小沢一郎代表 参議院選挙第一声(2013年7月4日)

 お忙しいところ、お出まし頂いて本当にありがとうございます。皆様のご支援、ご厚意に心から感謝申し上げます。有難うございました。
 さて、ご承知のように今日から参議院の選挙が始まりました。私どもは、千葉県選挙区で唯一の女性候補でございます太田和美君を公認候補として申請を致しております。もうすでに本人がご挨拶をしたようでございますけれども、今日は私も皆さまに「何とか太田君を参議院に送って頂きたい」そのことをお願いに参りました。彼女は、ここから少し離れておりますけれども、柏の生まれ育ちでございます。そして私自身も実は、お袋が柏のざいの出でございます。私は岩手県で生まれ育ったのですが、この千葉県が第二の故郷として、「なんとしても皆様のお力添えを頂きたい」そういう思いで今日参りました。
 すでに本人から、また今平野(貞夫)前参議院議員からもお話がありましたので、長話はいたしませんけれども、この参議院選挙、多くの国民皆さんの中には「どうせ自民党政権が代わるわけでもないから」と関心が薄い方もあると思います。しかし皆さん、ちょっと考えて頂きたいのは、現時点においては参議院で野党が自公よりも議席が多いのです。それだけにねじれ国会と言われておりますけれども、まさに自民党の独走を、暴走を止める役割をしているわけであります。もちろんいいことをしていれば、皆賛成するのですけれども、今の(自公)政権の治世、考え方を見ますと本当にこれからの日本、そしてこれからの皆さんの生活を、暮らしを本当に守る気があるのかという感じを私は致しております。
 マスコミ主催の党首(討論)の中でも何度も安倍さん喋っております。今まさに国民の暮らしをレベルアップする、そのためには景気を良くするということを。それには誰も異論はありません。ただ安倍さんの政権運営のやり方、あるいは経済政策のやり方はどういうことなのかと言いますと、大きな企業がどんどんお金を儲ければいい。そしてそれを国民皆さんに配分すれば、みんなも所得が増えるのではないかというわけです。
 小泉さんもそう言ったのですね。その結果、確かに大企業は非常にお金を儲けて大きくなりました。今、どのくらいかは想像もつかないですけれども、大企業の懐に260兆円あります。一年の日本(政府)全体の予算が90兆円前後ですから、260兆円というのがどんな大きなお金か分かると思います。それだけ企業は懐にため込んでおりますけれども、国民の所得は小泉内閣以来10パーセント以上減っております。一部のところには貯まっていても国民に対する配分はなされなかったということです。
 安倍さんは小泉さんと全く同じことを言っているのです。それは能力のある人、力のある人が儲けるのは勝手、自由ですけれども、しかしそれをそのまま政治が、政府が野放しに見過ごしていたならば、弱肉強食、強い者だけが残る、弱い者は捨てられてしまうことになり、所謂、動物、獣の世界と同じになってしまいます。それではいけないのだということから国民の大多数の人が一定の生活、暮らしをできるように、セーフティーネット、社会保障、あるいは農業、漁業、或いはいろんな雇用の問題に対して、政治がきちんと制度仕組みを作っておく。その上での自由競争でそれ以上一生懸命働いて儲かる人はいいですけれども。そういう事をやるのが政治の役目なのです。
 ところが小泉さん、そして今の安倍さんの話を聞いてみますと、とにかく競争力のある大企業がどんどん儲ければいい。あとはそれが配分されるみたいな話をしているのですけれども、事実は今申し上げましたように社員であれ、その他の国民の皆さんであれ、配分がなされず国民所得が減ってしまったというのが現実であります。ですから私たちはそういう政治はいけない。それではもう政治はいらないではないか。好き勝手に競争して強い者が勝てばいいのなら政治はいらないでしょう。放っておけばいい。 これでは本当に弱肉強食で強い者しかこの世の中に住めない、生きられないことになってしまうわけであります。
 私どもはそういうことから「国民の生活が第一」、政治とは生活を守ることである、という意味合いで「生活の党」という名前をつけたわけであります。今、そういう基本的な政治の運営の仕方、姿勢と同時に具体的な個別の問題でも皆さんの関心のあることが論じられております。その一つはTPPと呼ばれる国際間の協議、本当はアメリカとの話なのですけれども。これは農林漁業が直接的な影響、ダメージを受けるのはその通りです。岩手県の試算では、農業、林業、漁業の直接受ける被害とその関連を合わせますと全生産が半分になる。要するに半分だめになるという試算でございます。ですから必死になって農家の皆さんが反対するのはそういうところにあります。
 しかしこのTPPは農業、漁業の話だけではないのです。例えば、皆さんの生活で直接関係のある大きな問題として、医療保険、国民保険、健康保険の問題がある。アメリカの本当の狙いはそっちなのです。アメリカの医療企業、ここが日本の医療市場を狙っているのです。日本の国民皆保険、全員が医療保険に入っている仕組みがある限りはアメリカもなかなか参入できない。だからアメリカの大きな会社はできるだけこれを取っ払いたい。アメリカでは(国民皆)保険でないから、5000万人に近いアメリカ人が医療サービスを受けられない。それがアメリカの現実なのです。それを日本にも押しつけようとする意図がありありなのです。そういうのがTPPなのです。
 私は昨晩も総理に確かめましたけれども、TPP交渉では混合診療、自由診療という保険外の医療診療枠を広げようとしています。「それおかしいではないですか。そんなことをしていたら国民皆保険がだめになるのではないですか」と私が質問しましたら、総理は「いや、それは先端技術、高度な技術部分だけを自由にします。だから大丈夫です」とこう言っているのです。それを突破口にして先端技術なんて時が経つにつれて、どんどん増えてくるし、一般の技術になってくるわけです。そうするとその枠を広げるということを政府自らがやろうとしている。アメリカから言われると「はい。はい」と、日本政府がやろうとしている。これは本当に危険なやり方だと思っております。
 今、「自由診療の拡大反対だ」とお医者さんも言っていますけれども、お医者さん云々ではなくて、国民皆さんが医療保険でもって医療サービスを受けられなくなってしまう恐れがある。だから我々は、アメリカと交渉なんて今の政府にできっこない。言う通りにされてしまう。そうすると日本の「いのち」「健康」にかかわる問題までぐちゃぐちゃにされる。こういうことがあるから私たちは、TPPに参加すべきではないと主張しているわけでございます。
 その他にもサラリーマンの皆さんにとっても大変な問題がある。旧来ずっと前は終身雇用と言って、会社で一生懸命働けば、ずっとそこで働けた。日本の雇用に関するある意味のセーフティーネットです。それをコストがかかる、人件費が高くかかるということで、小泉(政権)の時に請負だとか派遣だとかという制度を作った。雇用者の今35パーセントが非正規社員だと言われている。この(非正規)枠を政府自身が拡げようとしている。日本の大企業としては、正規社員でなければ、いらなくなったらすぐ解雇できるから。そうしますと、農業や漁業の従事者だけではなくて、普通のサラリーマンの人も(勤務している)会社で働きたいと思っても、いつ解雇されるか分からないという状況になったら、とても将来の生活設計できないでしょう。だから私はおかしいと思う。だけどアメリカはそういう制度(を求めているの)です。
 TPPに頭を下げて入れてもらって、協議が始まる前にアメリカが狙っているその制度を安倍政権、日本政府がやり始めてしまった。アメリカのご機嫌を伺っているのかどうか知りませんけれども、そういう非常に危うい状況にあります。もちろん原発の問題、消費税の問題もあります。そういう直接皆さんの健康や暮らしに関係のある問題がいともたやすく、いわゆる、強者の論理、大企業の論理を今の自民党政権が推し進めようとしている。私たちはそういう政治の運営は間違っていると思います。正しいなら私は賛成します。そうでしょう。
 皆さんにとってどの党が政権であろうが関係ないのです。皆さんにとって良い政治をしてくれたらいいわけでしょう。だからいい政治をするのだったら私は野党だって賛成します。ところが今言ったように、自民党政権は本当に国民の皆さんの命や暮らしについて、もの凄く軽く考えている。私はこういう政権を皆さんが許しておいてはいけない。そこでこの参議院(選挙)になるのです。参議院で自公は過半数をとってないから、何とかこの選挙で過半数をとって今言ったような政策をどんどん進めたいと言っているのが自民党の腹の内なのです。
 この千葉選挙区で自民党から2人出ていますけれど、我々がやっぱり勇気をもって戦わないと、指定席みたいになってしまいますから。それではやっぱり今言ったように国民の暮らしは守れない、わたくしはそう言う思いでおります。
 今(参院選は)始まったばかり。(太田氏の)立候補の声明も遅れました。皆さんのバックアップで順調に今、県民皆さんの支持を広げております。どうか皆さんのお力を続けて頂いて21日の投票日に千葉県の代表として太田君を参議院議員として送って頂きますように心からお願いする次第でございます。本当に今日は皆様、急なご連絡にもかかわりませず、お忙しいところお出まし頂きまして本当にありがとうございました。重ねてお願い申し上げましてご挨拶といたします。

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