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Leclerc Express 運行日誌 #34 「特車ゴールド制度に関する私見」

2016/02/03 03:20 投稿

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いつもはETS2に関する話を書いていますが、今回は本物のトラックの話。本年1月25日から始まった、特車ゴールド制度に関する私見を書きたいと思います。

と言っても。特車ゴールド以前に「特車とはなんぞや?」って人も多いと思うので、先に説明して行きます。予め断っておきますが、この前置きが長いです。

特殊車両と特殊車両通行許可

特殊車両通行許可について(国土交通省)

どこに国でも大抵はそうですが、道路を自由に通行できる車の大きさや重さには制限が有ります。日本も同様。本来なら全ての自動車が制限内に収まれば良いのですが、現実問題としてこれを超える自動車も多数有り、そういった自動車の仕事を抜きにして社会は成り立ちません。かといって、規格を超えた大きさや重さの自動車に好き勝手に走り回られては、道路の傷みは早くなるし危険も多いしで良いことは有りません。そこで必要になるのが、制限を超える自動車の通行審査を行い許可する制度です。

日本では制限を超える自動車を「特殊車両」、それに対する通行許可を「特殊車両通行許可」と呼んでいます。特殊車両は略して「特車」とも呼ばれ、通行許可を得ることを「特車を取る」などと言うことも有ります。特殊車両で公道を通行しようとする者は、国や地方自治体など道路を管理する行政機関(道路管理者)に通行許可の申請を行い、許可を得なければいけません。これらは道路法及び同法に関連した政令や省令で定められています。加えて貨物が道路交通法の制限を超える場合は、制限外積載許可を出発地を管轄とする警察署長から得なければなりませんが、ここでは割愛します。

特殊車両はその名前に反して、決して特殊な存在ではありません。一般道を走行する大型トレーラ連結車、重機を積載して走る低床トレーラ連結車、重さ指定道路以外を走行する総重量25t超の大型トラック、連節バス、自走クレーン車、90式戦車、99式自走榴弾砲、89式戦闘装甲車、98式AV…。大きさや重さが制限を超えれば全て特殊車両であり、交通量の多い幹線道路にいれば一日に一回以上は目にするものです。

ちなみに自衛隊の特車(≠戦車)の場合、特車申請と許可にかかる手続きを自衛隊内で済ませた上で、道路管理者にこれを通知して通行する「特殊車両通行通知」という制度が有ります。

どんな車が特車になるか?

車両制限令の規定を超える車が特殊車両になるわけですが、その規定が一種類ではありません。道路の種類によって、車両の種類によって、特殊車両となるかどうかは変わります。つまりある道路では特殊車両ではなかったが、別の道路に入ると特殊車両になる、という車もあるのです。

本当はここに一覧表を作ろうと思ったのですが、面倒なのでやめました。上にリンクを貼った国土交通省のサイトで御確認ください。ただ丸投げも何なので、「ある道路では特殊車両、ある道路では自由走行可能」という例を示します。

総重量25t以下、全長12m以下、全高3.8m以下、隣接軸重18t以下又は22t以下、全幅2.5m以下、軸重10t以下の新規格車
→重さ指定道路では自由走行ができますが、それ以外の道路を走るには特車許可が必要。

最遠軸距15.5m以上、軸重10t以下、隣接軸重18t以下又は22t以下、連結全長16.5m以下で、総重量36t以下のセミトレーラ連結車
→高速道路では自由走行ができますが、下の道を走るには特車許可が必要。

というように、道路によって自由走行が出きるかどうかが変わります。上の新規格車の方は特車不要の可能性もゼロではありませんが、セミトレーラ連結車で高速道路を降りない車と言うのは考え難いので、事実上は特車許可が必須と言うことになります。

増える特車申請=行政の手間

というわけで特車を走らせたければ自衛隊でなければ、書類を整えて役所に申請を行い、許可を得なければならないわけです。これが至極面倒くさい。道路情報便覧と言うものを見ながら経路を設定し、走行させようとする自動車の図面やら諸元表を用意し、トレーラ連結車であれば車検証に連結可能な型式の記載が必要で…などなど。ちょっとでも不備が有ると許可が降りなかったり、二度手間三度手間になることも珍しく有りません。特車申請を代理する行政書士さんの業務が賑やかなのも、手続きが面倒くさいし知識もコツも必要だからです。申請そのものは事業者が自分でやることもできますが、必要な手続きを行政書士に任せた方が手間も減り簡単なのです。オンライン申請も使い辛いという意見が少なからずあり、便利になったのは事業者自身より行政書士のようです。

一方で、審査をする役所の方も大変です。申請を受けた経路を特車が通れるどうか、道路を通過する時に条件を付ける必要はあるのか無いのか、条件をつけるとしたらどんなものが妥当なのか。申請された車両と道路の両方の仕様を見て、確認し、道路を守りつつ通行できるようにしなければなりません。また申請された経路に二つ以上の道路管理者の道路があった場合、例えば県道と直轄国道の両方を通過する場合ですが、申請を受理した道路管理者は他の道路管理者に連絡して協議を行い、その上で許可しなければなりません。この連絡の手間も大変なわけです。

しかも昨今は特車申請が増える傾向にあります。以前は特車申請を取らずに無許可運行をしていた事業者も多かったようですが、取締りが強化されたことも有り、特車を取って運行しようと言うコンプライアンス重視の会社も増えました。それ自体は良いことなのですが、皆が法令を守れば守るほど特車申請は増えるわけで、それを処理する道路管理者の業務も増えます。

特殊車両通行許可制度の現状と問題点(鹿児島国道事務所)
特殊車両の通行許可制度と現状の問題点とその改善策の検討(宇都宮国道事務所)

上記いずれも国交省の国道事務所が作成したレポートで、許可制度の現状と問題点を挙げています。両者が共通して挙げている問題点は申請件数の増大。平たく言うと仕事がどんどん増えていると言うこと。

では特車許可の件数と、許可された車両台数はどのくらい増えているのか。全国の統計を見て見ます。

通行許可統計(国土交通省)

これによると、平成16年度(2004年度)の許可件数は18万4361件でしたが、平成24年度(2012年度)の許可件数は32万2804件と、約1.8倍。許可された特車の台数は同35万6310台から96万4166台と、こちらは2.7倍になっています。これだけ増えれば忙しくなるのも当然と言えるでしょう。言い換えれば、増えた申請をどうにかして効率よく捌いていく必要があるということです。

処理を何とか簡素化したい行政

ところで、先ほどの通行許可統計をご覧になって、何かお気づきになったことは無いでしょうか?。平成22年(2012年)は前年と比べて、許可件数が減少しています。急に許可が厳しくなったのか、はたまた運送会社が倒産しまくったのか。実は平成21年に申請制度が改正され、許可期間が最大1年から2年に延長されたのです。それまではどんな特殊車両であっても、毎年許可を更新する必要が有りました。しかし平成21年に許可を受けた車両からは、更新が1年置きになるものが出てきたということ。期間が延びれば更新事務を減らすことができ、処理能力に余裕を作ることができるわけです。

事務処理の簡素化に繋がる制度改正はこれだけではありません。平成25年に公布され平成26年から施行された道路法を一部改正する法律に基づき、大型車誘導区間という道路指定制度が始まりました。これは特殊車両通行許可の簡素化の為に始まった道路指定制度。重さ指定道路及び高さ指定道路のうち、大都市中心部を迂回する道路と主要一般道・高速道路を大型車誘導区間とし、申請経路が誘導区間のみだった場合は国が一元的に許可するというもの。高速道路や直轄国道が中心ですが、主要な地方道も含まれています。つまり申請経路が直轄国道+県道だったとしても、その県道が大型車誘導区間であれば、県と協議せずに国が一元的に審査を行い許可を出します。これも事務処理の手間を省くことに繋がります。

こういった流れを受けて始まったのが、特車ゴールド制度なのです。

特車ゴールド制度

長い前置きは終わりました。ここからは特車ゴールド制度の紹介と、それに対する私見について述べて行きます。

ETC2.0装着車への特車通行許可を簡素化する「特車ゴールド」の制度開始について

まず特車ゴールド制度の大まかな特徴をご紹介します。
  1. 大型車誘導区間であれば、自由に経路選択できる
  2. 更新手続きが自動化される(道路法違反がない限り)
  3. 制度を利用するには、車両の通行の許可の手続き等を定める省令第7条に適合した車両に、業務支援用ETC2.0車載器を搭載して利用登録をしなければならない。
1は経路申請の簡素化のことです。従来の制度では1経路1申請となっており、途中で迂回路などを通る可能性がある場合、同一の発着地でも複数の経路を申請する必要がありました。当然、役所はその経路ごとに審査を行うことになります。特車ゴールド制度を利用した車の特車申請では、大型車誘導区間の全てを経路とする申請を行ったと看做されます。よってどの誘導区間に入ろうとも自由です。但し誘導区間外は申請した経路を通行しなければなりません。

2は経路違反や軸重超過などがない限り、更新手続きが自動的に行われると言うもの。違反をしない特車は更新申請が自動的に送られ、帰って来たメールをワンクリックするだけで更新終了です。

3は制度を利用する条件です。
車両通行許可(ry)第7条というのは、特車許可を出す基準を定めたものです。条文では細かい制限値が定められていますが、大まかに言えば一般的なセミトレーラ連結車や大型トラックなどが該当します。この制限を超える自動車でも特車通行許可は受けられますが、相応に特殊な理由が必要です(例:N700系新幹線電車を運ぶ)。特車ゴールドを利用できるのは、この第7条に適合する車に限られます。
つまり第7条の制限内に収まっていれば大型車誘導区間を自由に走っても問題はないが、それを超える車はどうだか分からないので、今まで通り経路を一つずつ申請して貰って許可を出すと言うこと。例えば全幅が2.5mを超える低床トレーラー連結車などが該当します。
そして特車ゴールド制度の要は業務支援用ETC2.0車載器ですから、これがないことには制度は利用できません。

なぜETC2.0が必要か?

色んな人の意見を読むと、ここを疑問に思っている人が多いようです。「天下りの為の利権確保だろう」とか、色々と言われています。これを理解するのは、ETC2.0最大の特徴を知る必要が有ります。

ETC2.0はITS(高度道路交通システム)に対応したもので、簡単に言うと車がどこを走っているかを行政側が逐次監視することが可能です。ということは特車が経路違反をやらかせば、すぐにバレるということ(らしいです)。適正利用しているかどうかが分かりますから、イチイチ経路を全部見なくても良い、省令7条適合の特車は大型車誘導区間なら問題ないだろうし、と。

「だったら省令第7条適合車は、大型車誘導区間は原則自由走行で良いじゃないか」
「結局はETC2.0を利用させたいだけなんじゃないの?」
「経路違反なんて普段だって把握し切れないだろ、なんでETC2.0搭載車だけ?」
「そもそも俺の地元にはITS路側機がない」

と思うでしょう。まぁ確かにそうです、というか上は僕が考えたことです(ITS路側機は地元にあると思いますが)。これは僕の想像ですが、従来の1経路1申請とトレードオフで考えられた制度だろうという事。大型車誘導区間の通行を包括的に許可するのであれば、それに応じた監視システム必要だと考えられたんだろうなと。ここは今後の動向を見ていく必要が有ります。省令第7条適合車は誘導区間自由走行で構わない、そこはETC2.0を必要とするところではない、という可能性はありますから。

行政の手間は減るか?

特車ゴールド制度の普及の度合いやシステムの安定性によりますが、理論上は減って行くと考えられます。更新が自動化されれば、その分だけ事務処理は減らしていけますし、更新されるまでの期間を大幅に圧縮可能。経路違反もITSで自動的に監視できますから、従来行政が人手で行ってきた処理を機械に丸投げして構いませんし。

今後の許可制度に求められる(と僕が思っている)こと

というわけで。ユーザー側の利便性も上がるかも知れない、行政の手間が減るかも知れない、双方の期待を負った特車ゴールド制度が始まりました。しかし物流の効率化を考えると、まだまだ改善して行くべき事は有ると思います。最後に今後の希望(妄想)ついて述べます。
  1. 全国の特車許可を一元的に扱う機関の設立
  2. 省令第7条適合車の、大型車誘導区間の原則自由走行
  3. 大型車誘導区間の拡充
  4. 道路情報便覧付図表示システムの一新
  5. 特車ゴールド制度を発展させるなら、4と連携した申請及び監視システムの開発
1は申請書類を作成するのに必要な道路情報を得たり、或いは複数の道路管理者での協議手間を省くためのもの。現在は国交省と地方自治体それぞれに特車申請を受理する部署がありますが、両者からそれらの部署を切り離して統合し、全国を網羅する統一機関を作ります。職員は国交省と地方自治体からの出向で賄い、東京に本部を、北海道・東北・関東・甲信越・中京・関西・中国・四国・九州・沖縄に地方事務所を設置します。統一機関は国土交通省の外郭団体とし、機関の長は道路局長又は事務次官経験者の天下りとするのはどうでしょうか。

2は特車ゴールド制度を通じて得た通行情報を分析し、省令第7条適合車の通行に特段の支障がなければ、法令を改正し以後は原則自由走行とするもの。ユーザー側は申請手続きの手間も省けますし、行政側は事務処理の手間が省けます。win-winの関係です。ETC2.0車載器は、経路違反の監視や更新の自動化に特化すれば以後も使い道はあります。なんなら特車には強制搭載でも良いかも(ゲス顔)。

3はそのままの意味。幸か不幸か、国債長期金利は未だに最低水準です。この隙に国債を大量発行し、全国津々浦々を工事しまくって大型車誘導区間を増やしましょう。財政出動になり、景気回復にも繋がります。市中銀行や機関投資家も、安全な投資先として国債が欲しいはずです(だから金利が低い)。

4は申請書類を作るのに使うソフトの話。現状のソフトは、まぁ僕が素人なのもあるでしょうが、かなり使い辛いと感じました。グーグルマップの感覚で使おうとすると面食らいます。そこで、このソフトを全く新しいものにしたらどうでしょうか?。新ソフトには全国の道路情報と通行条件の算定方法をデジタル化して実装し、車両諸元の入力機能や車検証の認識機能も組み込み、経路選択はグーグルマップぐらいの感覚で使えるようにする。そして申請書と添付資料をそのままネットを通じて送信、申請することができるとかなり便利です。現状のソフトを使いやすくした上で、オンライン申請システムと統合したようなものですね。勿論、エラーチェック機能も欲しいところです。

5は、どうせ特車ゴールド制度を続けるなら、4のソフトと連動させたらどうかということ。4のソフトで経路設定してオンライン申請し、デジタル通行許可が当該特車のETC2.0車載器と申請者のソフト両方に送られ、4のソフトで許可状態や違反履歴などを一括閲覧及び管理できる。事業者のが使っているPCが、ITS端末ともなるわけです。

と、ここまで勢いで書いて思いました。素人の僕が考えていることぐらい、頭の人たちは既に考えているだろうと。そして未だにそれが無いという事は、なにか事情があるのかもしれません…。

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