畑総合政策会議議長 衆議院本会議質問(2014年3月27日)
3月27日、衆議院本会議にて、政府提出の「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案」、及び「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案」の趣旨説明が林農林水産大臣から行われ、これに対し生活の党を代表して畑浩治総合政策会議議長が質問に立ちました。
質疑全文は以下の通りです。
【 質疑全文 】
生活の党の畑浩治でございます。
生活の党を代表して「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案」及び「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案」に対して質問をします。
地域を歩いていると、短期間での急激な政策転換に、農家から戸惑いの声が上がっています。現在行われている経営所得安定対策すなわち、戸別所得補償については、急激な方向転換をやめて安定的に行ってほしい、という声が圧倒的です。
私たちは、この制度を安定的に実施していくべく、民主党・社民党とともに、農業者戸別所得補償法案等を提出しているところです。私も野党案の提出者の一人でありますが、本日は野党案と比較しつつ政府案の問題点をただすべく質問に立たせていただきます。
農業者戸別所得補償制度は、全販売農家を対象にし、農家の生産者としての農業所得のミニマムな保障を可能な限り追求しつつ、食料自給率の向上をも目指す、という基本線に貫かれています。
一方、日本型直接支払制度は、集落を対象とし、農地を農地として維持し、その多面的機能発揮を名目とする支払いであります。本来の生産や経営に対する支払いではないという意味で生産者として立ちゆくような支援とは意味合いが違います。農家の経営が立ちゆけば自ずと農地は農地として維持されるものであります。経営が立ちゆかなければ、農地を農地として維持する支援を行っても、農地の維持は難しいものであります。
政府案は、農業支援の理念が間違っていると言わざるを得ません。総理は農業支援とはどうあるべきと考えているのかその認識を伺います。
戸別所得補償制度をばらまきとする批判は中身を全く理解しない浅薄なものです。戸別所得補償制度は、ソフトな手法で農地集約化や生産調整を図る合理的な制度です。全国一律の単価とすることで、コスト削減と高値販売への経営努力が報われるシステムとなっています。実は規模の大きな経営体に有利な設計となっています。現に規模拡大、集約化の効果が現れていて「静かな構造改革」ともいえる結果が出ています。
この点についてどのような認識があるか総理に伺います。
政府案では、米の直接支払交付金を来年度は10アール当たり1万5千円から半額の7千5百円にして、4年後には廃止するという方向ですが、大変問題が大きいと考えます。
米の直接支払交付金については、収入変動影響緩和対策、いわゆるナラシでは、米価が趨勢的に下落する中では、過去の平均により計算される基準収入が継続的に低下してしまい所得の減少に歯止めがかからず将来の経営見通しが立たないため、「岩盤」が必要ということからできた経緯があります。この廃止は、兼業収入の少ない大規模経営ほど深刻な問題となり、さらに規模拡大が期待される中心的な稲作の担い手が将来の投資計画を躊躇するような状況を生み出すのではないでしょうか。
問題点をどのように認識しているのかお答え下さい。
岩手県においては、農政改革により交付金が減少するため農業所得が16億円減少するとの試算をまとめています。
一方、国の試算は、農家所得が増えるとしていますが、その前提は、主食用米の作付面積が順調に飼料用米に転換する、不作付地の大部分に飼料用米が新たに作付けされる、飼料用米が最大限生産された場合に交付される最高金額である10アール当たり10万5千円の場合を前提としているなど、かなり楽観的な試算となっています。
政府案により、農家への交付金の交付額についてどのように変わるのかお答え下さい。
飼料用米に想定通りうまく転換されるかどうかは、需要先とのマッチングが必要不可欠となります。また、飼料用米を飼料に加工するための特別な機械・施設が必要です。平坦部では、畜産農家が少ない上にそのような機械・施設も十分ではないというミスマッチの問題があります。飼料用米への転換の見通しが甘いと言わざるを得ません。
飼料用米転換の見通しの根拠及びマッチング支援についてお答え下さい。
戸別所得補償制度は、生産数量目標に従って販売目的で生産する主体に交付金を交付する制度です。生産調整のインセンティブを与えるものでありますが、生産数量目標に従わないことに対する個々の農家へのペナルティはありません。実質的には選択制といってよい合理的な制度であります。
政府の農政改革については、減反廃止や農家淘汰政策であるという見解がある一方で、減反強化策ではないかという、相反する見方があります。これは、政府の施策が二枚舌でどちらともとれる曖昧なものだからであります。国の情報提供のみで自主的に生産者において生産調整が行われるというイメージが、私には分かりません。
逆に、生産者の自主性と言いながら、国と生産者団体が事前に協議しつつ、実際には生産数量目標を実質的に割り当て、建前は生産者の自主的な判断だと言うのであれば、実質的には減反の強化という見方もできるのです。どのような手法で自主的で、かつ、有効な生産調整を行うことが可能と考えているのか、単なるきめ細かな情報提供を行うというレベルを超えてお答え下さい。
これまでの食料農業農村基本計画では、食料自給率を目標としていました。今回の見直し作業では、あいまいな概念である食料自給力が検討対象となっています。TPPに参加すると、食料自給率は、現行の40%から27%に低下すると、農林水産省で試算されています。食料自給力の検討につては、TPP参加を見据えて自給率を目標とする施策からの逃げを打ったのではないかとする見方もあります。
また、日本型直接支払は、自給率の向上という生産面に着目したものではなく、むしろ、潜在的な生産能力の維持を主眼とするもので、自給力の方が親和性が高いという見方があります。
そこで伺います。自給率50%を目指す政策に変更はあるのかどうか明確にお答え下さい。
農政に与党野党はありません。必要なのは、猫の目農政と言われないように、そして、農家の皆様に混乱と不安を与えないように良い制度で持続的な制度をメンツにとらわれずに構築することにあります。
政府与党が自らの案のみにいたずらに固執することなく野党案も含めて客観的に充実した審議がなされ、あるべき良い成案となることを切に念願して質問を終わります。
ありがとうございました。
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