分が判断する前に、周囲の人間がどうすべきか決めようとする」

「それではつまらない。実験も何もできないし、なんでも決められたようにしなきゃならない」

http://www.huffingtonpost.jp/engadget-japan/why-george-lucas-sold-star-wars_b_8606720.html

つまり、新々三部作のルークが孤島に引きこもり、ジェダイの象徴であるライトセーバーを手渡されてもポイと後ろに投げ棄てたのは、『スター・ウォーズ』シリーズの権利をポイと投げ捨て、引退して豪邸に引きこもったルーカスの象徴なのです(ルーカスはルーカス・フィルムの売却益40億ドルのほとんどを教育に関する慈善活動に寄付したそうです)。


一方で、ルーカスは自身の新々三部作案はディズニーに却下されたこと、当初はエピソード5や6のように製作総指揮のような形で関わるつもりだったものの「ファンのための映画」を求めるディズニーとは見解の相違が多く、このまま関わっていては自分がトラブルの原因にしかならないと思い、身を引いて道を分かつことにしたことを後のインタビューで語っています。

また、ルーカス・フィルムの売却を自分で決めたものの未練たらたらで、「『スター・ウォーズ』を手放す決断は人生における別離と同じ」「奴隷商人に売ってしまった」などと、後の謝罪も含めて、内心に葛藤があることがありありと分かる発現をしています。

http://www.huffingtonpost.jp/engadget-japan/star-wars-george-luca_b_8914290.html


心に傷を受けて孤島の惑星に隠遁したルークは、ルーカス・フィルム売却の葛藤で傷ついたルーカスなのでしょう。少なくとも、J・J・エイブラムスやライアン・ジョンソンといった新たな作り手たちにとっては、そのようにみえたということなのでしょう。師弟関係がきちんとしていないのも、レッスンが中途半端なのも、直接映画作りを教わったわけではないが、『スター・ウォーズ』を通じて薫陶は受けた――という彼らの関係性そのままです。

自ら搾乳したミルクを飲み、ちっちゃなクリーチャーたちに身の回りの世話をしてもらうルークの姿は、ぎょっとさせられるものの、それなりに快適そうです。よくテレビのバラエティー番組などでみかけるアメリカのセレブたちの暮らしぶり――度が越えた裕福さ故に、ぎょっとするもののそれなりに快適そうな暮らしぶりが頭に浮かんでしまいます。


ならば、『最後のジェダイ』のルークが、最初はレイを拒むものの、R2-D2にすべてのはじまりである『新たなる希望』の映像をみせられ、翻意する理由も分かります。ルーカスが心の底では『スター・ウォーズ』を棄てきれないように、ルークもジェダイを棄てきれないのです。ジェダイの書庫に火をつけようとするものの、なかなか実行できないルークはルーカスの葛藤を表しています。一度はカイロ・レンことベン・ソロを弟子として受入れたものの、ダークサイドの増大を理由に殺そうとするルークには、自らの子供であるプリクエル三部作に批判ばかりする観客に対して殺意を抱くルーカスを想像してしまいます。自らが産み出したキャラクターであるヨーダ(それもCGではなくパペット)が「弟子が自分を乗り越えるように指導するのが師匠の役目だ」といったような台詞を口にし、書庫に火をつけるのは、『スター・ウォーズ』というコンテンツはもはやルーカスの子供ではなく、ルーカスに啓示を与えるほど一人歩きしていることを象徴しています。


注目したいのは、映画のクライマックスでルークがみせるシリーズ史上最大のマインド・トリックです。ジェダイはフォースを通じて他者の心を読み取とったり、テレパシーで会話したり、他者の心を操ったりすることができます。『最後のジェダイ』では、孤島の惑星から一歩も出ることなく、敵味方共に自身の幻影をみせて、レジスタンスのピンチを救うのです。

まるで、ルーカス・フィルムという自身の縄張りから一歩も出ることなく、『スター・ウォーズ』の映画シリーズという最大の幻影で世界に夢と幻想(と批判するほど熱狂的なファン)を産み出したルーカスそのものではありませんか。


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意味ありげに見つめられたり、手渡されたりする幻影のサイコロ――ファジーダイスも印象的です。


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これは、『新たなる希望』でファルコン号に吊り下げられていたサイコロであると同時に、ルーカスの出世作である『アメリカン・グラフィティ』からの引用であり、ルーカスの青春の象徴であり、『スター・ウォーズ』におけるルーカスの立ち位置の象徴でもあるのでしょう。


更に付け加えれば「古い世代は全員ぶっ殺して新しい世界を作ろうぜ!」とレイを誘うカイロ・レンは、ライアン・ジョンソンのダークサイドを象徴しているのでしょう。



●レイアとホルド中将はキャスリーン・ケネディであり、レジスタンスはルーカス・フィルムである

そう考えると、レジスタンスの英雄であるポー・ダメロンが一見官僚主義的にみえるホルド中将と対立し、独自の作戦行動をとるものの、失敗してしまう理由も分かります。