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【ミリオンライブ】生命の燃える瞬間を描いた物語『屋根裏の道化師』感想【ネタバレあり】

2018/12/01 22:00 投稿

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バレ対策のクッションなどおきません。

タイトルにあるのでそこで回避してください。



 めっちゃ面白かったです。

 色々な伏線がガバい、って言われてたりします。特に<コレットの出生>に関して。下でガバイな…って思ったところを挙げちゃてる人間なのを見てもらえれば分かる通り、私も確かにガバいな…と思っていないとは言いません。

 ですが、サスペンスって事件が起きたことによる不穏な人間関係の雰囲気を楽しむものです。対して「謎そのもの」を楽しむのは、ミステリーや本格推理の類です。初代バイオハザードはホラーサスペンスだったりします。あれ、全くミステリーっぽさはあまりないでしょう?また、ミステリーの古典として極めて広く認知されている探偵小説である『シャーロック・ホームズシリーズ』ですが、このシリーズは冒険小説の側面を持つときがあります。みたいな感じで、サスペンスとミステリーは親和性こそ高いけれども、実は全く異なるジャンルだったりします。

 本作『屋根裏の道化師』はそもそものジャンルが「劇場サスペンス」です。なので、私は最初からいわゆる「本格推理」的なものは全く期待していなかったんですよね。人間ドラマを期待していました。そして、実際その通りでした。

 なので言います。声を大にして言います。

 めちゃくちゃ面白かったです。
 本当に面白かった。

 確かに、事件そのものの情報自体はあまり多くありません。しかし、だからこそかなり色々と考えさせられるドラマで、こちらに考察の余地がかなりある。それがいいのです。


事前予想

・アナザーアピール
 →最後は犯人が自死するのでは?
  
・最初の「この役の『最期』まで」からラスサビの歌詞モロモロ
 →役の終わりは事件の終わり
  →最後に自死説の補強

とか、あとは、まあ、諸々を考えて、主演のコレットが犯人と推測しました。殺人者……というか屋根裏の道化師を理解するために殺人を犯したのでは?という動機が一番わかりやすかったから、というのもコレット犯人説の一端です。
 ワンチャンミルズが糸引いてるのかなぁ~って思ってました。「誰が仕掛けたのでしょう」って歌詞ですね。ただ、被害者側に回ったミルズが殺される前に思ったことなのかなぁって気もしたので、こっちの考えはあくまで傍線でした。

※ 完全なるメタ推理です。推理小説でこのような推理をやってはいけません。作者への冒涜です。


 ただ、初めて聞いた際は、ワンチャン本格推理やってくれる可能性にかけてメモとってましてですね、それでかなりの分量を取りながら聞いていました。ネタバレ……というか事件の真相については何も書いていないので、最悪誰が犯人かはこのメモまでは大丈夫です。

以下メモ。

事件の謎
・亡くなったのはプロデューサー。
・マドリーン「怖い声が聞こえた。鍵がかかっていた」
・鍵を開けたのはコレット
・現場は完全な密室、殺人には毒
・鏡文字で3と4が書かれたカードが残されていた
・プロデューサーはリハ前にコレットと出会った、最後に出会ったのもコレット

・二つ目の死体はマドリーン
・朝、中庭を歩いているときにシンシアが死体を発見した
・鈍器で頭を殴られた
・警察が見張っていたが、何者かが現れたりはしていない
・敷地内に大きな屋敷がある、現在は寮として使われている

・三つ目の死体はモニカ
・刃物でベッドでさされ、仰向けに倒れた
・相変わらず密室
・ベッドの上にリトルミルズ
・ピアノ線……持ち手まで血がべっとり
・リトルミルズには腕に仕掛けがされていて、包丁を投げることができる
・ミルズはモニカ殺しを否定はしない、肯定もしない


・コレットには帰るところがない、何かあったら引き取るのはミルズ
・コレットは突然招待状だけ持って劇場にやってきた
・ミルズはもともと手品師。劇場で働いていた。腹話術もできる

・犯人はミルズ、遺書も見つかった



屋根裏の道化師について
・お芝居のタイトルだが、かつてあった殺人事件が元ネタ。
・コレットを主役に選んだのはシンシアさん
・かつて働いていた道化師が殺人を犯し、屋根裏に隠れた
・屋根裏は配線が入り組んでいて手が出せない、隠し扉もあってもできない
・コレットが演じるのは「道化師」。優しい役。

その他
・リリー警部、ウォーカーくんと旧知

気になる点
・毒ってだけで自殺の線を消すのはちょっと…
・裏でなる鐘の音が気になる


 こちらのメモ、真相を知った後に見直すと「なるほど~」ってなる要素がいくつも見つかって面白いです。ただ、作中の事件へアプローチを仕掛ける材料につかえるのか?って言われると、本格じゃないのでほぼ無意味です、としか言えません。ハイ。最後のなんて、自分が「密室で毒をあおった人は自殺か他殺か」のロジックを書いた経験があるので「毒だから他殺」のロジックがものすごく引っ掛かっちゃったって感じですし、なんならピアノ線の仕掛けがあるのなら床や壁に跡があるか確認しろ!って怒りながら聞いていました。細かいところに目くじらを立てるようではダメダメですね。

 しかし、本格ではないのでそこは焦点になりません

 これは、劇場サスペンス。劇場を中心として起きた事件を通じ、彼ら彼女らの人間性とドキドキ感を楽しむ作品です。なので、事件自体はゆるい部分があったとしても、人間が良かったので、この作品は良い作品なのです。


 個人的にグッと来たところをいくつか。

・現場に残された「3と4を裏返したカード」の謎

 ……はい。おそらく、作中で提示された謎の中で、唯一探偵からマトモな回答を頂けたのがこれになります。
 この謎は最後にコレットが日本人を母に持つことを明かされ、初めて意味を持つものになりました。「43がえり」。聞けば非常にチープなダジャレのようですが、個人的に凄くいいなぁと思ったんですよね。
 私、ずっとこの謎が解けませんでして。手元に実際に複数パターンの「34」を用意して聞いてたんですよ。
 3を反対にするとEみたいになるし、Eastの頭文字ってことで、犯人は東国出身とかか…?4も方位記号みたいだし…なんて(結果的には合ってるけど)ガバガバなこと考えてました。4を逆にしても方位記号にはなりません。他にも、電卓のようにして縦に34を積んで書けばコレットみたいになるな…みたいなこととか(コじゃなくてCになるだろ)EH…?とかいろいろ考えまして。ThreeとFourを逆から…これも意味ねえな…わかんねえ……ってなるくらいには考えてました。
 なので、ひっくり返った3と4は『よみがえり』……『屋根裏の道化師』の復活を示唆していましたは、正直膝を打つほかなかったです。ダジャレといわれようとも、確かに私にはこれ以外考えられませんでした。別の説が思いついた人、います?

 そしてこのは、確かに事件の謎を解くための仕掛けとして機能していたでけでなく、非常に叙述トリック的でもある、という点で私を非常に興奮させました。

・登場人物たちは全員日本人ではない名前をしている
・しかし、彼らは全員日本語を話している
・3と4を『ヨ』『ミ』と読む人間はいないから登場人物が気づかないのは当然
・紬の方言ネタを向こうでのなまりとしてネタにした

 と、見事に我々が「34」は日本語で読むのではないか、と考える方向性を断っています。特に二つ目。日本人ではない作中人物たちが日本語を話すのは極めてメタ的な理由です。

 しかし探偵は我々と違う視点を持っているため「『さん』と『よん』」として認識していなかった。彼は「ReturnしているThree & Four」を「よみがえり」と読み、犯人特定に使った。なるほど、これは私たちの認知の穴をついている良い仕掛けです。叙述トリックとはこういうものですよ。

 ただ、個人的な意見としてはコレットが日本語に通じている、という伏線が欲しかったなぁ、とは思います。例えば、他の人は英語圏で使われていることわざを使うが、コレットは日本語のことわざを使う……とか。そういった引っ掛かりがなかったのは、少し残念かなぁ、と思うところです。

・『屋根裏の道化師』とミルズ、コレットに関して

 まずは『屋根裏の道化師』とミルズの情報をおさらいしましょう

・ミルズは劇場ミリオン座の最古参(最低でも20年以上在籍している)
・劇場の各地にある隠し通路を知っていたのは彼だけ
・「道化師」は優しい人物であったが故に殺人を犯した

 おそらくミルズが道化師その人で間違い無いと思っています。
 本当は手品師・奇術師だった屋根裏の怪人がいつしか道化師に変わったのか、あるいは道化師として働いていたミルズが手品師だったと嘘をついたのか……真相は分かりませんが、まあ、ミルズが屋根裏の道化師その人でしょう。とくに「隠し通路を知っていた」のは、伝承通りである、他の誰も隠し通路を知らないいう一点からこの説以外の線はおおよそ無いと思っています。

 そこで不思議になるのが「ミルズはなぜ殺人を犯してしまったのか」です。
 キーになるのは、ミルズとコレットの母との関係性でしょう。
 ミルズはコレットの母を愛していた。コレットの母の幸福を阻む障害があり、彼女は非常に悩んでいた。ミルズはそれを取り除くために劇場に棲む怪人に…『屋根裏の道化師』になった。けれども、コレットの母はミルズと関係を持ったが故に劇場を離れることに……といったストーリーがあったのではないか、と妄想しています。

 劇の『屋根裏の道化師』は愛する者を殺した……コレットからそう語られます。けれども「愛する者を守るための殺人を犯した彼だが、劇場から愛するものがいなくなった」というのが真相で、それが変形して愛する者を殺したという伝承になったのか、それとも演劇は伝承通りではなかったのか……どちらかは分かりません。伝承は変化する者ですし、何十年も前からある伝承というのが嘘かもしれません。どちらでもあるとも思いますし、上の仮定が間違っている可能性もありますが。
 とにかく「ミルズが『屋根裏の道化師』である」という可能性は、この悲劇にかなりの奥行きを与えてくれています。大好き

 『屋根裏の道化師』は自らの生のためにコレットが罪を重ねた物語ですが、その発端は、ミルズとコレットの母のお話があり、そして、それこそが『屋根裏の道化師』という悲劇を作り上げたのでは……という可能性がある。実に面白いじゃないですか。

 ミルズはコレットが犯人である可能性に気づいていたでしょう。コレットが愛した女の娘であると知っていたでしょう。その上で、ただ彼女を守るため、自身の愛した劇場を守るため、自分がプロデューサーなどの3人を殺した犯人であると偽り、自死までしたのではないでしょうか。どれだけ彼が苦悩したか。想像してみてください。めっちゃ興奮します。

 『屋根裏の道化師』。それは、二人の人間が己の目的のために殺人を犯す『屋根裏の道化師』となり、そして秘密を残して劇場で自決した物語です。娘と父のたしかな繋がりを感じさせる、ハートフルなエピソードですね!

・シンシアについて

 シンシアさん。個人的には、ストーリー上では一番影が薄かったかなぁ、と思っていました。ミスリード要因として活躍したわけでも、また事件の重要な情報をこぼしてしまうようなわけでもなく。狂言回しといいますか……どこまでもドラマに振り回される役どころでした。
 そんな「事件に影響を持たなかった」彼女こそ、このドラマが孕んでいる狂気を最も演出している人物だ、と今の私は考えています。

・次回公演の制作サイドが1人、出演者が2人亡くなり
・さらには劇場支配人がそれらの殺人の犯人であり
・その劇場支配人は劇場の中で自決してしまった。
 まっとうな人間なら、舞台の幕が上がることなく公演は中止するでしょう。にもかかわらず、彼女(たち)は演劇を完遂させた。演じ切ってみせた。「これしかない」からと、亡くなった者たちの想いも背負うと。
 ですが、親しい人が亡くなったのなら足を止めて悼むべきです。大切な人が亡くなったなら悲しむべきです。殺人犯が身近な人だったなら、その人を責めてもいいはずです。そうするほうが自然なのです。
 それでも、彼女は、芝居の完成のために動いた。コレットを最後まで演じきらせた。舞台を完遂させ、客席を埋め尽くし、そして「スカっとした」のです。
 そのようなことができた彼女もまた、劇場に魂を売り渡した狂人だったからにほかなりません。真っ当に見えた彼女も、狂気の舞台の役者であったのです。

「だって人が死んでいるのよ!?」
「みんな狂っているわ!」

 そう言って死んでいった彼女が、最も正常でした。
 正常だから、死んでいきました。


・めちゃくちゃ個人的な話(アイマス関係なくなるので飛ばしてもらっても構いません)

 最近アクタージュって役者を描いたマンガにハマってまして。んでこのマンガにはなんと「役作りのために狩猟免許を取得して熊を殺した青年」「『人を殺したことを隠して友人と遊ぶ女子高生の役』の役作りのためにナイフを持って友達と街を練り歩いた少女」「演出のために自分の死さえも利用する演出家」が登場するんです。ネジが外れたヤツばっかです。そのマンガも『屋根裏の道化師』も、登場人物がドイツもコイツも狂っている話ですが、まあ、聞きながら思い出し、かつ勝手に符号を見出してしまったりして、一人笑いをかみ殺していました。

 役者ってどこかズレていないとホンモノにはなれないのかなぁ、などと思わずにいはいられません。
 


 最後になりますが、これだけ妄想が広がる作品はそうはありません。
 確かに、推理小説としてみたら緻密さなんてないと言われても仕方ないと思います。けれども、これは事件解決の小説ではなく、人間を描いた演劇。破綻した人間だらけでも、いくら物語にすきまがあろうとも、その描写には一切の破綻はないのです。なれば、この作品は間違いなく素晴らしいものである、と断言できます。
 また、すべてを語らないからこそ、こちらにも想像と創造の余地がある。ミルズの過去、コレットの過去、ウォーカーとシンシアたちとの出会い、『屋根裏の道化師』以前の劇場、『屋根裏の道化師』以後のウォーカー……いくらでも想像が可能です。様々な空想をこの物語は許容してくれます。それは、間違いなく優れたつよさを持つ物語の証左ではないでしょうか。私はそのように考えます。


 本作『屋根裏の道化師』は、ミリオンライブのドラマパート最長にふさわしい、重厚で、ほろ苦く、しかしたしかに、彼女たちの生命の灯火の美しさを、エピローグの最期まで描ききってみせた物語でした。


 このCDの制作にかかわった方々、また、TBで投票を行ったすべての人に感謝を。そして、彼女たちの魂が、健やかに眠りにつけることを願って。




 ……TC、楽しみですね?

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