オールの持ち方と漕ぎ方を習い、ボードを抱えて浜に出る。予感は見事に的中していた。氷が張ったように穏やかな凪の海だった。水底まで見渡せるくらい透明度も高い。海鳥が小魚を求めて水面に集まっている。黒鯛の魚影が岸辺からでも確認できる。
11月の朝だというのに23℃もあった。空は澄み渡り、伊豆半島まで見渡せる。
「いこうか」
中腰でボードの上に乗ってオールで漕ぎ出していく。水の上を滑るように沖に出ていく。
「ゆっくりでいいからね」
妻が立ち上がって振り返る。
「うん」
娘が中腰のままついていく。
「遠くを見るんだよ」
ぼくも立ち上がって背中に告げる。
「わかった」
自転車も車も手元ではなく遠くを見て運転するのがコツだ。そして目線を向けた方へ車体は進む。SUPも同じです、とショップの方が教えてくれた。
「ママの背中を見て」
娘が先をゆく妻の背中に視線を固定する。
「掴まり立ちだと思って」
海に突き立てたオールを
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