秒速30㎞で公転している地球の上を秒速3mでランニングしているかのような気分だった。どれだけスピードを上げても後ろに下がっていくような感覚。地球の公転スピードに勝てる速さで前に移動できる手段を人間は持っていない。音ですらかなわない。地球の公転スピードを追い抜くことができるのは光だけだ。この地球で前に進もうとすること自体が無駄な抵抗なのかもしれないという徒労感。それでも公転し続ける地球の上を秒速3mで粛々と走り続ける。走った距離と後戻りさせられた距離を見比べて虚無感に苛まれる。そんな日もあるのがぼくの仕事だ。
「なんてことない夕暮れの」
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