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Leclerc Express 運行日誌 #37 「日本でも始まる!?連結全長25mの長大トラック 第1回」

2016/04/24 17:01 投稿

コメント:5

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今回はリアルトラックの話題を。

まずはこちらの報道をご覧下さい。

人手不足の改善につながるのか、実運用には課題も
国交省、フルトレーラの全長25m緩和方針固める

国土交通省は、特殊車両通行許可を得た車両に対して認めている全長21メートルのフルトレーラの全長を最大25メートルまで緩和する方針を固めた。課題を抽出するため、公募でトラック運送事業者の協力を得ながら、今夏にも新東名高速道路で実証実験を行う。

今回の規制緩和は、民間の事業者からの要望に対応する形で11日開催の国交省生産性革命本部会合で打ち出したもの。構造改革特区法の規制の特例措置として、2013年11月から最大21メートルのフルトレーラが全国を走行できるようになったが、さらに全長を25メートルまで緩和することで、10トン車2台分を1車両で運行できるようにする。

高速走行が可能な新東名高速道路の開通に伴い、物流効率を高めて人手不足に悩むトラック運送事業者の課題改善につなげる。現行の21メートル規制は法改正ではなく通達の見直しによって緩和を実現しているが、今回の25メートルへの規制緩和も通達ベースで実施する見通し。
(後略)

Logistics Today 2016年4月12日

報道が伝えているのは、連結全長25mのフルトレーラに対し、国交省が通行許可を出す方針を打ち出したこと。これは以前から運送業界側が要望を出していたものです。上記引用元は物流専門のニュースサイトですが、一般紙でも報道されました。

一連の報道以後、ネット上で幾つかの意見を読みました。ただそれらの意見は少なからず、今の日本の制度や制度の変遷、或いは運輸・物流業界のこれまでの取り組みを全く踏まえていないものが散見され、それ故に有意義とは言えない話になっていると感じました。特殊車両通行許可を知らない人もいますし。

そこで「そもそもこのトラックはなんなのか」「日本の運送業界や国交省は、これまで何をやってきたのか」「今の制度はどうなっているのか」「国交省の長大トラックの導入方針はどうなのか」「日本での25m長大車に対する私見」の5点について、拙文ではありますが述べていきたいと思います。

今回はその第1回で『そもそもこのトラックはなんなのか』についてお話します。

※特車についての説明は、こちらをお読みください 「特車ゴールド制度に関する私見」

以下の文章で用いる用語解説

  • セミトラクタ:貨物を直接積めない牽引専用トラック。セミトレーラと繋げる
  • セミトレーラ:動力のない被牽引車で、自前の車輪で自重を支えられないもの
  • フルトラクタ:普通のトラックと同じく貨物室があり、フルトレーラを牽引できる
  • フルトレーラ:被牽引車だが、自分の車輪で自重を支えられるもの
  • 単車:トレーラーを連結していないトラック
  • GCW:連結車両総重量。トレーラーを連結した状態での編成全体の総重量
  • GVW:車両総重量。トラクタ/トラック又はトレーラ単体での総重量

トラックの構造については以下も参照
→トレーラ方式とトレーラの構造 (いすゞトラックゼミナール)

European Modular System ←元ネタ

そもそも長大トラックとは何なのか。実は元ネタがあります。それはEuropean Modular System (EMS)という欧州のトラック輸送のコンセプトです。トラックそのものの呼び方としては "Mega Truck""Euro Combi" というものもあります。北欧では既に運用されており、EUや他の欧州地域でも実施に向けた検討又は試験が行われています。EMSは全長25.25mの長大トラックで、大量の貨物を運ぶことが可能となっています。実はこのコンセプトの肝は長さだけでなく "Modular" の部分にあるのですが、それは後述します。


EMSトラック。3軸フルトラクタでドリー式4軸フルトレーラを牽引している。
(wikimedia commonsより、撮影者はTeppo Lainio)

EMSの特徴を大雑把に纏めると以下の通りです。
  1. 連結全長25.25mで、貨物室の容積が大きい
  2. セミ/フルトラクタやセミ/フルトレーラを、制限内で自由に組み合わせることができる
  3. GCWは50t~60t(北欧)になり、積載量も大きい。
EU全域で一般的に許可されるセミトレーラ連結車の場合、連結軸数5軸で全長16.5m、GCW40t程度ですから、EMSのトラックはかなり大きいことが分かります。それでいて運転手は一人ですから、単純に言って運転手一人当たりが運べる貨物量が増えるという事になります。

肝はModular

さて、このコンセプトの肝は "Modular" にあると言いました。モジュラーとは「基本寸法の~」とか「組み立て式の~」などという意味。モジュール構造の「モジュール」の形容詞です。

身近なモジュールの例としては、自動車のオーディオ機器で使われているDIN及びDIN規格の機器がそうです。1DINとか2DINと表示されていますが、そのサイズに合わせたスロットがダッシュボードについていれば、どのメーカーのどの機器であってもピッタリ収める事ができます。EMSもModularである以上、その規格に合わせたモジュールであればピッタリ収まる何かがあるという事になります。

EMSにおいてモジュールにあたるのは、セミ/フルトラクタ、セミ/フルトレーラ、そしてセミトレーラにかます着脱式のドリーです。これらを組み合わせが25.25m内に収められるのであれば、運用側が自由に編成を組んで運用する事が可能ということ。先に述べた特徴で言えば、2がモジュラーの説明になります。


着脱式ドリー。フルトラクタにセミトレーラを連結する場合は、これとセミトレーラと連結した上で、ドリーとフルトラクタを連結する。アダプタのようなもの。ドリーの上にはセミトレーラと接続する第五輪(カプラ)が付いている。
ドリーは第五輪荷重が掛かる構造であり、それ単独でナンバー交付(自動車登録)を受けなければならない。
(wikimedia commonsより。撮影者はSelbst)


フルトラクタ+ドリー+セミトレーラの編成例。(wikimedia commonsより。撮影者はVCX)

これができる事で、一体どんな良いことがあるのか。それはセミトラクタにせよフルトラクタにせよ、その後ろに連結するトレーラの選択肢を多用にする事で、状況に応じた無駄の少ない輸送を可能にすること。さらに25.25mの長大編成となることから、必要なトラック(+運転手)の頭数を減らすことができ、少ない労働力で沢山運ぶ事ができるので、環境に優しく経済効率も良いという事です。

これだとまだ分かり難いので、スウェーデン王立工科大学が作成した以下のレポートから例を引用しつつ、もう少し具体的な説明をします。

European Modular System for road freight transport – experiences and possibilities

今ここに、EMSではないごく一般的なトレーラ連結車が以下の通りあったとします。

  1. セミトラクタA+セミトレーラA'
  2. セミトラクタB+セミトレーラB'
  3. フルトラクタC+センターアクスル式フルトレーラC'

セミトレーラ連結車2編成と、フルトレーラ連結車1編成。セミトラクタはセミトレーラを1台しか連結できず、フルトラクタはフルトレーラしか連結できません。つまり貨物を運ぶにあたって2台のセミトレーラと1台のフルトレーラが必要になる場合、上記のように3台のトラクタが必要となり、また運転手は最低でも3人は必要です。

これをEMSで運用するとどうなるか。

  1. フルトラクタC+着脱式ドリー+セミトレーラB' →全長25.25m
  2. セミトラクタA+セミトレーラA'+フルトレーラC' →全長25.25m
  3. セミトラクタBは余る(不要)

というわけで、セミトラクタ1台が不要になりました。同じ量の貨物を、セミ/フル各1台のトラクタで運べるようになったわけです。ここではセミトラクタBは不要と言う事になりましたが、これもEMSで運用すれば、さらに沢山の荷物を運ぶ事ができます。

「Modularが肝」だとする理由はこのようなことです。セミトラクタはセミトレーラのみ、フルトラクタはフルトレーラのみと固定されることがなく、トラックの運用者は自分が持つ車両や時々の事情に応じて柔軟な編成を組めるのです。


セミトラクタ+セミトレーラ+センターアクスル式フルトレーラの編成。セミトレーラのみなら積載量は25t程。それにフルトレーラを連結すると積載量が10~15t増える。
(wikimedia commonsより、撮影者はTeppo Lainio)

EMSの長所まとめ

ここでEMSの長所を纏めます。

  1. 長大編成にすることで、一人の運転手が運べる荷物が増える
  2. トラクタとトレーラを様々なパターンで組み合わせる事で、柔軟な運用ができる
  3. 1及び2によって、経済及びエネルギー消費の面で効率が良い

根強い反対意見

というわけで経済効率の良いEMSではありますが、欧州全域への拡大に関しては根強い反対意見もあります。反対意見は安全面、環境面、社会負担への懸念から出されています。

No Mega Truck

反対派の意見を大まかに纏めます。

1.大きすぎ・重すぎで危ない

連結全長25.25m、GCW60tというのは、ボーイング737が街中を走っているのに等しい。運転手は今まで以上に最後部を確認するのがままならなくなり、交差点を曲がる時の危険性が高まる。また大きなGCWによって登坂での速度低下が著しくなり、乗用車はもとより通常のトラックとの速度差が大きくなる。大きな速度差は交通事故のリスクを高める。この操縦性や走行性能の悪化は、運転手の精神的負荷増にも繋がる。

2.環境負荷が大きくなる

EMSが欧州全域で普及すると、ただでさえ高い自動車依存度がさらに高まる。エネルギー効率が良いと言うがそれはミクロレベルの話で、EMSの普及により、マクロレベルではCO2や大気汚染物質の排出量が増えて環境負荷が高まる。

3.貨物鉄道事業者が潰れる

ただでさえ高い自動車依存度が(ryとなれば、貨物鉄道事業者の売上や収入が圧迫される。それによって貨物鉄道の縮小或いは廃業が起きるかもしれず、これがさらに自動車依存度を高めて、環境負荷を大きくする。

4.道路の傷みが激しくなるなどし、社会負担が増す

重い自動車が今まで以上に走り回れば、路面や橋梁への損傷が今まで以上に大きくなる。これを補修するには、更なる財政負担が必要になるのは必至であろう。

反対派の意見は、EMSが長大且つ大重量である事に基づいています。また推進派が主張する経済効率の良さには、社会負担と言う間接的コストを含んでいないと批判しています。

どちらが正しい?推進派と反対派

推進派と反対派の主張に関して私見を述べます。端的に言えばどちらも一理あります。両者の言い分はトレードオフとなる長所/短所が多いからです。推進派と反対派の違いは、EMSの長所/短所のどちらに力点を置いているかの差ということになります。

例えば長く・重くなる事から貨物輸送の効率はあがるものの、それによって登坂時の速度低下が大きくなると言うのは間違いのないことで、長い故に交差点の後方確認がし辛いというのもあるだろうと思います。大型車はただでさえ死角が大きくなり易い乗り物ですから。

推進派の主張は間違いではありませんが、反対派の主張もそれと同程度に認めなければならないものです。EMSを推進して行くのであれば、反対派が主張する問題点を解決或いは低減して行く必要があるでしょう。

※第2回に続く

コメント

てんま
No.3 (2016/05/10 23:32)
確かにこれが進むといいね。問題はトラックドライバーの大半は牽引免許を持っている連中がほとんどいないというのもあるし。その上お上はますます大型車両の免許取得を狭き門にするような政策を取っているのがもんだいだね。
まあ、確かに連結全長25米以上のトラックがはしるようになればGVC40くらいの物資は運べそうですね。問題は走れる道路が相当限られるという所かな。
これは運送業に関わってる人間としては気になるね
け~えす
No.4 (2016/05/11 00:38)
>>2 返信ありがとうございます。
あまり突っ込んだ返信をしちゃうと、社長の今後の記事のネタばれにも繋がりそうなんでちょっとだけw

>どの程度まで日本でやるつもりなのかが不明なんですよね。
ソースを失念し、今まで探したのですが見つからなかったのでソース無しの内容ですが、ある業界系WEBの記事では「今回は高速道路で25m運用をした際の諸問題を確認するための社会実験」と国交省が言ってたみたいですね。
なので一般道とかそれ以外の諸問題は今回はスルーするみたいです。 あくまで高速道路限定との事。
最小転回半径とか、2軸ドリー導入なら3車両連結になるとか、色々と考えなくっちゃ行けないところは全部すっ飛ばすつもりでしょう。

>トレーラ連結車に対するこれまでの緩和
ここ数年の規制緩和による改正と特例措置の連発で、何がなんだか解んないですよね。 一応時系列で内容を書き出そうとしたんですが、途中で止まってます。 ややこしすぎますw 
leclerc (著者)
No.5 (2016/05/11 21:30)
>>3
通行できる道路は相当限られるでしょうね。基本的に高速道路が中心で、市街地は殆ど走らないような場合でないと。youtubeでストックホルム市内を走る24mフルトレーラの車載動画を見ましたが、やはり大変なように見えます。交差点の角の計上は工夫されているのかな?と思いましたが、それでも右折(日本で言う左折相当)の時は2車線分を使っていたり。

>>4
去年の省令改正で特例8車種のセミトレーラが18mまで認められるようになりましたが、その前に45フィートコンテナ車の社会実験をやってましたから、それと同じようなものなのかも知れませんね。
ばら積み緩和はややこし過ぎますよね…特車通行条件(A~D)とも関係していますし。大型車誘導区間の新設、許可期間の延長、特車ゴールド制度の開始など審査の簡略化に繋がる措置を見ても、審査側もまた苦労しているように見えます。
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