おはようございます。マクガイヤーです。
一昨日放送した「最近のマクガイヤー 2017年5月号」は如何だったでしょうか?
キリグラフのタクジさんが出演してくれたり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『メッセージ』について盛り上がったりと、楽しい放送になりました。
結局、HGUCバーザムはまだ作れていませんが……この後作るぞ!
マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。
○6月3日(土)20時~
「俺たちの『コブラ』」
ヒューーッ!
『コブラ』といえば、1978年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まり、その後も掲載誌を変えつつ断続的に継続しているご機嫌なSFアクション漫画です。
自分は親父の本棚から盗み読みして以来、『コブラ』が大好きなのですが、21世紀になっても新作アニメが発表されたり、実写化企画が進行していたり、ネットでMAD映像やコラ画像が発表されたりと、断続的に盛り上がっているコンテンツでもあります。それは まぎれもなく ヤツさ!
そこで、ゲストとして同じく『コブラ』が大好きなオタク大賞名誉審査員のナオトさんに出演して頂き、おっさん二人が『コブラ』の元ネタや成り立ちについて解説したり、傑作エピソードについて語り合ったり致します。
盛り上がらなかったら……笑ってごまかすさあ!
○6月24日(土)20時~
「サバイビング・ジブリ ジブリ・サバイバーとしての米林宏昌と『メアリと魔女の花』予想」
7/8より元スタジオジブリ現スタジオポノックの米林宏昌監督による期待の新作『メアリと魔女の花』が公開されます。
米林監督といえばカオナシのモデルで有名ですが、「麻呂」という仇名をつけられつつも、後進を育てられないことで有名なスタジオジブリで『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』という長編作品をしっかり形にして発表できた稀有な監督でもあります。
そしてこの二作には、あまり知られていませんが、スタジオジブリについてのメタ的な意味が込められてもいるのです。
そこで、『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』の秘められた意味について解説しつつ、『メアリと魔女の花』について予想したいと思います。
是非とも『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』を視聴した上でお楽しみ下さい。
○7月前半(日時未定)20時~
「『ハクソーリッジ』と天才変態監督メル・ギブソン」
6/24よりメル・ギブソン久々の監督作である『ハクソーリッジ』が公開されます。
本作は2017年の第89回アカデミー賞において録音賞と編集賞を受賞しました。これまでどう考えても落ち目だったメル・ギブソンにとっての復活作なのですが、『ブレイブハート』『パッション』『アポカリプト』といったこれまでのメル・ギブソン監督作を観ていた我々には分かっていたことです。
メル・ギブソンが、稀代の変態にして天才映画監督であることを……
そこで、俳優・監督としてのメル・ギブソンについて振り返りつつ、『ハクソーリッジ』について解説したいと思います。
是非とも『ハクソーリッジ』を視聴した上でお楽しみ下さい。
○7月後半(日時未定)20時~
「最近のマクガイヤー 2017年7月号」
いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
詳細未定
○8月前半(日時未定)20時~
「しあわせの『ドラゴンクエスト』」
7/29に『ドラゴンクエスト』シリーズ久しぶりのナンバリングタイトルにして非オンラインタイトル『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が発売されます。
『ドラクエ』といえば「国民的ゲーム」の冠をつけられることが多いですが、『ポケモン』や『妖怪ウォッチ』や『マインクラフト』といったゲームを越えたコンテンツが席巻し、ゲームといえば携帯ゲームである現在、事情は変わりつつあるようです。
そこで、これまでの歴代作品を振り返りつつ、ドラゴンクエストの魅力に迫っていきます。
さて、今回のブロマガですが、映画『メッセージ』について語らせて下さい。
打ち上げで話していて分かったのですが、この映画、SFに馴染みが無い人にとっては理解し難い点が幾つかあります。それらについて解説したいのですよ。
●原作『あなたの人生の物語』と現代SFのテーマ
映画メッセージはテッド・チャンによる短編『あなたの人生の物語』を原作としています。
SFに詳しくない人のために説明しますと、この短編、誰もが認める名作なのですよ。
というか、テッド・チャンは「現代」のSFを代表する作家でして、ものすごく荒っぽくなりますが、表題作が納められた短編集『あなたの人生の物語』と、グレッグ・イーガンによる短編集『しあわせの理由』の2冊を読めば、とりあえず「現代SF」がどういったものなのか理解できると言い切って良いでしょう。
では「現代SF」が昔のSFや他ジャンルの物語と異なる点は何でしょうか?
それは「認識」を最大のテーマとしていることです。
勿論、「認識」は文学全体にとっても重要なテーマの一つでしたが、テクノロジーや自然科学や社会科学的裏付けをもって「認識」について語ることに最大の特徴があります。かつてのSFでもそういったことは行われていましたが、意識や知性についての科学的理解が進み、それらが反映されることに新しさがあります。アイコンとしての大宇宙の深淵やサイバーパンクな大都市の代わりに、脳科学や言語学や人工知能を含む異種知性にとっての自我や自意識などが頻出する傾向にあり、これらを敷衍した上で「人間性」が語られるのです。
●ヘプタポッドとトラルファマドール星人的世界観
『あなたの人生の物語』も『メッセージ』も、人類が始めて異星の知性と出会うさまを描く、いわゆる「ファーストコンタクトもの」の形式をとっています。
人類が初めて出会う異星人ヘプタポッドは、7つの触手を持ち、7つの眼を持っています。彼らには、前後の違いという認識がありません。それどころか、原因と結果という認識すら無いのです。
つまり、人間が自分の体の前後を認識し、原因と結果という因果関係を認識し、縛られているのに対し、ヘプタポッドは過去も現在も未来も全体として認識します。
SFというジャンルにおいて、このような異星人が登場するのは初めてではありません。
誰もが頭に思い浮かべるのは、カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』に出てくるトラルファマドール星人です(ヴォネガットの他の短編にも同名の異星人が出てきますが、ちょっとずつ設定が異なっています)。
トラルファマドール星人は4次元に住み、自在に望む時間を見ることができます。だから、トラルファマドール星人は死体をみても、「そう見えるにすぎない」と考えます。
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わたしがトラルファマドール星人から学んだもっとも重要なことは、人が死ぬとき、その人は死んだように見えるにすぎない、ということである。過去では、その人はまだ生きているのだから、葬儀の場で泣くのは愚かしいことだ。あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず、常に存在してきたのだし、常に存在しつづけるのである。たとえばトラルファマドール星人は、ちょうどわれわれがロッキー山脈をながめると同じように、あらゆる異なる瞬間を一望のうちにおさめることができる。彼らにとっては、あらゆる瞬間が不滅であり、彼らはそのひとつひとつを興味のおもむくままにとりだし、ながめることができるのである。一瞬一瞬は数珠のように画一的につながったもので、いったん過ぎ去った時間は二度ともどってこないという、われわれ地球人の現実認識は錯覚にすぎない。
トラルファマドール星人は死体を見て、こう考えるだけである。死んだものは、この特定の瞬間には好ましからぬ状態にあるが、ほかの多くの瞬間には、良好な状態にあるのだ。いまでは、わたし自身、だれかが死んだという話を聞くと、ただ肩をすくめ、トラルファマドール星人が死人についていう言葉をつぶやくだけである。彼らはこういう、"そういうものだ"。
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カート・ヴォネガットがトラルファマドール星人を創造したのは、第二次大戦中に捕虜としてドレスデン爆撃を体験したからです。
ドレスデン爆撃は東京大空襲と同じく連合国軍によって行われた無差別爆撃であり、ドレスデンの街の85%が破壊されました。亡くなった市民の数は2万5千人から15万人といわれており(人数に幅があるのは、当時のドレスデンには多くの難民や死傷者が滞在していたからです)、原爆投下と同じくホロコーストのような戦争犯罪だったのではないかとの議論が今でも盛んです。少なくとも、屠畜場の地下の肉貯蔵室で爆撃を生き延びたカート・ヴォネガットは「計りがたい大虐殺」と受け止めました。自らが所属する軍が行った爆撃であるにも関わらず、です。
大量に、無意味に死んでいった死人たちをみて、ヴォネガットはトラルファマドール星人を創造せずにいられませんでした。彼らが爆撃で死んだことは好ましからぬことですが、だからといって生きていた時間が無駄だったわけではありません。生きるとか死ぬとかいったことは「そういうもの」なのです。
そんなトラルファマドール星人的世界観、死生観を発明しなければ、とてもじゃないけどやっていけません。そんな作風から、カート・ヴォネガットは「心優しきニヒリスト」と呼ばれています。
同じような異星人が登場しながらも、『あなたの人生の物語』や『メッセージ』が『スローターハウス5』と異なるのは、カート・ヴォネガットよりももうちょっとだけポジティブなことです。
以下ネタバレ。
●「サピア=ウォーフの仮説」とは?
ヘプタポッドたちが使う文字は、左から右、もしくは右から左に少しずつ読み進めていくというものではなく、絵画や曼荼羅のように全体で意味をなすものでした。これは主人公によって表音文字でも表意文字でもなく表義文字と名づけられます。映画では、前も後ろもないという特徴から、円状の図形として描かれます。
(このTシャツ、良いわあ)
円形なので、前も後もありません。過去も未来もありません。だから、主人公は表義文字の解読を進めるうちに、ヘプタポッドのように世界を認識できるようになります。
これは、劇中でも示唆されますが、言語はその使い手の世界観の形成に影響を与えるというサピア=ウォーフの仮説を基にしています。
サピア=ウォーフの仮説の説明によく使われる例として、エスキモー語における雪を表す単語の多さがあります。たとえば英語では”powdery snow”とか”heavy snow”とかいった数種類の言葉しかないのに対して、エスキモー語では200種類以上の雪を表す言葉があるというのです。これは、英語しか知らなければ数種類の雪しか見分けられないこと、エスキモー語の使い手は200種類以上の雪の状態を峻別可能なことを意味する――というのがサピア=ウォーフの仮説です。
(『虐殺器官』でも書かれていた通り)実際にはエスキモー語で雪を表す言葉は20種類程度しかありませんが、使う言葉がその人の世界観に影響を与えるというのは経験的に頷ける話です。シェークスピアの真髄を理解するためには英語を身につける必要がありますし、関西芸人の笑いを理解するためには関西弁を学ぶ必要があります。TwitterやFacebookで「やばい」とか「すげー」とかいった幼い言葉しか使わず語彙が極端に少ない人は、実際に会ってみると肉体的・精神的どちらかの意味で幼いですし、必要以上にもってまわった衒学的な言葉遣いをする人は、実際に会ってみるとどこかしら屈折しています。
だから、主人公がヘプタポッドの使う表義文字を学ぶことで、過去・現在・未来を一望できるヘプタポッド的世界観を身に着ける――という『あなたの人生の物語』の展開は、SF的に納得できます。
●映画『メッセージ』におけるパラドックス
しかし、問題はここからです。
映画『メッセージ』のクライマックス、主人公はなんと時空を越えて現実を操作してしまいます。それも、二度も。
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