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【書評】死者なき世界で恋することを。宮内悠介『ヨハネスブルクの天使たち』(ハヤカワ〉

2013/05/30 01:51 投稿

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宮内悠介を知らない奴はただのモグリです(キリッ



処女小説集『盤上の夜』で問答無用の衝撃のデビューを飾り、直木賞候補作家の名誉を手にした宮内悠介の第二小説集。それが『ヨハネスブルクの天使たち』だ。

前作のややファンタジーめいた求道的な雰囲気はほぼ完全に消滅し、残酷極まりない第三世界の近未来を舞台に、空から・ロボットが・落ちてくるというモチーフを共通させた小説集である。そこにあるのは伊藤計劃的なディストピアであり、J・G・バラードのような逃げ場のない絶望感であり、なんというか、とにかくハードだ。

そんでもって、きつい。

前作に比べると情報量や世界観の膨らみが増えたぶん、「普通の小説」になってしまったように思う。空から落ちるロボットの不可解さやその不可解な現実と向き合う人たちの戦いは生々しく恐ろしく、また希望も少しあったりして愉快でもある。けれども、これがガジェット・モチーフ以上の強度は感じられずDX9という日本製のロボットが、この近未来に与えた影響を描ききれてない歯がゆさを感じた。途中ででてくる麻薬じみた新兵器も唐突に外装的なガジェットであって、なんだかその幻惑的な性質に若干の困惑も拭えない。

 むしろ読みどころは徹底してこのハードな雰囲気と、そこに生きる男女の関係性である。奇妙なことに、ハードSFであり戦争小説であり徹頭徹尾ディストピア小説であるこの『ヨハネスブルクの天使たち』は、全編通してどこまでも恋愛小説なのだ。不思議なことに。

この恋愛小説はもちろん、甘く、優しいものでゃない。冷たく、乾いたものでもない。女性たちはどことなく女性的ではなく機械じみた冷淡さを感じさせるのだけれど、そこが絶妙に可愛いらしい。末尾におかれた描き下ろし短篇「北東京の子どもたち」で描かれた彼女のそっけなさは、いままで宮内悠介が書けそうで書けなかった、可愛い女の子、なのではなかっただろう。

まあいいから四の五の言わずに買えよ。

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