りゅうせいのたきのブロマガ

自称中級者による人力ボカロ中級講座

2020/12/26 18:10 投稿

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  • 人力VOCALOID

はじめに


この記事はいわゆる切り貼り人力VOCALOIDのコツを紹介するものです。すでに人力ボカロに挑戦したことがある方を対象とし、人力ボカロについての基本的な説明はいたしません。基本的な作り方はメカPのブロマガで解説されている内容に準拠しているので、入門者や未読の方はそちらをご覧ください。

0. 筆者について


アイドルマスターシリーズの人力ボカロを作っています。初投稿から5ヶ月程度のひよっこですが、これまでに得たノウハウをまとめておきたいと思います。





1. 制作環境について


人力ボカロの制作にはREAPERなどのDAWと合わせてVocalShifterやMelodyneなどのピッチ編集ソフトを利用する方が多いですが、REAPERだけでもいろいろなことができます。

まずアイテムのピッチ操作。アイテムを選択して[Shift+9]で半音下げる、[Shift+0]で半音上げることができます。デフォルトの設定では声質が大きく変わってしまいますが、「プロジェクト設定」から「デフォルトのピッチ操作モード」を「élastique 3.3.0 Soloist」に変更することで声質を保ったピッチ操作が可能です。(もちろん限界はあります。)
この方法の利点は、素材にノイズが入っていても全体のピッチを均一に上げ下げできることです。VocalShifterだと素材によっては画像のようにピッチカーブがうまく解析されず音程の調整が困難になることがありますが、REAPERではその心配がありません。



次にピッチエンベロープの操作。アイテムを右クリックして「テイク」から「テイクピッチエンベロープ」を選択すると、水色の線が表示されます。ここに[Shift+左クリック]または[Ctrl+左クリック]で点を打ち、ドラッグでピッチカーブの編集ができます。
画像は「Understand? Understand!」の編集画面。サビの「分かっているでしょ?」の部分ですが、フラットな「い」の音を半音下げてから元の音程に戻すことで「しゃくり」を作っています。



そして伸縮マーカー。これは音の長さを変える機能でVocalShiterの「TIME」に相当します。アイテムを右クリックして「伸縮マーカー」から各種操作を行います。音の長さを伸ばすときはアイテムを分割するのではなく、子音の後ろにマーカーを追加して母音だけを伸ばすとよいでしょう。AviUtlの中間点のようなものです。

最後にフォルマント調整。アイテムまたはトラックにエフェクト「VST: ReaPitch (Cockos)」を適用し、Algorithmを「élastique 3.3.0 Pro」に設定。あとは「Formant Shift」の値を上げ下げするだけです。VocalShifterの「FRM」とは少し異なる変化をします。Soloistによるピッチ操作が優秀なのであまり使いませんが、リフレインの片方に適用して同じ素材に変化を持たせたりすると面白いです。



上記のようにREAPERだけでも大半のことができるので、最近の作品はほとんどREAPERだけで制作しています。(切り取った素材の音程を一覧したいときやビブラートをかけたいときにVocalShifterを使うことはあります。)

REAPERだけで制作すると中間ファイルの書き出しが不要になるので、切り貼りしたあとで素材の音源を差し替えられるというメリットがあります。より高音質な音源に差し替えたり、あるいは別のキャラクターの音源に差し替えて同じ曲を歌ってもらうことも可能です。



2. 切り貼りについて

二重母音を切り出す(2021/01/16追記)

「あい」や「でい」のような二重母音を含む箇所は、それぞれの音を並べるよりも「-ai」や「-ei」の音を使うほうが自然な発音になることが多いです。

「お願い!シンデレラ」でいえば「夢は夢で終われない」の「ない」、「エヴリデイ どんな時も」の「デイ」などがこれにあたります。特に英語の歌詞では「I」「my」「day」「voice」など二重母音がよく登場するので必要に応じて切り出しておくと役に立ちます。

互換性の高い音で代用する

対応する音がないときや、あっても長さが足りなかったり音程が大きく外れていたりするときは母音子音合成で作ることを考えるかと思います。しかしそういうときは、まず似た音で代用できないか試してみるのがおすすめです。

たとえば「カ」と「ガ」。音声学の用語ではこの2つは同じ「軟口蓋破裂音」というグループで、異なるのは子音が声帯振動を伴うかどうかだけです。つまり発声方法がよく似ています。手元に音声素材があれば「カ」の音と「ガ」の音をそれぞれ聴いてみてください。「ガ」に聴こえる「カ」の音や「カ」に聴こえる「ガ」の音がいくつか見つかると思います。

このような互換性の高い音を列挙すると次のとおりです。

・カ、キ、ク、ケ、コ ≒ ガ、ギ、グ、ゲ、ゴ

・サ、ス、セ、ソ ≒ ザ、ズ、ゼ、ゾ

・タ、ティ、トゥ、テ、ト ≒ ダ、ディ、ドゥ、デ、ド

・チ ≒ ジ(ヂ)

・ツ ≒ ズ(ヅ)

・パ、ピ、プ、ペ、ポ ≒ バ、ビ、ブ、ベ、ボ

・キャ、キュ、キョ ≒ ギャ、ギュ、ギョ

・チャ、チュ、チョ ≒ ジャ、ジュ、ジョ

(左がいわゆる無声子音で右が有声子音。)

音を探すときはこれらの音も合わせてあたってみるとよいでしょう。このほか、子音を削ることで代用可能な音もあります。それについては2番Pの記事をご覧ください。

さて、このように代用した音はやはりそれらしく聴こえないこともあります。そこで合成の出番です。目的の子音から代用した音につながるようにクロスフェードで重ねてみてください。ほかの音から作るよりも簡単に自然な音ができると思います。

*「ン」について

バ行、パ行、マ行に続く「ン」はマ行の子音と発声方法が同じです。そのため「ム」などで代用できます。

ちなみに日本語の「ン」の音は複数あり、日本人はそれらを直後の音によって無意識に使い分けています。たとえば「アコ」「ア」「アドーナツ」の「ン」はそれぞれ異なる音で、発音するときの舌や唇の動きが違います。
人力ボカロでそれらを完璧に使い分ける必要はありませんが、「ン」の音を探すときはその直後の音も見ると参考になるでしょう。


ロングトーンに末端の音を使う

ロングトーンを歌わせるのにそれよりも長い素材を用いる場合、音を途中でフェードアウトさせるだけでは不自然な響きになることが多いです。特にフレーズの終わりにあるロングトーンはこれが目立ちます。

これを回避するために、長い素材の中間を省略して短くする方法があります。画像は再び「Understand? Understand!」のサビから「Delicious! Delicious!」の部分。



最後の「スー」の音は長い素材の中間を省略して前後をクロスフェードでつなげています。こうすることで最後の「ッ」のような音を生かし、ロングトーンを歌い切った感じを出すことができました。

原曲と比較して違和感の原因を探す

違和感の原因がわからないときは、その部分と原曲のアカペラを交互に聴いて比較してみましょう。原曲は最高の資料です。

違和感の原因には主に次のようなものがあります。

・音程がずれている
・フォルマントがずれている
・音量が大きい、小さい
・タイミングがずれている
・原曲の発音と違う
・しゃくりがある、ない
・ビブラートがある、ない

意外と多いのが音程がずれているケースで、しっかり合わせたつもりでも原曲と比較したら違っていたというのはよくあることです。特にしゃくりがある音は前後で音程が異なるため、切り貼りするときに注意が必要です。

原曲の発音と違うことも違和感の原因になります。たとえば「オ」と「ウォ」。「私を」という歌詞は普通に読めば「わたしお」ですが「わたしうぉ」のように歌われていることがあり、その場合は「オ」よりも「ウォ」に近い音を持ってくるべきかもしれません。そのほか、ガ行の鼻濁音や母音の無声化にも注意しましょう。
なお、これらの音の使い分けは歌う人によって異なるので必ずしも原曲に合わせる必要はありませんが、基本的には合わせたほうが自然に聴こえると思います。

ひとつの音を意識しすぎない

ある音の違和感がどうしても消えない場合、その音を意識しすぎている可能性があります。

そういうときはその音の前にある音を意識して聴いてみましょう。たとえば「あなたは」という歌詞の「は」の音に違和感があると思うなら「あ」「な」「た」あたりの音に意識を集中して聴いてみます。そうして違和感が消えたならばおそらく大丈夫です。次の作業に移りましょう。数日後には違和感が消えています。(体験談)



3. ミックスについて


基本的にはボーカルとカラオケの音量を原曲と同じくらいのバランスに調整するだけで問題ないと思います。ミックスしたものと原曲を交互に聴いて、ボーカルかカラオケの音量を上げる、マスタートラックの音量が0dBを超えたら下げる、を繰り返しましょう。

REAPERを使っている場合はセンドトラックで音量やエフェクトを一括調整すると便利です。素材を並べたトラックの「Route」ボタンをクリックして「センドを追加」から任意のトラックに出力することができます。(このとき「マスターセンド」のチェックは外します。)

エフェクトについてはあまり詳しくありませんが、自分が使っているものを紹介します。

イコライザー



「VST: ReaFir」をボーカルにかけて100Hz以下の低音と10kHz以上の高音を切っています。高音を削ると耳障りなシャリシャリした音を減らせますが、こもって聴こえるようになるので削りすぎには注意が必要です。

コンプレッサー



「VST: ReaComp」でボーカルの音量をなだらかにしています。ぼかしのようなものです。
コンプレッサーをかけると音量が小さくなるので、「Wet」を持ち上げて元の音量と同じくらいになるように調整します。(「Wet」がエフェクト適用後の音、「Dry」がエフェクト適用前の音の音量を表しています。)

リバーブ(ディレイ)



「VST: ReaDelay」でボーカルにリバーブをかけています。素材のリバーブが強いときは弱めにかけるようにします。



おわりに


人力ボカロに正解はありません。
この記事で紹介した方法にこだわらず、試行錯誤して自分に合った方法を見つけてください。

質問があればコメントかTwitterへどうぞ。



切り貼り作業の一部を動画で公開しました。興味があればご覧ください。(2021/02/15追記)


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