ブロマガ活用の一環として、音楽理論的な話題を投入。
今回もまだコード・スケールの話。
まとめようと思った分の終盤に差し掛かったあたりで
あとちょっとコード・スケールの話になる予測。
使っている用語等については、学問的には誤っている可能性があります。
なお、状況に応じて、ここの文章を加筆・修正することがあり得ます。
(間違いとか直せるところは後でこっそり直す予感)
コード・スケール・8
前々回、前回と、
コードの機能の代理関係に基づく形でコード・スケールの構成を検討しました。
今回も、その続きです。
今回は、ドミナントセブンス・コードの代理関係について整理します。
ドミナントセブンス・コードの代理関係
キーのドミナントセブンス・コードや、セカンダリードミナント・コードは、
長3度と短7度という全三音の間隔のトライトーンと呼ばれる音程関係を持つ音を含み
その不安定な響きからの解決を求める強い進行感を生む、という特徴があります。
また、セカンダリードミナント・コードを含むドミナントセブンス・コードには
裏コードと呼ばれる、やや特殊な代理コードがあります。
裏コードとは、ドミナントセブンス・コードが持つトライトーンについて、
それと重なるトライトーンを持っていることが特徴で、
そのトライトーンの共通性からドミナントセブンス・コードの代理機能を持ちます。
具体的には、あるドミナントセブンス・コードに対し、
そのルート音から増4度の音をルートとするドミナントセブンス・コードを指し、
度数で表現するならV7に対しては、bII7が相当します。
また、この代理関係は相互方向で成立する関係で、
bII7から見ると、その裏コードはV7になります。
この裏コードについて、相互関係をまとめてみます。
ドミナントセブンス・コードの音程関係 | |||||||||||
P1st | b9th | 9th | #9th | M3rd | P4th | #11th | P5th | b13th | 13th | m7th | M7th |
#11th | P5th | b13th | 13th | m7th | M7th | P1st | b9th | 9th | #9th | M3rd | P4th |
裏コードとの対応関係 |
ドミナントセブンス・コードと裏コードについて、
その各音の対応関係を整理した表が上の表になります。
ドミナントセブンス・コードの長3度-短7度のトライトーンは、
それと同じ音を持つ裏コード上でも当然、同じトライトーンを形成しますが、
裏コード上では短7度-長3度とそのルート音に対する位置関係は逆転しています。
また、他のコードトーンであるルート音と完全5度は、
裏コードではそれぞれ#11th、b9thのオルタードテンションに相当します。
ドミナントセブンス・コード上のナチュラルテンション(9th・13th)は
裏コード上ではオルタードテンション(b13th・#9th)に相当します。
またドミナントセブンス・コード上のオルタードテンションは、
b9thは裏コードのコードトーンの完全5度、
#9thは裏コードのナチュラルテンションの13th、
b13thは裏コードのナチュラルテンションの9thに相当します。
また、この関係は前述の通り相互方向で成立しており、
両者の立場を逆転させても同じ関係が成り立つ特徴があります。
ドミナントセブンス・コード上で考えられるオルタードテンションは、
裏コードにおいてはコードトーンとナチュラルテンションに相当します。
#11th→ルート音 b9th→完全5度 #9th→長6度 b13th→長2度
ドミナントセブンス・コードのコード・スケールとして、
テンションをすべてオルタード化したオルタード・スケールを適用した場合、
そのコード・スケールを元に裏コードのコード・スケールを考えると
次のようになります。
裏コード:リディアンb7th・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
#iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | #ii | iii | iv |
ドミナントセブンス・コード(オルタード・スケール)との対応関係 |
このリディアンb7th・スケールは、
ルート音の半音下行進行を伴うドミナントモーションで解決する
ドミナントセブンス・コードのコード・スケールとして活用されます。
(平たく言えば、すべての裏コードのコード・スケールとして扱われます。)
※ ドミナントセブンス・コードからトニック・コードへの解決は
ルート音の進行で言えば、V7→Iという完全5度下行/完全4度上行で示されます。
一方、裏コードは、ドミナントセブンス・コードの増4度がルート音で
そこからトニック・コードへの進行を表すと、bII7→Iという形になり、
ルート音の進行が半音下行という形で解決します。
なお、リディアンb7th・スケールは、
メロディックマイナー・スケール上行の第4音(完全4度)、
あるいはオルタード・スケールの第5音(増4度/減5度)を基点として
並べ直したスケールに相当します。
裏コード上でのテンションノートの活用については、
ナチュラルテンションの9thと13th、およびオルタードテンションの#11thが主となり
裏コード上での他のオルタードテンション(b9th・#9th・b13th)の活用は
やや変則的なものとして扱われることが多くあります。
(裏コード上のオルタードテンションは、元のドミナントセブンス・コード上では
ナチュラルテンションやコードトーンに相当しています。
共有するコードトーンがトライトーンに限られる裏コードで
元のドミナントセブンス・コードのコードトーンを多く鳴らすと
裏コードとしての響きが弱まり、曖昧になる可能性があります)
ただし、裏コードのコード・スケールについては、
リディアンb7th・スケール以外のスケールを適用する例外も多くあります。
裏コードを設定する元のドミナントセブンス・コードについて、
そのコード・スケールがリディアンb7th・スケールであった場合、
その裏コードのコード・スケールをオルタード・スケールにする場合があります。
このような例は、メジャー・キーのIV7、マイナー・キーのbVI7で見られます。
(IV7の裏コードはVII7、bVI7の裏コードはII7です)
また、裏コードがセカンダリードミナント・コードと重なる場合、
セカンダリードミナント・コードのコード・スケールを
裏コードのコード・スケールに流用することがあります。
以下、ドミナントセブンス・コードとセカンダリードミナント・コードについて
その裏コードのコード・スケールを表にしてまとめておきます。
メジャー・キーの場合
本来 | 代理コード (裏コード) | 代理コードのコード・スケール | 解決先 |
I7 | #IV7 (bV7) | リディアンb7th・スケール | IV系統 |
II7 | bVI7 | リディアンb7th・スケール | V系統 |
III7 | bVII7 | リディアンb7th・スケール | VI系統 |
IV7 | VII7 | リディアンb7th・スケール [オルタード・スケール] | bVII系統 |
※ この進行は解決先のルート音がキーのスケール外で、あまり見られません。 | |||
#IV7 | I7 | リディアンb7th・スケール [ミクソリディアン・スケール] | VII系統 |
※ この進行は代理コードがより活用されています。 #IVのルート音は、キーのスケール外の音になります。 | |||
V7 | bII7 | リディアンb7th・スケール | I系統 |
VI7 | bIII7 | リディアンb7th・スケール | II系統 |
VII7 | IV7 | リディアンb7th・スケール | III系統 |
マイナー・キーの場合
本来 | 代理コード (裏コード) | 代理コードのコード・スケール | 解決先 |
I7 | bV7 | リディアンb7th・スケール | IV系統 |
II7 | bVI7 | リディアンb7th・スケール | V系統 |
bIII7 | VI7 | リディアンb7th・スケール | bVI系統 |
[ハーモニックマイナーP5thビロウ・スケール] | |||
III7 | bVII7 | リディアンb7th・スケール [ミクソリディアン・スケール] | VI系統 |
※ この進行は代理コードの使用が主流になっています。 IIIのルート音は、キーのスケール外の音で、 bVII7はマイナー・キーのセカンダリー・ドミナントでもあります。 | |||
IV7 | VII7 | リディアンb7th・スケール [オルタード・スケール] | bVII系統 |
V7 | bII7 | リディアンb7th・スケール | I系統 |
bVI7 | II7 | リディアンb7th・スケール [オルタード・スケール] | bII系統 |
※ この進行は解決先のルート音がキーのスケール外で、あまり見られません。 | |||
VI7 | bIII7 | リディアンb7th・スケール [ミクソリディアン・スケール] | II系統 |
※ この進行は代理コードがより活用されています。 VI7はナチュラルマイナー・スケール上にない長6度をルートとする セカンダリー・ドミナントです。 またbIIIはマイナー・キーのセカンダリー・ドミナントでもあります。 | |||
bVII7 | III7 | リディアンb7th・スケール | bIII系統 |
※ この進行はあまり見られません。 なお、bVII7はVII系統に結びつく裏コードとしてよく活用されています。 |
ディミニッシュ・コードのドミナントセブンス的機能
ディミニッシュ・コードが、後続のコードに対して
ドミナントセブンス・コード的な機能を持つこともあります。
ディミニッシュ・コードもトライトーンを内包するコードで、
そのトライトーンがドミナントモーションに類する働きを見せるためです。
これは主にパッシング・ディミニッシュ・コードの上方進行に現れ、
その際には、パッシング・ディミニッシュ・コードは
同じトライトーンを持つセカンダリードミナント・コードと類似した機能を帯び
代理コードのような関連性を持つとみなすこともできます。
セカンダリードミナント・コードとトライトーンを共有する
パッシング・ディミニッシュ・コードの関係を整理すると、
以下のようになります。
上方進行
セカンダリードミナント | 対応するディミニッシュ・コード | 解決先 |
VI7 | #Idim7 | II系統 |
VII7 | #IIdim7 | III系統 |
II7 | #IVdim7 | V系統 |
III7 | #Vdim7 | VI系統 |
I7 | IIIdim7 | IV系統 |
IV7 | VIdim7 | bVII系統 |
V7 | VIIdim7 | I系統 |
下方進行
下方進行するパッシング・ディミニッシュ・コードについては、
II系統に結びつくbIIIdim7のみがよく活用されています。
これは、V7に解決するII7(ダブルドミナント)について、
解決先のV7をトゥーファイヴ化し、II7→IIm系統→V7となる進行において、
そのIIm系統に進行する時に、
bIIIdim7がダブルドミナント・コードの代理コード的な働きを持ちます。
パッシング・ディミニッシュ・コードのコード・スケールは、
キーとの関連について検討した回(メジャー・キー、マイナー・キー)の
ディミニッシュ・コードの項目で整理しました。
ドミナントセブンス・コードのコード・スケールは、
オルタードテンションの導入の関連から様々なスケールが想定できますが、
パッシング・ディミニッシュ・コードとの代理コード的な相関性を踏まえて、
関連するドミナントセブンス・コードのコード・スケールをいくつか、検討してみます。
なお下方進行についてはメジャー・キーのbIII、
上行進行については、メジャー・キーはメジャー・スケール、
マイナー・キーはナチュラルマイナー・スケールの
スケール上の空白にあたる音をルートとする
パッシング・ディミニッシュ・コードを取り上げます。
ただし、実用例の少ない減5度を持つコードに連結する進行は割愛します。
メジャー・キーの場合
#Idim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
VI7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
#Idim7との対応関係 |
#IIdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
VII7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
#IIdim7との対応関係 |
#IVdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
II7:無名
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
#IVdim7との対応関係 |
#Vdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
III7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
#Vdim7との対応関係 |
bIIIdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
II7:無名
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v | bvi | bbvii | bvii |
bIIIdim7との対応関係 |
マイナー・キーの場合
IIIdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
I7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
IIIdim7との対応関係 |
#IVdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
II7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
#IVdim7との対応関係 |
VIdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
IV7:無名
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
VIdim7との対応関係 |
VIIdim7
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | dim7th | m7th | M7th |
↓
V7:スパニッシュ8ノート・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | bbvii | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | bv | v |
VIIdim7との対応関係 |
パッシング・ディミニッシュ・コードとセカンダリードミナント・コードについて
その代理コード的な役割と関連性を検討する際、
ディミニッシュ・コードのコード・スケールから、
セカンダリードミナント・コードのコード・スケールを導くと、
上記のように多くの例において、スパニッシュ8ノート・スケールが構成されます。
また、一般的ではないコード・スケールが構成される場合にも、
スパニッシュ8ノート・スケールの短6度が長6度に変化したスケールになります。
この関連性が共通して見られる点においても、
パッシング・ディミニッシュ・コードが、ある種の形で
セカンダリードミナント・コードの代理コード的な役割を果たし得ることが
示されていると見ることもできます。
ディミニッシュ・コードには2セットのトライトーンが内包されていますが、
上行進行のパッシング・ディミニッシュ・コードは、
ルート音とみなされている音を含むトライトーンについて、
それと重なるトライトーンを持つセカンダリードミナント・コードとの間に
機能の共通性が見られます。
(セカンダリードミナント・コードの長3度をルートとする
パッシング・ディミニッシュ・コード、
逆から見れば、パッシング・ディミニッシュ・コードの短6度をルートとする
セカンダリードミナント・コードとの間に、
機能の共通性を見ることができます。)
また、bIIIdim7の下行進行については状況が限られますが、
パッシング・ディミニッシュ・コードの構成を見直すと、
ルート音とみなされている音を含まないトライトーンについて、
それと重なるトライトーンを持つII7との間に機能の共通性が見られます。
以上、ドミナントセブンス・コードの代理関係について、
そのコード・スケールを軽く整理してみました。
次回は、後続するコードとの関係からコード・スケールを構成する話について
触れていく予定です。
参考になれば幸いです。